2024年12月回の定点観測・考察レポート
定点観測
report : 2024 | 
12 / 07

#525 | 実施日 : 2024 / 12 / 07 | 最高気温 : 12.4 | 最低気温 : 5.9 | 天候 : 晴後一時曇

2024年12月回の定点観測・考察レポート

多様化するアウターの共通点はリラックス感のあるドロップショルダー。
エフォートレスでシックなスタイルがストリートに台頭。

あっという間に2024年最後の定点観測となりました。暖冬の影響からか、冬本番にはまだまだ至らない街に繰り出していつものようにプレサーベイを実施。2024年を象徴するバギージーンズがぐっと減るなど大きなトレンドの変化の兆しも見られましたが、さまざまなボトムスへと変化しており、カウントアイテムとして取り上げるほどボリューム化したものは見当たりませんでした。そこで、今月特に目立ったの「女性ドロップショルダーアウター」に注目。アウターのデザインが多様化するなか、リラックス感漂うサイジングが共通点となっているようです。ズームアップアイテムは数年かけてじわじわとストリートに浸透している「スウェットパンツ」と、マストレンドの黒やグレー中心のコーディネートに手軽に抜け感をプラスできる「ハイトーンヘアカラー」としました。

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カウントアイテム:女性ドロップショルダーアウターうちショート~ミドル丈
リラックス感漂う“クワイエット・カジュアル”的スタイルがマストレンドに。

2023年1月の定点観測で「女性オーバーフィット・アウター」を取り上げるなど、ビッグシルエットのアウターは過去に幾度もテーマにしてきましたが、今回はサイズ感=ビッグシルエットではなく、肩の落ちたゆるいデザインにフォーカス。先月の定点観測でも取り上げたレザータッチアウターをはじめとしたミドル丈のブルゾン類が中心で、極端なショート丈のアウターは減少しています。一方でエレガントなメルトンウールのロングコートなども多く見られるように。いずれにしても過剰なオーバーサイズというよりは程よくゆったりした身幅で、肩の力が抜けたようなリラックス感がポイントです。

いわゆる“クワイエット・ラグジュアリー”のトレンドをなぞったような、ソフィスティケーテッドでありながらエフォートレスなムードがドロップショルダーというディテールとして反映されつつ、実際のストリートファッションはもっとカジュアル。先月のカウントアイテムであるグレーアイテム、そして今月のドロップショルダーアウターと、いわば“クワイエット・カジュアル”なスタイルに今冬は注目です。

■各地点の「女性ドロップショルダーアウター」はこちら

(左)シャギーな素材感のニットやコートが急増中。オールグレーに小物は黒のレザーという、色づかいや素材づかいが今年の象徴的なスタイル。 (中)引き続き人気の茶系のエコレザーアウターは今冬人気のグレーと相性がいいのがポイント。程よくおじさん風にスカートオンパンツでガーリーミックスに。 (右)オーセンティックなラグランスリーブのステンカラーコートをゆったりめのサイジングでエフォートレスに着こなすのが今年っぽい。クリーンな白スニーカーも再浮上している。

ズームアップアイテム①:スウェットパンツ
脱・アメカジ=モードなスタイルに抜け感をプラスするアイテムへと進化。

80〜00年代には裏原系ファッションやLA風カジュアルファッションなどアメカジの定番として消費され、シティボーイ〜ノームコア〜アスレジャーと続くトレンドの流れで2012年以降リバイバルしたスウェットパンツ。2015年頃にはゴーシャ・ラブチンスキーやヴェトモン、オフホワイトなどのブランドが台頭し、ハイファッションがストリート化して“ラグジュアリー・ストリート”のトレンドへと発展。現在まで続く古着ブームが巻き起こり、フ—ディーやスウェットパンツがマス化しました。近年もニードルスのトラックパンツが大ヒットするなど、ジャージーパンツに革靴をあわせたスラックス感覚の新しい着こなしも見られるように。昨年〜今年にかけて増加しているのは、厚手の綿素材によるクラシカルなスウェットパンツ。とはいってもコテコテのアメカジテイストではなく、モードなスタイルに抜け感をプラスするアイテムへと進化しているのがポイントで、当日のインタビューでも「スラックスからデニムに変えて崩していたんですけれど、だんだん崩しアイテムとしてデニムに飽きてきてスウェットパンツをはくようになりました」という意見があがりました。またリラックス感という点においても今月のカウントアイテム共通するムードを見出せます。

■各地点の「スウェットパンツ」はこちら

(左)スウェットパンツにスカートをレイヤードしてモード感をプラス。裾が切りっぱなしのデザインも人気。
(中)「ジャケットにスラックスだとカッチリしすぎるのでスウェットパンツを選びました。デニムで崩すのに飽きてきて」と話してくださった29歳の男性。
(右)昨年まではスウェットパンツをはいていなさそうな層にまで浸透。レザージャケットとの組み合わせも多い。

ズームアップ・アイテム②:ハイトーンカラーヘア
主流化したシックなモノトーンコーディネートに抜け感をプラス。

黒やグレーなどミニマルでシックな色味の洋服が増えてきた今冬のストリートで目を引いた「ハイトーンカラーヘア」がふたつめのズームアップアイテム。重たくなりがちなコーディネートに手軽に抜け感をプラスできる定番のスタイルです。定点観測で初めて「ハイトーンカラーヘア」の名称を取り上げたのは2015年6月のこと。それ以来、実は2017年からはほぼ毎年のように取り上げています(※ハイトーン前提のカラーヘアを含む)。2017年はフェルナンダ・リー風のピンク、2018年はプラチナのような白っぽい金髪、2019年はポイントカラー/インナーカラーなど、年によってトレンドはさまざま。2020年のCOVID-19を契機にヘアカラーやパーマの人気は加速していきました。2022年頃からは再び暗めのヘアカラーが台頭し、赤や青といったカラフルヘアも減少。今年のハイトーンヘアは黄色すぎない金髪が中心で、 カラーが加わる場合は落ち着いたカラーリング~赤っぽい色味がトレンドとなっているようです。とはいえ原宿地点を中心に非現実的でアニメのキャラクターのようなヘアも一定数見られたほか、平成のギャル/ギャル男っぽいムードも再浮上。しかもその舞台は原宿や新宿で、渋谷は大人っぽい街になってきている?というところに時代の変化が感じられ、引き続き観察したいテーマになりそうです。

■各地点の「ハイトーンカラーヘア」はこちら

(左)「小学生の頃から聴いていて自分のルーツでもある初音ミクのヘアカラーにした」と話してくださった19歳の男性。カットは「平成のアニメっぽく」とオーダーしたそう。
(中)グレーカラーのワイドパンツにボリューム靴、ロン毛+コンパクトキャップ、モノトーンカラーコーディネートなど、2024年のトレンドが詰まった2人組。
(右)グレイッシュコーディネートのアクセントになっていた金髪が目を引いた女性。マリーンセルのタイツとポインテッドトゥのパンプスがトレンドセッターの着こなし。


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