Little Nap COFFEE STAND(リトルナップコーヒースタンド)
レポート
2012.01.23
フード|FOOD

Little Nap COFFEE STAND(リトルナップコーヒースタンド)

代々木公園近くの住宅街に佇むコーヒースタンド

店舗設計は、東京R不動産でも知られる
馬場正尊さん率いるOpen Aが担当。
ブーツのリペア店からインスパイアされたという同店。無骨な工房といった雰囲気。
トラディショナルなものをいかに現代に落とし込むか、に注力しているという。
店内のカウンターから代々木公園を一望できる。
入り口の扉。錆びることで増す味わいを楽しむため、あえて鉄を使ったそうだ。
 小田急線・代々木八幡駅または地下鉄・代々木公園駅から歩いて5分ほど、代々木公園からも近い線路沿いに、コーヒースタンド「Little Nap COFFEE STAND(リトルナップコーヒースタンド。以下、Little Nap)」がある。オープンは201121日。人通りの少ない住宅街に佇むにもかかわらず、連日のように常連客などで賑わっているということから、取材を行った。

 

 オーナーは、濱田大介さん(37歳)。濱田さんがコーヒーに魅了されたきっかけは、1997年にイタリア各地を旅したときにバール文化に触れたことから。翌年には、コーヒー豆やエスプレッソマシンなどを販売する東京の輸入商社へ就職。カフェやレストランのバリスタ育成にも携わったそうだ。2000年に独立すると富山でカフェを開くほか、コーヒー豆卸やバリスタ育成などを経験。2005年には「TOKYO FAMILY RESTAURANT(トウキョウファミリーレストラン)」の立上げに参画し、以後3年間、バリスタとして同店に勤めた。2009年には馬喰町のカフェ兼定食屋「フクモリ」、翌年には同じく馬喰町のイタリアンカフェレストラン「レーネア」の立上げに携わった。

 

 濱田さんは、取引先の店舗の立上げやバリスタ育成などに長く携わるうち、しだいに「自分のアトリエが欲しい」「店もエスプレッソマシンも、豆のローストも、すべて手・目をかけたい。コーヒーに専念したい」という思いを抱くようになる。2010年、知人の紹介で物件に出合ったことからコーヒースタンドのイメージが具現化し、出店を決めた。立地は代々木公園西門近くの静かな住宅街。渋谷や原宿からも近い東京のど真ん中なのに、緑が深くてゆったりと時間が流れる場所であることに惹かれたそうだ。

 

 「これまでいろいろな国を旅してまわりましたが、どの国でも公園を庭のように使うライフスタイルに触れました。イタリアならバール、中東ならチャイと水煙草の店と、海外では公園まわりに必ずカフェがあります。東京でも公園を庭のように使う人は多いけれど、公園近くにカフェはあまりありません。マーケティング的な視点から見れば人通りの多い場所への出店がいいのでしょうが、僕は公園のまわりで地域に密着した店をやりたかったんです。そういう意味では、これまでの集大成だと思っています」(濱田さん)

 

 また、これまでは取引先から求められること、生産的なことに取組んできたが、Little Napでは濱田さんが得意なことをしていくという。

 

 「今はスピーディーなコーヒー屋が主流ですし、そういうものも必要だと思います。ですが、僕は1杯をつくるにもお客さんに少し待ってもらい、味も香りも楽しんでもらいたいです。ボタン1つで作業が終わるのではなく、僕のやる行程はひとつも省かないこと」(濱田さん)。

 

 豆は生産国別にロースト方法を変えている。エスプレッソは季節や天候、湿度などでブレンドを変えるそうだ。メニューは、「アメリカーノ」(350円〜)、「カフェラテ」(380円〜)、「エスプレッソ」(300円〜)、「ドリップコーヒー(シングルオリジン)」(350円〜)など。子供連れ用に「ミルク」(200円)などもある。また、「バナナマフィン」(250円)などの焼き菓子は近所のパン屋に特注でオーダーしているそうだ。豆の販売もしており、「ブレンド」(100g700円〜)がある。

 

 もともとは設計事務所だったという物件は、広さは6坪。店内はブーツのリペア屋からインスパイアされ、職人が一生懸命に汗を流すような男臭い工房にしたかったそうだ。店舗設計は、濱田さんのアイデアをベースに馬場正高尊さん率いるOpen A(オープンエー)が手掛けた。濱田さん自身、“相棒”のエスプレッソマシンをばらして組み直したりするそうで、鉄板のテーブルの上に、工具が並んでいるのは他のコーヒー店にはない光景。カウンターや床の木材は古材のような風合いがあり、ずっと昔からここに店舗が佇んでいたような気にさえなる。

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濱田さんが相棒と呼ぶエスプレッソマシン。ハンドメイドで、豆の特質やその日のコンディションに合わせて、コーヒーをカスタマイズできる。
バナナマフィン250円。焼き菓子は近所のパン屋に特注でオーダーしている。
丁寧な過程を経たコーヒーを気軽に楽しんでもらうため、カフェではなくコーヒースタンドにこだわったという。

 平日の15時頃に行われた取材中も、店舗には常連客の20代〜30代ぐらいの男女が次々と訪れ、店内がいっぱいになるほどの混雑ぶりだった。注文を聞き、職人技でコーヒーを淹れる濱田さんのカウンター越しでは、来店客どうしの名刺交換が行われていたが、そんな光景が日常的に繰り広げられているのだという。

 

 「デザイナー、編集者などクリエイティブな仕事に携わる常連さんが多いんですが、そういう方はフラットに付き合いますし、他の常連さんも僕の友だちもみんなフ ランク。少し後押ししたらお客さん同士が繋がります。コミュニケーションから仕事につながることも少なくありませんから」(濱田さん)。

 

 オープンに際しプレスリリースは一切打たなかったが、近所の人や近隣大使館に勤める外国人、デザイナーなどが常連になり口コミで広まったという。家族連れ、お年寄りも来店するそうだ。また、毎日決まった時間に訪れる常連客も多く、テイクアウトが7割を占めるという。

 

 「関東と関西で料理の味付けが違うように、例えばミラノとナポリでもコーヒーの味は違います。コーヒー豆の原産国はもちろん、世界中のバリスタが大会で競い合 いますし、国や町レベルで味が違うのは当然のこと。クリエイティブ職の方などは、その違いを楽しんだり、コーヒーを淹れる過程を楽しんでいる方も多いよう です」と濱田さんは語る。

 

 近年、OMOTESANDO KOFFEE(表参道コーヒー)や、bonjour records代官山店内のBonjour Brown Water(ボンジュールブラウンウォーター)、『relax』元編集長の岡本仁氏がオープンしたコーヒーキオスク BE A GOOD NEIGHBOR(ビーアグッドネイバー)などのように、オーナーやバリスタの顔が見えたり、コンセプトや内装などの個性が際立ったスモールカフェに注目が集まっている。スターバックスを代表とするシアトル系コーヒーチェーンの上陸から15年経って、コーヒー文化が浸透したことで、チェーン店とは異なる、「ここにしかない」ものを求める消費者が増えているのだろう。

 

 また同時に、あらゆることにおいて効率化、ファスト化が優先されてきたが、11杯ゆっくり淹れるコーヒーをゆっくりと楽しみたい、ローストやドリップなどの、もの作りの過程も味わいたいという消費者心理の浮上といえそうだ。

 

取材・文 緒方麻希子+ACROSS編集部



先日「アクロス」編集部で作成した、マーケティングレポートThe Acrossでも「スローコーヒー」を特集しています。こちらも合わせてご覧下さい。

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パルコ・マーケティングレポート“The Across”

Little Nap COFFEE STAND

東京都渋谷区代々木5-65-4
TEL:03-3466-0074
営業時間:9:00〜19:00
月曜定休


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