定点観測
report : 2023 | 
11 / 11

#512 | 実施日 : 2023 / 11 / 11 | 最高気温 : 15.9 | 最低気温 : 11.3 | 天候 : 曇

2023年11月11日(土)実施「第512回定点観測」考察レポート

10月に取り上げた「ブラックデニム」が転換点?

グレーカラーの人気ときちんと感のある「スラックス」の台頭。
「トレンド感」はシルバーカラーのアイテムで。

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2023年11月11日(土)に実施した第512回定点観測、渋谷地点(渋谷PARCO前)のようす。先月よりは少し落ち着いた印象でしたが、それでも約30%は外国人観光客で賑わっていました。

2023年11月11日(土)、512回目の「定点観測」を実施しました。

冷たい雨もあがり、最高気温は15℃。冬のはじまりになりそうな2023年11月の定点観測。新宿、原宿、渋谷とプレサーベイ(街をぶらぶら歩き、人びとや店などを観察すること)を行った結果、メインのテーマは「男性・女性スラックス」、サブテーマ=ズームアップアイテムは、「姫カット(ヘアスタイル)」「シルバーカラーアイテム」となりました。

写真は渋谷地点(PARCO前)での実査のようす。ちょうどJWアンダーソンのアジア初のフラッグシップショップがオープンしたこともあり、エントランスにビジュアルとフラッグも設置されました。本人へのインタビューも近日公開予定です。お楽しみに!
(文責:高野公三子)

左:お父さんからのお下がりのジャケットパンツでフォーマルに。専門学校の面接に行ってきたという高校生(渋谷)。右:ザラ×アーダーエラーのセットアップのアパレルPRの女性。「ガールズグループのXGにハマっている」とのこと。先日の"VOGUE ALIVE"では、XGのプロデューサーSIMONさんとライターの竹田ダニエルさんのトークイベントが開催され大盛況でした。

カウントアイテム:男性・女性スラックス
大人っぽいキレイめなスタイルにシフト。
クワイエットラグジュアリーの東京ストリート解釈?


まずは、スラックス。先月(2023年10月)取り上げた「黒いデニムパンツ/ブラックジーンズ」の流行が転換期となったのか、カジュアルなジーンズやワーク・ミリタリーをルーツとしたカーゴ(デザイン)パンツは激減。「キレイめ」「大人っぽいスタイル」のスラックスへとシフトしていルようです。


中でも9月にズームアップアイテムで取り上げた(デザイン)カーゴパンツは、リアルで悲惨な戦争・戦闘への嫌悪感なども影響かすっかり減少。代わりに「ベスト」の時にも見かけた、ウール、または混紡素材のシンプルなパンツ=スラックスが増えています。制服のパンツとでもいうのでしょうか。スーツの組下のようなきれいめなパンツ=スラックスが男女ともに増えているので注目することにしました。

・スラックスの定義:
スーツや制服の組下のようなウールや混紡素材で、ワタリや膝幅、脚の部分にゆとりのあるシルエットのパンツを履く男女すべて。主にセンタークリースのあるもの。(ジーンズやワークパンツ、テロテロパンツ、スリム・スキニー以外のパンツ)。

色は、黒、グレー、グレージュ、ベージュなどベーシックなものが多く、裾に向かって緩やかにテーパードしていたり、パンタロンとでもいうようにやや広がったものなど、身体に対して適度な緩さのあるフィット感がポイントです。

ちなみに、スラックスのスラック「緩さ」は、あのコミュニケーション・プラットフォームの「slack」の語源でもあるそうです。

女性にとってはある意味メンズライク、マニッシュ、または少し前にティーンズのあいだで流行した「オジパン」に見られたオジサンっぽいスタイル=大人っぽい、クラシックなスタイル。男性には、きちんと感、キレイめという印象です。全体的に、カジュアルやワーク、機能性という要素と対峙するフォーマル〜大人っぽいスタイルへの転換期のようで、おそらく、THE ROWやKHAITEなどが起点となった「クワイエットラグジュアリー」の東京のストリートでの解釈の1つなのかも(?)。と深読みしつつ、11月に入り、急に冷えたことで、ようやくウール系のパンツが履けるようになり、今秋冬のボトムスの主流となりそうです。

実際に「スラックス」を着用していた方のインタビューはこちら。
渋谷

・専門学校の面接に来て、「ファッションが見たくて渋谷パルコに来た」という男子高校生。

・祖母のお下がりのコムサデモードのグレーのスラックスを今年のはじめごろからはくようになったという女子大学生
 
・個性的なドリスヴァンノッテンのブーツに合わせたくて、9月にニードルズのスラックスを購入していた女性会社員
 
・ファッションYouTuber・げんじさんが手掛けるブランド「LIDNM(リドム)」のスラックスを履いていた会社員(アパレル)
  
原宿
・ザラ×アーダーエラーのコラボによるセットアップを着ていた会社員(アパレル)
 
・今月のトップページにも掲載させて頂いているMASUの裾が切り返しのデザインスラックスを履いていた会社員。スカートとパンツが合わさったデザインのものも人気です。
 
・インフルエンサーとマーケティングチームが協力して作る韓国発のECプラットフォーム「NUGU(ヌグ)」のスラックスを履いていた会社員(アパレル)。
 
・ラングラーのヴィンテージのスラックスを履いていた会社員。音楽、King Gnu、NEEなどのバンドが好きです。今日のトップスはKing Gnuの常田さんが着ていたものだそう。
https://www.web-across.com/observe/p7l75600000as8p1.html
 
・おじいちゃんのクローゼットから出してきたスラックスを履いていた会社員(アパレル)。
 
新宿
・いま注目の日本のデザイナーズブランドカナコサカイのスラックスを履いていたファッション好きの男子大学生。
 
・エディションのスラックスを履いていた女性会社員。オールシーズン、楽に履けるスラックスが好きだそう。
 
・着なくなった服をごっそり捨てて、大人っぽい格好がしたいとHARE(ハレ)でスラックスを購入していた女性会社員。
 
・ブックオフで購入したスラックスを履いていた専門学校生。ネクタイとハンチングは祖父からのお下がりなのだそう。

(左から)アイドルの文脈でストリートで増えているゴスロリ・ロリータ系ファッション。実は姫カットは定番のヘアスタイル(原宿)/ボリューム感のバランスがユニークなRICK OWENS(リックオウエンス)のダウンジャケットを着用していた男性。厚く切り揃えた横髪と長く伸ばした後ろ髪のコントラストがモードなファッションを引き立てている(原宿)/まるで帽子を被っているかのような個性的なウルフヘアを発見。後ろを結ぶとパツンと切り揃えられたボブヘアにもなりそう(新宿)/重たくなりがちなストレートのロングヘアも姫カットで小顔効果もバツグン(原宿)。

ズームアップアイテム①: 姫カット(ヘアスタイル)
K-POPから地下アイドルまで。
顔まわりのアクセントになるカワイイヘアの鉄板


1つ目のズームアップアイテムはこちら。

某クライアントワークの街頭インタビュー調査で多出していたこちらを取り上げることにしました。

『Hot pepper Beauty』(リクルート)によると、「姫カット」定義は、「サイドの髪を頬~あごのあたりで短くカットした「姫毛」と呼ばれる毛束を含む髪型で、日本の伝統的な髪型がもとになったスタイルで、前髪、サイドともにぱつっと切り揃えられているのが特徴」とのこと。そのバリエーションは、ショート、ボブ、ミディアム、ロング、ウルフ、韓国風、ヘアアレンジと7つあると記されていました。

*Hot peppers Beauty
https://beauty.hotpepper.jp/magazine/384004/

リサーチしてみると、圧倒的にK POPから地下アイドルまで、彼女たちのヘアスタイルに多く見られ、前髪やサイドのアレンジとして、ヘアサロンも提案していることがわかりました。顔の余白の部分を絶妙に隠すことができるので、小顔効果もあると提唱するヘアサロンもあるようです。

・ヘアサロンでお任せにしていたら「姫カット」になったという専門学校生

一方、「牛若丸」にように天分けで両サイドを短くカットしたヘアスタイルもちらほら。80年代後半のディスコやパーティを企画する大学生のようなスタイル(ディスコスト)の若い男性もしばしば見かけます。

・ウルフの延長で前髪を伸ばしていて「牛若丸風」の姫カットになっていた男子の専門学校生

実査当日はかなりの強風。実際のストリートで撮影するのがなかなか難しかったのですが、各地点での「姫カット」スタイルは以下の通り。

・渋谷、原宿、新宿の「姫カット」のトップページはこちら。
 
(写真左から)韓国発ブランドThe Open Product(ザオープン プロダクト)のショート丈のダウンJKはBLACK PINKのジェニーが着用していたものだそう。マットな質感のシルバーに薄く色が入ったようなニュアンスカラーがフューチャリスティックな印象(新宿)/大阪の人気ショップの東京店「ゴッファエックス」で購入した古着のシルバーコートを着用していた大学生。パンツはボッテガヴェネタ、サンダルはナイキ×マシューウィリアムズとファッションが大好きで、将来はファッションで海外に行きたい!と話してくれました。詳細はインタビューをどうぞ(原宿)/プリーツ加工が施されたシルバーのロングスカートは比較的コンサバ層〜大人の女性に散見された(新宿)。

ズームアップ・アイテム②: シルバーアイテム
1点プラスするだけで「トレンド感」が出ることから幅広い年齢層に人気に。


2つ目のズームアップアイテムは、以前より何度もプレサーベイで観察テーマの候補として上がっていたのですが、なかなかタイミングがつかめなかったシルバーアイテムです。
 
今年は昨年の「白」から一転。全身黒=オールブラックの装いが人気でしたが、11月に入りそれがグレーへと移行しています。その影響か、グレーのバリエーション、光が当たったような色ともいえるシルバーのバッグやシューズ、ソックスといった小物類から、スカートやパンツなどが増えています。
 
ECサイトでは「メタリック」と表現している所もあるようで、シルバーだけでなく、アンバーやピンクゴールド、グリーンなど、着こなしのアクセントとしての提案も見られます。
 
いわゆる「ビッグメゾン」がパリ等のファッションウィークで提案されていたトレンドですが、あっという間にZARAやH&M、SHEINといったファストファッションからたくさん商品化。さらに、ここ1、2年で急増する韓国や中国のD2Cブランドからも多数リリースされており、幅広い層に着用されています。
 
興味深いのは、ロングスカートやパンツ、シューズなどが若者よりも、40代~50代など比較的大人の方に多く見られた点です。
 
キーワードとしては、エッジー、インパクト、フューチャリスティック、アーバン、また、近年盛んなアウター等に起用される新素材をシルバーという光沢により可視化されたデザインは、アウトドアウエアでも見られるようです。
 
定点観測を振り返ると、実は、90年代半ばにもシルバーアイテムは大流行。当時はテクノミュージック全盛で、「ハイテク・ヒッピー」と、テクノ=テクノロジー、デジタルといった文脈にヒッピー=自由というような感覚が混ざったストリート発のスタイルとして浮上したと考察しました。

今回のシルバーアイテムの流行には、90年代のような強いカルチャールーツはないものの、白やグレー、グレージュなどに合わせることで、先述したカウントアイテム「スラックス」で指摘した「クワイエット(ラグジュアリー)」とは対峙する「ラウド」なスタイル、「トレンド感」のあるスタイルともいえそうです。
 
では、11月11日のストリートで出会ったシルバーアイテムを着用していた方の中から2名、インタビューをご紹介します。
 
・「XANDER ZHOU のイベントに行くのでブランドのイメージに合わせてフューチャリスティックなイメージのシルバーを着て来ました」と話してくれた男子大学生
 
・パルコの展示や、表参道などのギャラリーを巡ると話してくれた女性。スカートもパンツもH&M、バッグはMM6でした。
 
・渋谷、原宿、新宿の「姫カット」のトップページはこちら。
 


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