2025年12月回の定点観測・考察レポート
定点観測
report : 2025 | 
12 / 06

#537 | 実施日 : 2025 / 12 / 06 | 最高気温 : 11.5 | 最低気温 : 2.6 | 天候 : 晴後一時曇

2025年12月回の定点観測・考察レポート

世代やトライブを超え定番化する白/ベージュ系アウターに注目!

あっという間に2025年の定点観測もラスト。ちょうど事前調査の日からやってきた冬らしい寒気を前に、何を着たらいいのか少し戸惑っているようなムードもストリートには漂っていました。「女性レザー素材アウター、うち茶系カラー」を取り上げた先月の定点観測後にはさらに茶系アウターが増えそうと予想していたものの、いざ観察してみると、どちらかといえば白〜ベージュ系のアウターが目立っており、「女性白/ベージュ系アウター」をカウントすることに。ズームアップアイテムでは、一般化したボリュームソールスニーカーへのカウンターとして秋以降急浮上している「薄底スニーカー」、ティーンズの大定番アイテムであるミニスカートからの移行が見られる「マイクロ丈ショートパンツ」にそれぞれ注目しました。

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カウントアイテム:女性白/ベージュ系アウター、うちファー/ボア素材アウター
「ギャル」「ガール」から「クワイエット・ラグジュアリー」にまで共通するトレンドカラー

昨年末~今年の定点観測では、グレーや茶/ベージュ、生成色等の浮上と脱・黒が進行している流れを繰り返し記録しています。とはいえ茶系カラーが一般化したシューズやバッグに比べると、アウターのカラーはもう少し明るめのベージュ~オフホワイトくらいの色味が数としては多いようでした。昨冬急速に台頭したギャルブームの一環でリバイバルしているファーアウター、ティーンズに定番化しているコンパクトなショート丈ダウン、いわゆる“クワイエット・ラグジュアリー”のトレンドを汲んだ上品で大人っぽいメルトン素材のロングコートなど、さまざまなデザイン/テイストのアウターで見られます。

近年の定点観測において白~ベージュのトレンドで印象的だったのは、博報堂生活総研との共同研究「どんどん白くなる若者たち」をリリースした2021年前後に長期的なブームとなった時期。少し当時を振り返ってみると、2018/4「女性ベージュ系コート」以降トレンチコートが春秋のアウターとしてマス化。翌年の2019/4「女性ベージュ系アウター」なども含め、デザイントレンチが大流行しました。 そしてベージュ人気は徐々に白/オフホワイト人気へとスライドしていき、2021/4にはついに男性も巻き込んで「男女白/オフホワイト」でカウント。直後に先述の共同研究が行われ、 2022/4「女性ベージュ系アウター」、2022/12「女性白・アイボリー/オフホワイトアイテム」と、幾度も白〜ベージュ系のアウターを取り上げていました。

もちろんそれ以前にもモテ系から森ガールまで幅広い層に浸透した2011/2「女性ベージュ系アウター、うちショート丈」、コギャルたちが好んで着用していた1999/12「ギャルのベージュ」(驚きのアイテム名!)などでベージュ系カラーを取り上げてきてはいますが、特にここ数年は短期的なスパンで繰り返し浮上しており、トライブや世代を超えた定番カラーとしてすっかり定着したように思えます。

■各地点の「白/ベージュ系アウター、うちファー/ボア素材アウター」はこちら

(左)印象的なファージャケットの2人組。それぞれMartin Kim(https://www.web-across.com/observe/d2lqip00000051yn.html)とABEUNDMOR(https://www.web-across.com/observe/d2lqip0000005211.html)のもの。
(右)ガーリーな白のワントーンコーディネートが印象的だった女性。足元はPUMAの薄底メリージェーンというのがいまっぽい!(https://www.web-across.com/observe/d2lqip00000051tv.html)。

ズームアップアイテム①:薄底スニーカー
スニーカーにもいよいよ脱ボリュームの流れが到来!

2017年にリリースされたバレンシアガのスニーカー「Triple S」はまさにエポックメイキングな1足でした。いわゆる“ダッドスニーカー”(お父さんが履いていたようなダサいスニ ーカー)ブームが巻き起こり、レトロフューチャー感のあるハイテクシューズが大流行。その影響はスニーカーにとどまらず、ブーツやローファーにいたるまでファットなフォルムがここ数年で一般化していましたが、2025年は大きな転換点になりそうです。

すでに2025/6の定点観測で「フラットシューズ」を取り上げたように、ポインテッドトゥのパンプスやバレエシューズといった華奢でフェミニンなデザインの靴が増えており、いよいよスニ ーカーもボリュームダウン=薄底化が始まっています。『men’s NON-NO』から『VERY』まで各メディアでも盛んに特集されており、“ロープロファイル”なる呼称も登場していますが、ストリートでは2023年にアディダスの「SAMBA」が大ブレイクしたあたりから浮上。当時の背景としてはまだ薄底というよりローテク感/クラシック感が前面に表れていた印象ですが、その後プーマの「スピードキャット」やオニツカタイガーの 「MEXICO 66」等も立て続けにヒット。赤や黄色といった差し色感覚も併せて台頭しています。

単にローテクなムードというよりは、脱・ボリュームソールの側面が際立っているところ が今年のポイント。性別・年齢・ファッションの系統を問わず幅広い層による多様な着こなしが見られるアイテムで、まだまだ来春以降も拡大しそうなトレンドです。

■各地点の「薄底スニーカー」はこちら

(左)「薄底スニーカーはこれが初めて」という女性。日本で流行る直前に韓国で購入したそう(https://www.web-across.com/observe/d2lqip000000515j.html)。
(右)「身長が高いので盛りたくないのと、メンズっぽい古着が好きで、いちばん使いやすいソールの低いスニーカーを選びがち」という女性(https://www.web-across.com/observe/d2lqip00000052za.html)。

ズームアップアイテム②:インディゴのリジッドデニム
無骨なアメカジスタイルにとどまらない、中庸でクリーンなきれいめスタイルが急増中。

10~20代前半の女性を中心にここ数年で一般化したミニ丈スカート+ブーツのバランス感は継続しているのですが、今年はスカートがショートパンツへとアップデートされていま す。同じショートパンツといっても、昨年頃からじわじわ増えている5~6分丈ではなく、ヒップラインを覆う程度の丈=太腿のほぼ全体が露出するくらいの丈感のもの。“ホットパンツ”という呼称がイメージとしては最も近いのですが、最近はあまり用いられないため 、「マイクロ丈ショートパンツ」として記録しました。過去には1994/7「ホットパンツ 」、2007/8「女性ショートパンツ、うちひざ上15㎝以上」などで取り上げています。また 直接的にアイテムとして取り上げていないものの、90年代半ば~後半のコギャル/アムラー的なスタイルも連想されます。いずれにしてもポイントはやはり海外っぽさ=ギャルっ ぽいテイストに結びつくアイテムとして浮上する傾向にあるアイテムです。

近年は春夏にデニム素材のホットパンツが時々浮上していた程度のアイテムでしかなかったのですが、ミニスカートに飽きた層がいち早く取り入れている印象です。今年はむしろデニム素材はほとんど見られず、素材やカラー、デザインのバリエーションが豊富に。基本的には黒のものが多数派ですが、ニット素材でかなりタイトなサイジングのものや、ガーリーなムードたっぷりのバルーンパンツ=かぼちゃパンツ風のデザイン等も人気。そして昨年までは当たり前だった素脚出しスタイルが減少し、タイツやハイソックスといったレ ッグウェアが台頭しているという副次的な発見もあり、来月以降の定点観測でぜひ注目してみたいと思います。

■各地点の「マイクロ丈ショートパンツ」はこちら

(左)「ガーリーな雰囲気は好きなので、スカートに頼らないガーリー感を目指しています」という女性(https://www.web-across.com/observe/d2lqip0000005342.html)。
(右)ちょうどポップアップを開催中だったこともあってか、今月のインタビューでも多く名前の上がったIGUSAのタイツを着用していた女性(https://www.web-across.com/observe/d2lqip00000051cp.html)。


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