定点観測
report : 2021 | 
02 / 06

#481 | 実施日 : 2021 / 02 / 06 | 最高気温 : 15.0 | 最低気温 : 4.2 | 天候 : 快晴

クールでモードな雰囲気の黒アウターが席巻中。

2021年2月6日(土)に実施した「481回定点観測」の考察レポートです。

一方、COVID-19禍を吹き飛ばそうと、白いブーツやアニマル柄でポップな気分も浮上。
また、憧れのtabiブーツにみる、<自立の心理とファッション>も。

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(左から)MA-1などストリートっぽいアイテムにレオパード柄のテロテロパンツでモードに(原宿)/オールブラックコーディネートも、透け感のある素材や足下の白で重くなり過ぎないようバランスを意識(新宿)。
 
本稿は、緊急事態宣言がさらに2週間程度延長されることが決まった2021年3月5日(金)に書いています。

明日、3月6日(土)は感染対策に注意しながら、第482回めの定点観測を渋谷、原宿、新宿の3地点にて実施する予定ですが、その前に、実は案外人出が戻ってきていた、2月のストリートファッションのようすを共有しておきたい。

取り上げたテーマは以下の通り。
男女黒アウター
アニマル柄
白ブーツ

直接渋谷、原宿、新宿地点の2月のストリートファッションのローデータをご覧になりたい方はこちらからどうぞ。
 
2021年2月の定点観測・トップページ:
  
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(左から順に)Z世代の男子にはジャケットやセットアップが大人気。まるで80sのカラス族のようだが、レザーサコッシュやマーチンのブーツなどが令和のスタンダード(渋谷)/仕立ての良さが引き立つマキシ丈のコートにミニボトムス+生脚で抜け感を出したスタイル。黒マスクは女性にもすっかり浸透している(原宿)/ミリタリー系のライナーコート人気の流れで拡大したキルティングアウターも黒いものが登場。バリエーション豊富になり、そろそろ人気はピークか(原宿)。

カウントアイテム:男性/女性黒アウター
クールでモードな黒アウターが増加中。
コンサバ&エレガントな茶ベージュ系から主張あるファッションへ。

2月は6日に実施した定点観測。(曖昧な)緊急事態宣言が延長されたタイミングでしたが、なんといっても当時の話題は、「#DontBeSilent」「#GenderEquality」のムーブメントと、「clubhouse」でしょう。
 
ちょうど学校は授業が終わり、レポートやテストを残すばかりのこのシーズン。企業は組織変更等に伴う異動など、2月〜3月、4月はいろいろ変化の時期でもあります。ストリートでは、眩しい朝の光が春の気分へと誘いますが、夕方〜夜はまだまだ寒く、気持ちと身体の温度差があるこの季節。通年だったら、ファッションに関心のある人たちのあいだでは、「春ものを先取り!」と消費へとストレートになっていたのですが、今年はCOVID-19禍の影響で、一般化してきたリモートワークや2拠点居住など、ライフスタイルの変化、SDGsのプレッシャーなど、どうもそんなふうにシンプルにならないのが2021年春のようです。
 
そんななか、スタッフ全員でプレサーベイをした結果、「男/女黒アウター」が増えていることに注目。そんなにアバウトなテーマでいいの?という声が聞こえてきそうですが、いえいえ。実は、ここ数年冬のアウターは、茶系〜ベージュ系と上品な雰囲気が主流でしたが、それがシャープな黒へと変化した、というのが当月のトピックの1つとしました。
 
2020年秋冬は、ちょうど“コロナ・ショック”直前の時期で、2020年2月は、90年代っぽいヴィンテージライクな野暮ったさが特徴の「チェック柄のコート」をカウントアイテムとして取り上げましたが(2020年2月の解説レポートhttps://www.web-across.com/todays/p7l756000002mxg3.html?ra=1)、1年が過ぎすっかり減少。代わりに6月頃から急浮上したクリーンな「白」がアウターにも広がり、2020年12月に「オフホワイト/冬の白」としてズームアップアイテムで取り上げました。「白」は2月はブーツに注目しましたが、引き続き、今春以降〜来秋冬にもっと多くの人に支持されるトレンドになりそうです。
 
そういった女性を中心としたトレンドの流れとは別に、数年前から一定数は見かける全身真っ黒、またはビッグサイズの黒いアウターを着用する「モード系男子」がさらに増加。緊急事態宣言下でも週末の渋谷や原宿には、集団でショッピングに来街するグループをしばしば見かけます。
 
さらによく観察すると、カップルや若いファミリーも少なくなく、メンズサイズの黒ダウンをバサッと羽織ったり、ビッグサイズのコートをマントのように羽織るなど、メンズライクな女性ファッションが台頭。“脱・茶ベージュ系”の流れと、1992年〜93年ごろに東京のストリートで流行した「NEW WAVE」のようなシャープなトレンドの再来を感じることから、今回のカウントアイテムとしました。
 
 
「最近はモードな気分なので黒のオーバーサイズのコートを選びました」と話すのは、21歳の大学3年生。お気に入りの古着屋「サレン」の店員さんが勧めてくれたそうで、1年前にコレクションを見て欲しいと思って買った<ジョンローレンスサリバン>のパンツに、12月に買った同ブランドのマスク(8,000円)を合わせていました。
 https://www.web-across.com/observe/p7l756000005d5hc.html
 
「この黒のコートはお母さんのお下がりです。フレア感があんまり見ないシルエットで気に入ってます」と話すのは、ワイズのコートを着ていた大学2年生の女性。ちなみにお母さんは48歳だそうで、パイピングのていねいさや生地感など、年数を経過したものであっても「質の良いもの」という審美眼は、ファッション偏差値の高い“団塊ジュニア&Jr.(団塊ジュニア世代の子ども≒Z世代)”の特徴といえそうだ。
「流行のベージュ系などナチュラルカラーやくすみカラーが似合わないので、パキッとした黒や紫が好きです」と言うのは、黒いウールのトレンチコートタイプのコートを着ていた23歳の会社員の女性。コートは韓国の<EAM>というブランドで、購入したのは、中国アリババグループのECサイト「AliExpress(アリエクスプレス)」で6,000円で購入したのだそう。紫のニットは「イエロープラス」、シャツは「チュー」、パンツは「ゴートゥーモール」など韓国のECサイトを愛用。ご自身も、将来ECサイトで自分のセレクトショップを立ち上げたいと話してくれた。
 
渋谷、原宿、新宿各地点の「男女黒アウター」は、こちらからどうぞ。
https://www.web-across.com/observe/p7l756000005bdsf.html

 
なお、「定点観測」では、過去40年分の全アイテム一覧をこちらからご覧になれます。
https://www.web-across.com/observe/cnsa9a000000wpq4.html

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(左から順に)エコバッグにアニマル柄でトレンチスタイルをモードな雰囲気に(原宿)/アニマル柄のボトムスは裾ゆれボトムスの女性らしさにピリッとアクセントに(原宿)/無地との切り返しになったアニマル柄のアウターもまあまあ多かった。ほとんどが古着のもの(新宿)。

ズームアップアイテム①:アニマル柄
シンプル&コンサバなファッションにインパクト!
ちょっとゴージャスで派手な気分が2021年SSのポイントになりそう。

1つめのズームアップアイテムはこちら。対象は男女。

実は昨年からじわじわ増えていたヒョウ柄やゼブラ柄、キリン柄などのアニマル柄が、服だけでなくバッグや靴などの小物にも広がって見られるようになっているので取り上げることにしました。

長かったコンサバでエレガントな茶ベージュ系のスタイルにはヒョウ柄、今月のカウントアイテムとした黒いアウターを中心にしたモノトーンスタイルにはゼブラ系など、ちょっとした差し色ならぬ「さし柄」感覚が目立ちます。

さらに、ヒョウ柄や今季新出のキリン柄など、アウターやパンツなど、面積の広いもので着こなしのポイントになるようなインパクトあるスタイルなどはストリートファッションの流れとしては新鮮。実は、ルイヴィトンやGUCCIなどのモノグラムに代表されるようなトラディッショナルな柄のアイテムが、たとえば「+ドラえもん」や、白いブーツ、カラーパンツ、奇抜なヘアカラーなど、今季のアニマル柄は、色や柄など新しい文脈にアップデートされいたのが興味深い。

「もともと動物柄、ゼブラ柄が好きなんです。チェックよりアニマル柄派です」と答えてくれたのは、26歳の女性。なんと、他にもレオパード柄コート、パンツ2本、ファーベスト、ゼブラ柄ハット、シャツ、ダルメシアン柄ワンピースを持っているとはなしてくれた。ちょっとパンチが利いた印象になるのが彼女の好みだとか。最近流行ってきているのがちょっと嫌だとホンネもチラリ。

「アニマル柄はちょっと高級感が出るイメージです」と話してくれたのは、19歳の美容系の専門学校生。「本物の毛じゃないけど、セレブ感が出る」そうで、他にもダルメシアン柄のファーコートやレオパード柄のショート丈カーディガンなども古着屋さんで購入したそうだ。

好きなタレントが着ていたのを理由にあげてくれた人もいた。1人はMAMAMOOのソラさんで、もう1人はインスタグラマーでブロガーのNANAさん。また、面白かったのは、「ジャニーズ推しのジェシーがシマウマになる曲があったから!」という18歳専門学校生もいたこと! 久しぶりにティーンズらしいファッションのコスプレ感覚が戻って来ているようで、ストリートファッションの転換期になりそうだ。
 
*各地点の「アニマル柄」はこちらからどうぞ。
 
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(写真左から順に)ミニスカートにロングブーツ、ロングフレアスカートにショートブーツを合わせ、足元~髪色まで茶ベージュ系でまとめた2人組。足元をオフホワイトにするとぐんと春めいて見える(原宿)/カラーパンツ×メッシュワンピースのレイヤードがお揃いの2人。足下の白がネオンカラーの明るい色を邪魔せず、軽さとヌケ感をプラスしている(新宿)/マキシ丈スカート+ヒールブーツの組み合せがボリューム化。2019年10月に取り上げたハンドルバッグも再び増えてきた(渋谷)。

ズームアップ・アイテム②:白ブーツ
実はどんな色の服にも合わせやすい!と今冬大ヒットした白ブーツ。
また、憧れのtabiブーツにみる、<自立の心理とファッション>も。

2つ目のズームアップアイテムはこちら。対象は男女です。

2020年12月のズームアップアイテム②で「冬の白」として取り上げた時にもかなり見られた白ブーツ2021年1月の「厚底靴」でも散見されたプラットフォームソールのブーツも予想以上に白が目立っていましたが、3月に入り、さらに増えており、その勢いが来シーズンは減ってしまうのでは、とも感じられるlことから、「白ブーツ」をテーマに観察することにしました。

モノトーンのスタイルに足元だけ白スニーカーを合わせるスタイルは過去にもありましたが、レザー(またはレザー風)のブーツ(ほとんどがヒールあり)はなかなか久しぶり。いつぐらいぶりかというと、80年前後のグラムスタイルが流行した頃、または90年代半ばのペールトーン・カラー好きのコギャルスタイル、ヴィヴィアンのロッキンホース、kojikugaなどに代表されるようなプラットフォームソールのブーツ以来のよう。

「久しぶりの渋谷なので、トレンド感の強いものを着ていきたいと思って白っぽくまとめました」と話してくれたのは、26歳のアパレルで働く女性。黒いブーツはシックで落ち着いたコーディネートというふうに使い分けていると教えてくれた。
 
「スクエアトゥが目立つデザインで疲れなそうだから選びました」と話すのは、22歳の専門学校生。インスタで見て気になっていたそうで、他にもブーツは6足持っているけど、白は初めて購入したそうだ。「ほんとうはマルジェラのtabiブーツが欲しいのですが高いので」という彼女は、ZOZOでヴァカンシーというブランドのものを1月に3,465円で購入したと話してくれた。

「ずっと欲しかったマルジェラのtabiブーツ」を履いていたのは32歳のIT系企業で働く女性。
「1足めはバレエタイプを買ったので、2足めはブーツにしました。いろんな色の服を着たときにも合わせやすい」と話してくれました。恵比寿のマルジェラのお店で17万円で購入。他にも伊勢丹でエルメスのブレスレットを9万円で購入するなど、「ちょうど仕事が面白くなってきたところ」だそうで、ファッションも楽しく消費しているようすが伺えました。

このマルジェラのtabiブーツはここ数年、かつてのような「モード大好き」というトライブとはちょっと違う、IT系などの可処分所得が比較的多い、ある意味自立した女性(男性)に支持されている点も興味深い。本当のコンサバ層は決して購入しないtabiブーツですが、そんな個性的なデザインを履くわたし、という意思をファッションで主張する感覚が、2021年らしく今後も注目したい。

*各地点の「白ブーツ」はこちらからどうぞ。

[文責:高野公三子(本誌編集長)]



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