THE FOUR-EYED(ザ フォーアイド)
レポート
2016.10.13
ファッション|FASHION

THE FOUR-EYED(ザ フォーアイド)

歌舞伎町のラブホ街に突如出現!ストリートスナップのカメラマンが手がける異色のセレクトショップ

新宿歌舞伎町2丁目、キャバクラやホストクラブのネオンが輝く歓楽街のど真ん中。ラブホテルのエントランスをくぐると、なんとそこにセレクトショップ、THE FOUR-EYED(ザ フォーアイド)が現れる。

約30坪の広々とした店内には、個性的な古着と新進気鋭のインポートブランドが並ぶ。2016年9月11日にオープンしたばかりだ。
 
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オーナーは、藤田佳祐さん(32歳)。藤田さんは、20代前半から、大阪市北区中崎町にある人気古着店で店長を勤めながら、並行してストリート編集室の『FRUiTS』『TUNE』の大阪のスナップカメラマンとしても活動。その後、独立して東京で出店しようとその準備のために2011年3月に上京。さらに、市場調査のため、と『Fashionsnap.com』でスナップカメラマンを行っていたという。

「上京後『STREET』はいったん辞めていたんですが、発行人の青木さんに再会したときに、それまでとは異なるモードなファッションのギャル=ネオギャルが街に出てきたことに気づき、そのことを話したんです。『それで1冊作ろう!』ということになり、2012年9月に『.RUBY(ルビー)』を立ち上げました」(藤田さん)。
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これをきっかけに再びSTREET編集室に所属。約5年にわたってスナップカメラマンや営業、企画などを担当していたなか、2014年に仕事で訪れたパリで転機が訪れる。

北マレ地区のセレクトショップ『
The Broken Arm(ザ ブロークンアーム)』で、ブランドも知らずに無性に惹かれてフーディ(フード付きパーカーのこと)を購入。後々、それが人気爆発前夜のVETEMENTS(ヴェトモン)
のファーストコレクションだったと知り、それまでと異なる新しいムーブメントの兆しを感じたという。
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 2014年当時は“ノームコアブーム”の真っ只中。男女ともに、モノトーンでシンプルなファッションが主流になり、2012年にリニューアルした『POPEYE』が提唱した「シティーボーイ」というコンセプトが浸透し、流行とは一線を画し、自分なりの生活(=ライフスタイル)にこだわりたいという志向が一般化した時期でもある。また、衣類だけでなくインテリアや雑貨、食品などを扱う“ライフスタイルショップ”が増加したのは記憶に新しい。

「オシャレすることがかっこ悪いみたいなムードが長く続いていた時期です。ノームコアや断捨離のブームも時代の流れとして肯定していたんですが、やっぱり僕自身は、爆発的で派手なファッションが好きなので、どこかで次の流れのきっかけを待っていたのかも知れません。VETEMENTS(ヴェトモン)のクリエイション自体のインパクトはもちろんですが、その余波の大きさが重要でした。メディアやファッション業界、一般の方も含めて次の動きを待っていた人たちがこんなにたくさんいたんだ!そして自分もその一人だ、と実感したのがお店を始める大きなきっかけになりました」(藤田さん)。
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2015年9月にパリコレクションを観覧し、改めてトレンドの転換期だと感じた藤田さんは、帰国後すぐに出店準備をスタート。コンセプトは大きく3つ。“Make the impact(衝撃を与える)”、“Make the blue rose(世の中にないものを作る)”、“Make the place to be(居場所を作る)”

原宿や高円寺、下北沢などは避け、あえてファッションのイメージからかけ離れた新宿を出店候補地に。ほどなく10年以上使われておらず、廃墟に近かった現在の物件に出会い、30坪という広さや、ラブホテルのエントランスを通って入るというアプローチ作が気に入り即決。約半年の準備期間を経てオープンに至った。
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ディレクターとして、フリーのファッションディレクター兼スタイリストの渋川舞子さんが参加。商品は4割が古着、6割がセレクトで、基本的に、メンズは藤田さん、レディスは渋川さんと分担しているそうだ。取り扱うブランドは、ロンドンのMartine Rose(マーティンローズ)Charles Jeffrey(チャールズジェフリー)・ニューヨークのALYX(アリクス)・東京のD.TT.K(ディーティーティーケー)・パリのY/PROJECT(ワイプロジェクト)Carne Bollente(カルネボレンテ)Chin Men’s(チンメンズ)など。国内ではまだあまり流通していないインディペンデントなブランドを中心の品揃えとなっている。
 
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ターゲットは年齢や性別に関係なく、新しい価値との出会いを求めていたり、現状のファッションにフラストレーション(!)を感じている人。偶然来店する人がゼロだとしても、必要としている人にとって求心力のある店を目指したいという。

藤田さんはカメラマン、渋川さんもファッションディレクターやスタイリストとして活動しながら同店を運営していく予定で、他にも様々なスキルを持った人たちに参画してもらいながら、多角的にビジネスを広げていくのが理想だという。

がっちりした店というよりは、不特定多数の人が出入りできて、新しいネットワークや楽しい仕事が生まれる場にしていきたいんです。お客さんとスタッフ、店とブランドが”ファン”という関係ではなく、SNSのフォロワーの様な並列な関係性のコミュニティが作れたらと」(藤田さん)。
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ラブホテルのエントランスをくぐると、ショップの入り口が現れる。
新宿といえば、今では東京を代表するセレクトショップとなったCandy(キャンディ)が創業した場所である(2006年新宿二丁目にオープンし2010年からは渋谷で営業)※2008年当時のレポートはこちら。Candyがオープンした2006年の状況を振り返ってみると、若者でもアクセスが良い駅ビルやファッションビルで買いものをする志向が強くなり、渋谷〜原宿では個人オーナー系のショップが相次いで閉店。コレクションで提案されたものがそのままストリートで流行る流れがしばらく続いていた。そんなトップダウントレンドに飽きた一部のファッション業界人や美容師、美容・服飾系の学生などに支持され、瞬く間に人気店となっていったのだ。

現在のファッションを取り巻く状況を見てみても、長く続いたノームコアブームが裾野まで行き渡り、そこはかとない停滞感や次のムーブメントを期待するムードが漂う状況は少なからず共通しているといえるだろう。歌舞伎町とファッションという意外性や、既存のシステムやMDにとらわれない店作り、アンダーグラウンドなムードを放つ同店が、そんな状況に辟易した消費者にとって魅力的に映るのも頷ける。また、そういう時代の転換期に起爆剤のように出現するショップが、渋谷や青山、銀座ではなく、カオスな街歌舞伎町である、というのも面白い。

同店では今後、ポップアップストアの開催や、壁を広告スペースとして貸し出したり、ギャラリーやオフィスとしてレンタルしたりすることも視野に入れており、webマガジンも立ち上げる予定だそうだ。


THE FOUR-EYED(ザフォーアイド)

新宿区歌舞伎町2-8-2 パレドール歌舞伎町1F


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