WBA(WORLD BREAKFAST ALLDAY)
レポート
2014.11.27
フード|FOOD

WBA(WORLD BREAKFAST ALLDAY)

世界の朝ごはんを1日中楽しめるレストラン、ますます人気!
スペースシャワーブックスから「WORLD BREAKFAST ALLDAY〜世界の朝ごはん」という本もリリース。

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上はクロアチア、下はブルガリアの典型的な朝ごはん
「世界の朝ごはんを一日中楽しむ」をテーマに、2ヶ月ごとに世界各国の伝統的な朝ごはんを提供する「WORLD BREAKFAST ALLDAY(ワールド・ブレックファスト・オールデイ)」。味はもちろん、インテリアやカトラリー、小物等、随所にセンスが光り、訪れる人を魅了して止まない人気店だ。オープンして約1年半だが、足しげく通う固定ファンがいるほどで、その勢いを反映するように2014年9月には同店初となるオリジナルのヴィジュアル本が発売されるなど、知名度を日に日に上げている。

伝統的な朝ごはんを通して、その国の歴史や文化、魅力を発信していく単なる飲食業だけにとどまらないビジネススタイルの背景には、運営元である有限会社日光デザインの業態が大きく影響しているといえる。建築士の木村顕さんと柴田智子さんが立ち上げた同社は、インテリアや空間デザインを中心に活動するほか、ショップ運営や同社が位置する栃木県日光市で農家をリノベーションした宿泊施設「NIKKO IN(日光イン)」http://nikko-inn.jp/)の運営を手掛けるなど、多岐にわたるビジネススタイルを展開している。「NIKKO IN(日光イン)」は“日本の文化を咀嚼して、リアルな日本に出会える場所”をコンセプトにした宿泊施設で、シンプルかつ使い勝手のいい空間が魅力。国内はもとより海外からの観光客も多く訪れるそう。そういった、グローバルな視点をもとに創り出されるノウハウを生かしたのが「WORLD BREAKFAST ALLDAY(ワールド・ブレックファスト・オールデイ)」だ。
 
栃木県日光市にある「NIKKO INN」。“Hello Japan!”がキーワード。海外からの観光客に日本家屋や風景などを楽しんでもらうことを目的とした宿泊施設。
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最初は宿泊者した外国人たちにそれぞれの国の朝ごはんについてヒアリングしイラストに起こすといったリサーチからはじまったそうだ。
そもそも、同店のテーマは「NIKKO INN(日光イン)」に宿泊する外国人客と交わされた、何気ない会話から発想を得たもの。さまざまな国の食文化や生活習慣について情報を交わすうちに、それぞれ国の特長が色濃く反映される食事に着目。そこから“食事を通して世界を知ること”に焦点を当てた店の構想が持ち上がったそうだ。

「朝ごはんは家で食べることが多いので、その国の特長が出やすいんです。さらに逆手に取って考えると、外国の朝ごはんを食べられる機会は少ないとも言えます。そこに出店のヒントがありました。そして、伝統的な食事を通して各国の魅力を伝えられたらいいですね」と、出店経緯について話すのは、プレスご担当の堀内 明さん。フリーのプレスとしてさまざまな飲食店を手掛ける経歴の持ち主で、同店のメニュー選定など運営にも深く携わっている人物だ。

青山と千駄ヶ谷を結ぶ外苑西通り、通称“キラー通り”に位置する同店。Marketing report“the across”vol.6http://www.web-across.com/todays/srnrj2000001vidb.html)でも紹介したように、キラー通り周辺にはコンパクトなショップが並び、インテリアやインポート雑貨、サイクルショップなど、ライフスタイル業態のショップが多い比較的落ち着いたエリアだ。

「東京の中心地で、しかもターミナル駅からも離れた静かな場所が理想でした。外苑西通り沿いのあまり大きなビルがなく落ち着いた雰囲気は、どこか海外を彷彿させますよね」(堀内さん)。
 
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2カ月ごとに新しく描き変えられるキュートなイラストのメニュー表
メニューは2ヶ月毎に更新されており、1年間通い続ければ6カ国の朝ごはんが食べられる設定。メニュー選定は季節や時事などを考慮し、スタッフ全員で決めるそうだ。また、選定する基準として重要視しているのが“希少性”。あまり口にしたことがない国のメニューを提供するのも、同店の特長のひとつといえる。これまでも、ヨルダンフィンランドクロアチアなど、朝ごはんはもとより、料理自体を口にしたことがない人が多いと思われる国のメニューが登場してきた。

このほか、イギリスの代表的な朝ごはんの“イングリッシュ・ブレックファスト“やサラダ、スープ、デザートなどは通年メニューで、いつでも食べられるようになっている。価格は国によって異なるが、メインプレートが1,000〜1,600円、サラダ、スープなどのサイドメニューが650円〜、ドリンクが500〜800円ほど。

「メインとドリンクをセットにすると1,500〜2,000円ほどなので、ランチとしては比較的高価かもしれません。なぜなら、国内で手に入らないような本場の食材を使うことにこだわっているため、通常よりはコストがかかってしまうんです。でも、お客様からは“美味しい&安い”という評価を頂いているので嬉しいですね」(堀内さん)。
 
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店内には大きなダイニングテーブルだけ。まるで大家族でいただく朝ごはんのよう。
約10坪の至極シンプルな店内には大きなダイニングテーブルがひとつあるのみで、椅子を並べて各々一緒に食べるスタイル。さながら大家族の食卓のような温かみを感じるレイアウトのため、隣になった客同士が仲良くなることも少なくないとか。テーブルには必ずマンスリーメニューの国について紹介するリーフレットが用意され、料理が出てくるあいだに知識を深めて理解と期待が高まったタイミングで、食事がテーブルに運ばれてくる仕組みだ。その国の知識が深まることで、より美味しく食事を楽しめるという演出が素晴らしい。

使い勝手のいいオープンキッチンなど、内装デザイン・施工は全て木村さんと柴田さんによるもの。決して広くはないが、家具から什器まで計算され尽くした配置が、実に居心地の良い空間に仕上がっている。

非日常的でありながら、どこか友人の家に招かれたような安心感のある空間を目指しました」(堀内さん)
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外苑西通りに面した古い家屋をリノベーションしたお店は、ファサードも看板もヨーロッパにあるカフェのよう!
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スペースシャワーブックスから単行本『WORLD BREAKFAST ALLDAYの世界の朝ごはん』もリリースされた。
 2010年から本格的になった朝食ブーム。家庭で作れる身近なスイーツだったパンケーキが、「bills(ビルズ)」「Sarabeth's(サラベス)」などに代表される海外人気店の進出で一気に格上げされ、行列をなすほどの人気になり、その後も、フレンチトースト、エッグベネディクト、グラノーラなど、新たな価値を付加し“日常”から“非日常”へと昇華されたメニューが数多く登場してきた。表向きには“健康的な朝食でスタートする充実した一日”を全面に押し出したライフスタイル提案になっているが、その裏には人口減少や景気低迷による夜間の外食市場の縮小が影響しているといえる。

2011年に農林水産省が実施した「朝食に関する意識調査」によると、朝食を食べない人は国内総人口の約12%。
これを潜在的な市場と見た場合、年間56億食、1食300円として換算すると約1兆7,000億円になると試算される。つまり、頭打ち状態の夜食に取って代わり、将来的な成長市場でもある朝食は、飲食業界において単なる一過性のブームではなく新たな成長エンジンといえるのではにか。そんなことまで妄想してしまうが、同店のように「朝食を通して世界を知る」といった“素朴な食の楽しみ”があってこそ、朝食を食べる人口は増えていかないのではないか、とも思われる。

ちなみに、同店は朝から晩までいつでも“朝ごはん”が食べられるのも特徴。まさに、自由に“朝”が選べる都市型ライフスタイルにぴったりのお店ともいえる。

取材・文 生田目恭子+ACROSS編集部

WORLD BREAKFAST ALLDAY(ワールド・ブレックファスト・オールデイ)


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