Minimal(ミニマル)
レポート
2015.11.05
フード|FOOD

Minimal(ミニマル)

飲食の新たな潮流。カカオ豆の選定から製造、販売まですべてを手掛けるビーン・トゥ・バー・チョコレート専門店

豆の種類や産地、抽出方法などにこだわった「スペシャリティーコーヒー」のブームが続くなか「チョコレート」でもカカオ豆の産地にこだわり、豆の選別から焙煎、製造までの全工程を一手に行う専門業態「Bean to Bar Chocolate(ビーントゥバーチョコレート)」の専門店が増えている。

都内では2011年2月にオープンした「Emily’s Chocolate(エミリーズチョコレート/世田谷区奥沢)」や2013年10月にオープンした「xocol(ショコル/世田谷区深沢)をはじめ、2014年1月には中規模メーカーのチョコレートデザイン(株)が運営するVANILLABEANS(バニラビーンズ/横浜みなとみらい)がオープンするなど、あっという間に飲食における新たなトレンドになりつつある他、2014年11月より広島県尾道のUSHIO CHOKOLATL(ウシオチョコラトル)、北海道札幌市の「Cacao Lab Hokkaido (カカオラボ・ホッカイドウ)」や「Saturdays chocolate(サタデーズチョコレート)」など、地方でも続々オープンしている。
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チョコレートは全8種類。カカオとサトウキビやてんさい由来の砂糖のみで作られているので、フレーバーの違いはカカオ豆によるもの。
東京・渋谷区富ヶ谷に2014年12月オープンしたビーントゥバーチョコレート専門店「Minimal(ミニマル)」もそのひとつ。オーナーは山下貴嗣さん(31歳)、製造責任者は朝日将人さん(39歳)で、朝日さんはイタリアで菓子職人やバリスタを経験した後、帰国後の2012年からスペシャリティーコーヒー専門店を運営しており、ビーントゥバーチョコレートも手掛けていた。そこで客としてチョコレートを食べた山下さんは感動と衝撃を受けたという。

「これまで食べたチョコレートとは味も香りも食感もまるで異なり、ライフスタイルのシーンに彩りを添えてくれる嗜好品でもあると感じ、一瞬にして虜になりました」(山下さん)。

当時、経営コンサルタントとして働いていた山下さんは、世界での日本の競争優位を築くには日本人特有のきめ細やかさが武器になると考えており、かねてから「日本発の製造小売」として起業を考えていた。一方、朝日さんは個店の限界を感じていたこともあって2人は意気投合、店舗立ち上げに至った。
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チョコレートは全8種類。生産国、生産地域、生産処理方法が明確で、かつ一切ブレンドされていないカカオを使用したシングルオリジンチョコレートだ。また、カカオ豆の粒子を粗くしたり、豆によって焙煎温度を変えていることも特徴。大手菓子メーカーのものや高級ショコラとは全く異なるザクザクした食感があり、それが美味しさでもある。また、ハイチ産の豆を使ったカカオ70%「ナッティー」(1,080円)は豆の香ばしさがあるが、ベトナム産の「フルーティー」(68%、900円)はベリーのような酸味を感じる。世界で唯一同店が扱うコロンビア・アルワコ族のカカオ豆を使った限定の「スイート」(65%、972円※現在は完売)はまるでぶどうジュースのような香りが口に広がるというように、カカオ豆にょってここまで味わいが違うのかと驚かされる。

原材料はカカオ豆と砂糖(国産てんさい糖またはサトウキビ)のみ。ミルクやバターが配合された一般的なチョコレートとは異なるさっぱりとした口当たりだ。厚さ6ミリの板チョコは、ひとかけらを口に入れた時に最もカカオを感じられるサイズになっている。さらに店内ではイートインも可能で、6種のフレーバーから選べる「チョコレートアイスクリーム」(702円)などを楽しめる。

「ナッツ系のものはコーヒーに合いますし、フルーティーなものはワインや紅茶に最適。ラムやスコッチに合うものもあります。お客様のライフスタイルの中に新たな彩を添えるものでありたいですね」(山下さん)。
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一過性のブームではなく、地域の方のライフスタイルに組み込んでもらうために、出店場所は慎重に選定したという。青山の骨董通りや清澄白河なども検討したが、最終的には渋谷や新宿という都心部に近く、高所得者層が多く住む富ヶ谷に絞った。ベーカリーやコーヒーショップなども多く、もの作りに情熱をかけている個店が集中するエリアであることも決め手になったという。

オープンに当たり、山下さんは2カ月間、アメリカのビーントゥバーチョコレート工房や、ヨーロッパのショコラティエをまわって視察を行った。さらに富ヶ谷交差点の歩道橋で人通りを1週間観察を行い、その結果、クリエイティブ系の人々や外国人、主婦、通勤・通学の人、代々木公園に散歩に行く人…と、ターゲットになりうる人々が多いことを確信し、出店を決めたそうだ。

店内は白を基調とした天高3.4mの広々した空間になっている。お客様がどこにいてもコミュニケーションが図れるように、L字型カウンターを設置。壁一面にタイルで描かれた地図には、カカオ豆の生産地がプロットされており、さらに奥の工房で行われるカカオの焙煎や機械での脱穀、成形までの行程が見えるつくりになっている。
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意外にも、来客層の約4割を男性が占めているという。甘ったるくなくお酒にも合うので、女性の付き添いで来店した男性がリピーターになることも多いそうだ。また、カカオ豆の原産国や品種、焙煎具合や粒子サイズなどが書かれたレシピカードが添付されており趣味性が高いことも、男性に支持されている一因だろう。

同店ではチョコレート作りのワークショップを月4回開催。都内のコーヒーショップやイタリアンレストランなどに卸しており、今後は2店舗目の出店や通販での展開も視野に入れている。

2015年に入って、思っていた以上にビーントゥバーチョコレートブームの加速度が増しています。アメリカで少量生産のインディペンデントな工房が増えていることや、ヨーロッパでショコラティエがより良いクーベルチュールを仕入れたいと素材に目を向けるようになっていることなどを背景に、日本でも同様の動きが起きています。特に日本では、ここ数年のサードウェーブコーヒーブームなどもあって素材への意識が高まっていますが、そういった土壌ができあがっていたことで、ビーントゥバーチョコレートがすんなり受け入れられたのだと思います」(山下さん)。
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2010年〜2011年あたりからの“ライフスタイルブーム”をきっかけに、個人資本による天然酵母のベーカリーやマイクロブリュワリー、コーヒースタンドなどが相次いで登場している。さらに、ファーマーズマーケットなどのマルシェ型イベントや、こだわりの食品をネットでお取り寄せするなど、生産者・製造者の顔が見えてコミュニケーションがとれる環境で商品を購入したいという意識はまだまだ継続しているようだ。その背景には、生産背景を知る事や手元に届くまでの過程をトータルで楽しみたい、という消費者心理が現れている、と言えそうだ。
 
取材・文 緒方麻希子(フリーライター・エディター)
〒151-0063
東京都渋谷区富ヶ谷2-1-9
Tel : 03-6322-9998
営業時間:11:30 - 19:00
月曜定休(祝日の場合は翌日休み)


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