定点観測in広島
レポート
2014.05.09
ファッション|FASHION

定点観測in広島

定点観測400回記念企画 定点観測in広島

1980年8月にスタートした定点観測が、2014年4月に400回目を迎えたのを記念して、昨秋のNYを皮切りに、今年も国内外の様々な都市で定点観測の開催を予定している。今回は、2014年4月にオープン20周年を迎えた広島パルコとのコラボレーション企画ということで、「定点観測in広島」を行った。

実施日は4月5日(土)。前日に広島駅周辺から、紙屋町〜八丁堀エリア、原爆ドーム・平和記念公園周辺と広島市内をフィールドワークし、ファッション感度が高い人々が最も多かった広島本通商店街(アーケード)と、並木通りの交差点付近を観測場所に選定した。

しばらく街の人々のファッションを観察した結果、カウントアイテム(最も多く着用されているアイテム)は「女性ベージュ系アウターうちヒザ上丈」に決定。ひとつめのズームアップアイテム(これから流行りそうなアイテム)が「ソックススタイル」、ふたつめのズームアップアイテムを「ファミリー」とした。

実査当日は、雨一時曇り、最高気温9.5℃、最低気温4.6℃と、朝から冷たい雨が降るあいにくの天気のなか、16歳〜35歳まで13組、19人の皆さんのインタビューと撮影を行った。総カット数は約500カット。
 
定点観測@広島のインタビューはこちら↓
http://www.web-across.com/observe/srnrj2000002beqt.html



◎カウントアイテム:女性ベージュ系アウター、うちヒザ上丈

まず、マストレンドとなっていた「女性ベージュ系アウターうちヒザ上丈」は、トレンチコートを中心に、テーラードジャケットやミリタリー風アウター、ショップコートなど様々。デザインというよりは、トレンドに大きく左右されない定番であるベージュという色に惹かれて着用していると思われ、実に10代〜60代と幅広い年代に着用されていた。着用率(通行人に占める割合)は22.6%(女性1,678人中380人)。2人ともベージュのアウターを着用しているケースも少なくなく、まるでコピペかと思うほどトレンチスタイルが街に溢れていた。

ベージュ=定番色。10代〜60代まで幅広い年齢層に着用されていた。
2人ともベージュ系アウターというケースも少なくない。
 ◎カウント実施日:4月5日(土)
時間:13時30分〜14時30分の1時間
広島本通商店街のアーケードを、本通駅方面からパルコ方面へ向かう通行者全員をカウントした。
 
●通行人数:合計2,892人
◯男性合計1,214人(42.0%
◯女性合計1,678人(58.0%
◯女性うち、スカート678人(40.4%)
 
●カウントアイテム
◯女性ベージュ系アウター380人(22.6%)
◯うち、ヒザ上丈220人(13.1%)

ベージュ系アウターの着用スタイルは大きく2つに分れる。まずは、ベーシックなトレンチコートに白パンツやグレーのスウェットパーカー、ニット帽とスニーカーを組み合わせたスタイル。これは東京でも若い人を中心に人気のスタイルで、カッチリとした厚手素材のトレンチを、カジュアルなアイテムで崩すトレンドの「ボーイッシュスタイル」だ。

しかし、どちらかというと、広島ではボーイッシュスタイルよりもフェミニンなドレス調トレンチが目立った。サテン/テンセル混などの薄手素材で、ピンクベージュでふんわりとしたAラインシルエット。ウエストにベルトをきちんと締めて、スキニーデニムや黒タイツにヒール靴という、まるでワンピースのようなかわいらしいスタイルも多く、広島は女性らしいコンサバスタイルの支持が高いようだ。



ズームアップアイテム1:「男女ソックススタイル」

東京では2011年頃からソックスをポイントにしたスタイルがトレンドになっており、レースやリボンが付いたデコラティブなものや、蛍光色などのカラフルなもの、ポップな総柄やシースルーでタトゥ風の柄が入ったものなど、2013年には様々なデザインのソックスが登場した。今シーズンはカジュアルな白ソックスやライン入りスポーティなソックスへとトレンドが動いており、さらにタイツとレイヤードするなど、変化している。

一方、広島のソックススタイルは、まだティーンズ〜20代前半の若い男女が中心。ソックスは普通のデザインのものが多く、一部の20代前半にトレンドカラーである白やネイビーのソックスの他、スポーティなライン入りソックス、シースルーソックス、ポップな柄入りソックスなどが見られた。ちょうどブームが始まったばかりでこれから広がっていくタイミングだったと思われる。また、東京では2010〜2011年に人気だったレース付きソックスやタトゥーストッキングがフェミニン/ガーリーなスタイルで着用されていたのが興味深い。


ズームアップ2:「ファミリー」

ズームアップ2は、ファッションではなく「ファミリー」とした。これは子ども連れの30代ファミリーを中心に、20代前半と思われる若いギャルママや、中高生の娘とプレシャス世代母のユニットなど、いろいろな世代のファミリーが来街していたことから観察テーマとした。祖父母・父母・子の3世代ファミリーが多く、家族の人数が多いのは、以前定点観測を行った福岡や鹿児島と共通していた。

また、意外だったのは外国人ファミリーが多かったこと。というのも広島は外国人観光客がとても多く、旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」が実施した「外国人に人気の日本の観光スポット2013」で、外国人に人気の観光スポットランキング1位に広島平和記念資料館(および原爆ドーム)が選ばれたほど人気の観光地だったのである。
さらに広島県と隣接する山口県岩国市にはアメリカ海兵軍基地があり、呉をはじめとする沿岸にある造船関連企業に勤める外国人が多いこともあり、外国人ファミリーやパパだけ外国人というファミリーが多いようだ。
 
世代別にファッションの特徴を見てみると、東京に比べて数は少ないが、ファストファッションブランドやドメブラをミックスしたトレンド感いっぱいのスタイルの、ティーンズ〜20代の男女は確実におり、14SSトレンドとしてアパレル各社が提案しているスポーツテイストもいちはやく取り入れていた。一方30代は、セレクトショップで購入していると思われるような、ニューバランスやシャツ、スウェット等プレッピーをベースにしたアメカジもしくはアウトドア・ミックスのスタイルが多い。つまり、10代〜30代はアパレルやショップが提案しているトレンドに素直に乗っかったファッションが多かったが、注目したいのはHanako世代だろう。ここ数年、ファストファッションが一般化した都心部を中心に、若者と変わらないトレンド感いっぱいのファッションのHanako世代が増えているが、広島のHanako世代はそれほどトレンドには左右されず、きちんと感のあるスタイルが主流。女性は女性らしく、大人は大人らしくというのが広島のファッションの特徴ともいえそうだ。
 
2014年4月27日〜4月9日に、パルコ新館7階・スペースシンナナで開催された「おかげさまでハタチになりました展」。
広島パルコのオープン当時のポスターや記念グッズ、定点観測のアーカイブ写真などの展示を行った。


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