TOKYO CULTUART by BEAMS(トーキョー カルチャート by ビームス)
レポート
2009.04.06
カルチャー|CULTURE

TOKYO CULTUART by BEAMS(トーキョー カルチャート by ビームス)

東京のアートシーンの「今」を体感できる、ビームスの新しいショップ。

実際のオフィスにいるような感覚になる
ほどリアルな内装。
500円のプラモデルから、160万円の
絵画が一堂に並ぶ。
手縫いのぬいぐるみ作家の森川まどか氏
の作品。
応接間のようなスペースも。イスや絵画
バッグも全て商品。
ディレクターの永井秀二さん。
ビームス原宿の3階に「TOKYO CULTUART by BEAMS(トーキョー カルチャート by ビームス)」が08年12月18日にオープンした。約90平方メートルの店舗をプロデュースするのは、「BEAMS T(ビームスT)」の元ディレクターである永井秀二さん。

「『BEAMS T』を立ち上げた10年前、絵画を初めとするアート作品は高価すぎて一般的には手が出せないものだったんです。そこで、アートを身近なものにしようと“art for everyday”をコンセプトに、さまざまなアーティストによる作品をTシャツに落とし込んだのですが、やはり平面に作品をムリヤリ落とし込むことに限界を感じ、本来彼らが生業としている、絵画やプロダクトそのものを売る場を作りたいと思うようになりました。本当はこういうことをやっている、こんなものを作っている人です、と作家のクリエーションをアピールしていくショップを作ろうと思ったのです」(永井さん)。

同店の構想が始動したのは、07年の春。村上隆や奈良美智など日本のアーティストが海外で“cool JAPAN”ともてはやされ、アートシーンに今までと違う流れが出てき始めた頃だと永井さんは振り返る。

「いまだに海外で日本のカルチャーというと、アニメとマンガが中心。しかし実際に東京に暮らし働いている僕らからするとどうしてもギャップを感じ、もどかしく、アートにしても、村上氏や奈良氏以外にも、面白いアーティストはいっぱいいるんだぞ、ということをもっと広めたかったんです」(永井さん)

店名の「カルチャート」とは「カルト」「カルチャー」「アート」を組み合わせた造語。「カルト」はアキバ系のアイテムであるソフビやガンダムなどのプラモデル、「カルチャー」は書籍や雑誌、今後展開を予定している音楽など、「アート」は文字通りアーティストによる作品を表している。こうした全てを包括したコンセプトは、ビームスが得意とするところでもある。

「一点ものをメインに、買った人がなかなか捨てられないような、ずっと家に置いてもらえる永続的な価値のあるものを提示したいですね。例えば、結婚する友だちに贈る絵や、新居の玄関に飾る絵など、生活シーンに溶け込むアートを提案しできたら。これからどんどん仕掛けていきたいと思っています」(永井さん)

アートを扱う店というと、有名アーティストの作品をキャラクター商品化したグッズを販売するような美術館のミュージアムショップか、一枚数百万円といった絵画が並ぶギャラリーなどが一般的なイメージだろう。近年では、¬過去に弊誌で取り上げた「droog(ドローグ)」「NADiff a/p/a/r/t(ナディフ・アパート)」「Tokyo’s Tokyo(トーキョーズ・トーキョー)」などのようなアートショップと呼ばれる業態も増えているが、高価なアート作品に加え、プラモデルから書籍までといったカルチャー色の強い商品が一堂に集まっているのは稀といえる。

それをごく自然に感じさせているのが、オフィスを模した店内のディスプレイだ。500円のプラモデルから、160万円の絵画までを一堂に並べるためのアイデアで、オフィスであれば、来客用のスペースに高価な絵が飾ってある一方で、社員のデスク周りに出張土産のキーホルダーがあってもおかしくはないという発想から。そういった内装だからこそ、価格の違う作品をフラットな状態で飾れるのだ。いずれはコピー機など事務用機器も置いて、よりオフィスの光景をリアルに表現していきたいのだという。

「“東京”というのもコンセプトのひとつです。東京には、さまざまなカルチャーが集まって混沌としているイメージがあります。そのイメージ通り、秋葉原にありそうなソフビ、神田神保町にあるような古本、人気のギャラリーに展示していそうな絵画などが、ここには一緒に並んでいる。コンパクトに“おいしいトコ取り”で東京らしさを集めたセレクションはアート好きの方、アート初心者の方、また外国人にも喜ばれると思います」(永井さん)

同社はオフィシャルサイトを09年2月25日にリニューアル。また3月11日には同社初となるオンラインショップ「BEAMS Online shop」がオープン。同店の商品の購入も可能だ。

「実店舗は実験的な試みを含め、ブランドイメージを創り出す役割」という永井さん。同店では、オンラインショップでの販売がメインになると想定している。実店舗へなかなか足を運べない地方在住の人や、東京在住でも若者の多い原宿に出向くことをためらうような40〜50代の男性客をターゲットにしているそうだ。

主な客層は、同店を目指して直接来店する目的意識の高い層と、メンズアパレルを中心とした1・2階のフロアから流れてくる層。男女比は7:3。

今後の展開としては、作家の個展や合同展、他業種と組んでの企画も構想中だ。

「経済が下向きになった今、大量生産、大量消費も終わり、エコが叫ばれている。一昨年くらいからは消費動向も変わり始め、消費者は自分で考えるようになっている気がします。そんな流れの中で、この店は一点ものや作家が一生懸命作ったものを置く店でありたい。洋服屋さんの隅にあるオマケのコーナーとしてではなく、独立したこのスタイルを拡大させていきたいと考えています」(永井さん)

[取材・文/笠原桐子+『ACROSS』編集室]
TOKYO CULTUART by BEAMS(トーキョー カルチャート by ビームス)

住所:東京都渋谷区神宮前3-24-7 3F
電話:03-3470-3251
営業時間:11時〜20時
定休日:不定休



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