定点観測
report : 2022 | 
07 / 02

#496 | 実施日 : 2022 / 07 / 02 | 最高気温 : 35,2 | 最低気温 : 25.4 | 天候 : 晴時々薄曇

2022年12月3日(土)に実施した「第501回定点観測」の考察レポート

2022年11月回で通算500回めとなった「定点観測」。501回めの実施で気づいたことを考察レポートとしてまとめました。

11月の東京新聞さんに続き、12月は朝日新聞さんに取材いただきました。渋谷のリサーチ地点の公園通りパルコ前は、戻ってきた街の人びとに加え、取材の方々も混じって大賑わい。「ファッション」をきっかけにたくさんの出逢いと会話が生まれました。
「ACROSS」編集室は、次の600回に向かって、毎月路上に向かうのと同時に、アーカイブを本格的にまとめるフェーズに入ります。

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2022年12月3日(土)、501回目の「定点観測」を実施しました。

12月に入った途端、急に冷え込み、季節は完全に冬となった東京のストリート。いつものように、担当編集部員でプレサーベイを実施した結果、いったんは減少したかのように思われた白っぽい装い、中でもアウターが再び増えていることから、メインテーマは、「女性の白・アイボリー/オフホワイト アイテム、うち、白・アイボリー/オフホワイト アウター」としました。他には、ここ数年、ストリートに増えている「ファッション好きの男性」のロングコート・スタイルボアやファー、ニットなどの暖かそうな帽子の計3つです。
 
カウントアイテム: 女性白・アイボリー/オフホワイトアイテム うち、アウター
ズームアップアイテム①: 男性ロングコート
ズームアップアイテム②:   ボアやファー、ニットなどの暖かそうな帽子

2022年12月の定点観測・トップページはこちら:

4回目の重版となった書籍「ストリートファッション1980-2020 定点観測40年の記録」、本の紹介ページはこちらをどうぞ↓(PARCO出版)
 
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(左から)白ダウンベスト×カラートップスという組み合わせも散見された。合わせる色を問わない白なら、鮮やかな色も取り入れやすい。オーバーサイズなのが今っぽい(新宿)/以前はコンサバなイメージが強かった白アウターだが今はカジュアル系のものが主流に。特にティーンズにはボアや中綿でボリュームを出したモコモコアウターが人気。足下も厚底が定着し、ルーズソックス風のレッグウォーマーでさらにボリュームをプラスしていた(渋谷)/ブーツやバッグまで温かみのあるホワイトカラーで全身をコーディネート。スナイデルのキルティングロゴバッグは甘めのファッションを好むモテ系コンサバの女性に散見された(渋谷)。

カウントアイテム:女性白・アイボリー・オフホワイトアイテム、うち、アウター


では、順番に説明します。

3地点平均して着用率が12.8%となった女性の白いアイテム。うち、白いアウターは約8.0%でしたが、実は男性の白いアウターも少なくなく、2022年12月冬は全体的に白がトレンドカラーといえそうです。
 
「定点観測」では、「白」といえば、COVID-19のパンデミックの最初の緊急事態宣言が明けた2020年6月に、街に一気に広がった「男女白Tシャツ」が思い出されます。その後、シャツやブーツ、スニーカーへと広がり、ハイトーンのヘアカラーなど、「白っぽい装い・ファッション」に、先の見えないCOVID-19に対して、クリーンな装いを取り入れることで、気分転換したい!クリーンな気分にしたい!気分を上げたい、といった心理が表れていたと考察しました。そのトレンドは冬まで継続。2020年12月には「冬の白・オフホワイト」として取り上げ、2021年4月には「男女オフホワイト/白」としたところ、女性は約23.8%、おおよそ女性の5人に1人が「白い装い・ファッション」と浸透していることがわかりました。

もともと定番ともいえる「白」ですが、その後黒やモスグリーン、ネイビーなどのベーシックカラーとの組み合わせが一定数見られる一方、ジャケットやロマンティックワンピース、など、デザインは多様に広がり、2022年2月には安定した人気のカーゴパンツを中心に、コンサバ系だけではないストリートモードな「白パンツ」も登場。黒やなどとのバイカラーのコーディネートも散見されました。

そんな中、今月観察したのは、トップスまたはボトムスが白・アイボリー・オフホワイトの女性。ボトムスよりもアウターが多いことから、白っぽいアウターの女性をフォーカスしたいと思います。もっとも多いのは白いボアのアウター。これは、COVID-19以前の2018年12月に「女性ボア・アウター、うちショート丈ボア・アウター」として取り上げたのですが、ティーンズから大学生、大人の女性にまで広がっており、ロング丈のものも増加。ある意味ポスト・ダウンジャケットのような存在になっているようです。

他には、ウール系のテーラードコートも白っぽいものが増えており、ビッグメゾンからも定番のテーラードコートにここツーシーズンは白・オフホワイトが加わり、黒に次いであっという間に売り切れていると聞きました。

定番のトレンチコートやミリタリーアウターなどもベージュ系やナチュラルカラーがどんどん白っぽくなっており、2021年に博報堂生活総合研究所と共同研究した時にも明らかになったように、30年単位で見ると、私たちの装い・ファッションはどんどん白っぽくなっていた、ということとも重なります。

「ずっと白いコートが欲しかったんです」と言うのは、広告代理店に勤務する25歳の女性。毎朝、服を選ぶときにコーディネートに迷うので、ベーシックカラーを選ぶことが多いものの、アウターの白は持っていなかったのだそう。膨張色として敬遠されがちな白いアウターですが、「これはストンと落ちる感じでスッキリ見えるので選びました」。
 
また、ふだんからインナーにカラフルなものを着ることが多いという編集の仕事をしている女性(26歳)は、何色でも合わせやすいので白いアウターはまあまあ持っているとのこと。

「白と合わせると野暮ったくなく、ぎりモードにまとまると信じています(笑)」と話してくれました。
 
先述したように、実は白いアウターの男性も多いことが確認された実査当日。ズームアップアイテムとしてフィーチャーした「ロングコート」も白が少なくありませんでした。インタビューをすると、

「普段はスーツで会社に行っているので、白を着るとリラックスして、休日感があります」とゼネコンで働いている24歳の男性。この日は、神南の「吾亦紅」での買いものとその後友だちとの用事があるそうですが、実は「レコードの日」ということで、タワレコにも行ってきたのだそう。

「音楽が好きで、家でレコードをかけています。レコードを買うようになったのは大学生からです。父も音楽好きで古いレコードを集めています。特にブラックミュージックが好きです」と話してくれました。
実は何色でも柄物でも合わせやすい白。ベーシックカラーなのにも関わらず、ふだんとはちょっと違う気分にシフトチェンジできるのもポイントのようです。このあと解説するズームアップ2として取り上げた帽子も白が多く、また冬休みになったからか、大学生らのヘアもブライトカラーが増えているようです。

ということで、各地点の「白・白いアウター」のようすはこちらからご覧ください。キャプションも必読です!

 

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(左から)コートを2着レイヤードしたかのようなデザイントレンチの男性。セリーヌのバッグやプラダのシューズなど、ひと目でわかるアイコニックなデザインのアイテムを好むブランド好きな男性が増加している(原宿)/ロング丈に見えるビッグサイズの中綿入りモッズコート。スウェットパンツにビッグサイズアウターでだらしなくなりがちなコーディネートも、差し色になったソックスや光沢感のあるアウターでラフさが軽減されていた(新宿)/急激な冷え込みからかメルトン素材のロングコートを着る人も一部見られた。LUUPをはじめとした電動キックボードはファッション業界人に大人気だ(原宿)。

ズームアップアイテム①: 男性ロングコート


1つめのズームアップアイテムはこちら。

一般的に、メンズファッションにおけるアウターは、ロング=エレガントまたはモード、ショート丈=カジュアルというイメージがあります。しかし、近年は、それぞれが歩み寄り、デザインと機能性がちょうどいい、ほどよいカジュアル感・機能性のアウターが新しい定番スタイルとなっているようです。

例えば、モッズコートやトレンチコートは、丈が長くなったり、パラシュートっぽい薄手のハイテク素材になったり、白やグレーなどのカラーリングなどデザイン化され、ライトなアウターへと進化。一方、スポーティなイメージだったダウンジャケットは、2022年2月に「男女中綿入りアウター」という名称で取り上げた際にも見られたように、薄手でライトになるなど、「機能性」がひとつの記号としてデザインされ、モードとして提案され、若い人たちを中心に支持されており、「メンズファッションの中心」が過去のそれとはずいぶん移動/変化しているうように感じます。

キーとなっているのはアウターの丈感でしょう。いわゆるビッグシルエットのトレンドは、2015年11月の「男女ビッグ&ビッグシルエット」まで遡ります。その後、2017年2月の「ビッグシルエット・アウター」2019年3月の「ベージュ系のビッグ&ロングコート」12月「ロング&ボリュームコート」などからずっと継続しているのですが、当時と比べて全体的に軽さ、ライトな雰囲気へと変化しているのもポイントのようです。

うんと丈の長いマキシ丈のコートは、一瞬80年代後半の「デザイナーズブランドのマント」ルックの流行を思い出しますが、当時とは重さ=軽さが異なり、今はふわっと裾が翻って存在感が醸し出され、「ロングコート=おしゃれな男性」というイメージもなっているようにも思います。素材がダウンやパッテッドのものは、色が白のものが多数リリースされており、見た目の軽さとなっているようです。

「丈が長めのコートを探していて、重さがなくて生地感が柔らかくてさっと羽織れそう」と、サレントウキョウで10月に古着のロングコートを購入していた大学生(22歳)。他にロング丈のコートは、MAISON SPECIALの水色のものを持っているそうで、今日は12月になったので冬っぽくモードな黒。「髪色が明るいので、印象を和らげたい時は水色、また春先も水色のコートを着ます」と話してくれました。

「すべて丈感です。丈感が命」と話すのは、大阪の古着店「オキニメスママニ」で購入したカーキ色のコートを着ていた男性会社員(29)。コートの下には、同じお店で購入した同系色のワンピースの裾がちょうどいいバランスで丈がレイヤードされていて、「タナゴロータス」で購入したレザーシューズもマッチ。いい感じのヴィンテージスタイルとなっていました。

機能性とデザインのモードなロングコートスタイルの一方では、ヨーロッパ調のヴィンテージファッション好きによるロングコートスタイルも散見されました。

「白のダウン、白いジャケットを持っていますが、今年は白色のロングコートを欲しいと思っていたら見つけたので買いました」と言うのは、セカンドストリートで買った「カスタネ」の白いコートを着ていた男性(23)歳。他にはゴルチェの真っ黒いスーパーロングのコートとHAREの赤いロングコートを持っているのだそう。

「昔から中性的なファッションが好き。ユニセックスを大切にして、スカートをはいてみたりしています。性別で服装を区別するのはもったいないし、男性も女性も楽しみたいです」と話してくれました。
 
*各地点の「男性ロングコート」はこちら(↓)からどうぞ。
 https://www.web-across.com/observe/p7l756000007rpxd.html 

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(写真左から)冬仕様のボリューム素材帽子の中でも特に一般に浸透していたのが白のバゲットハット。フェミニンさを好むロングヘア女子の間で支持されていた(渋谷)/コーディネートの主役になるフライトキャップは男女問わず人気。シンプルなアイテムに合わせるだけで一気にこなれ感のあるスタイルに(原宿)/カウ柄ハットが主役のコーディネート。つい黒やネイビーなど暗めの色で全身を覆いがちな秋冬、一点投入で印象を変えられるアクセサリー感覚の帽子は重宝する(新宿)。

ズームアップ・アイテム②: ボア・ファー等ボリューム素材帽子/暖(あった)か帽子


2つ目のズームアップアイテムはこちら。対象は男女です。

興味深いのは、こちらも2019年1月というCOVID-19直前に取り上げた「フライトキャップ/耳あて付き帽子」が、2022/23秋冬に再び流行している!という点です。

思えば、今シーズンのはじめに、そのデザインや名称がユニークなことから話題の「バラクラバ」をはじめ、春夏にすでに散見されたアームカバーや一大トレンドとなっている「Y2K」文脈から、レッグウォーマーやルーズソックスの復権など、「パーツ」アイテムが注目されています。ニット素材のフードとマフラーが一体になったものや、袖とフードが一緒になっているものなど、そのデザインも多様になっており、さらにボア付きのフライトキャップや耳あて付きの帽子など、冬がやってきた12月に入り、急にヘッドまわりのアイテムをプラスするスタイルが目立っているので注目することにしました。

もっとも多かったのは、ティーンズから20代前半の女性を中心に着用されていた白いウールやモヘアなど毛足の長めの素材のバケットハット。色は圧倒的に白が多く、他にはヒョウ柄やカウ柄など、全身のアクセントとして取り入れられていました。次に多かったのは、ニットキャップ。比較的カラフルで、耳あてのあるものやオーバーサイズのものをゆったり被るスタイルが目立ちました。そして、予想していた以上に着用されていたのがフライトキャップ。耳あての部分にファーやボアが施された大きなヘッドがユニークなバランス感となっていました。

「去年も流行っていて、でも難しいと思ってやめていたんですけれど、今年はいろんなブランドが出していて挑戦してみました」と話すのは、SEとして働く女性(23歳)。白いニットのバラクラバはゾゾタウンのオリジナルブランド「シテン」のもので、秋に3,000円で購入していました」。バラクラバは、防寒としてはいいけれど、やはり着こなしが難しいと感じているそうで、ちょっとデザインが異なるユニクロとマルニのコラボレーションラインのものを狙っていると話してくれました。

「去年から欲しいと思っていたのですが、合わせる服が思いつかなくて迷っていたら売り切れてしまってました」と話すのは、ニコアンドのフライトキャップを被っていた男子大学生(20歳)。今年も売っていたので迷わず購入。オーバーサイズのセーターやシャツジャケットと合わせると話してくれました。

「去年のこの時期にこの帽子が流行っていて、いろんなお店に置いてあって色がいいなと思って買いました」と言うのは、静岡から上京してきていた女子高校生。帽子にしっくりくる服を選ぶのに悩んでいたら、去年は使えないなと思っていたコートが案外合うことに気づき、今日のコーディネートになったのだそう。

インタビューをしてみると、店頭やネットなどで「去年から流行っていた」と認識されていたようで、同時に「合わせる服に悩む」という体験をしていて、いろいろ工夫した末に、それぞれが新しいコーディネートを発見していた点も注目されます。

そして12月末になり、ギフト需要もあってかさらに防寒×ヘッドアクセサリーは増加中。ユニークな色やデザインのヘッドアクセサリーをプラスしようという行為には、「ファッションを楽しもう」と言う気分が見え隠れしているようにも感じます。

*各地点の「ボア・ファー等ボリューム素材帽子/暖か帽子」はこちら(↓)


[文責:高野公三子(本誌編集長)]


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