武蔵野プレイス
2013.08.05
その他|OTHERS

武蔵野プレイス

多彩な機能を備えた「場づくり」の試み
公立図書館を軸とした新しいコミュニティ施設

B1Fのメインライブラリーは壁面書架を採用。本に囲まれた感覚で落ち着けるスペースだ
丸いフォルムは全館に共通しているデザイン。四隅に吹き抜けが配されているため館内に外光も多く入り明るい空間
予約者自身が自動貸出機で図書の貸し出しを行える。新着・返却資料棚をフロア中央に大きく配置しているため“いま動いている本”がすぐ分かる仕組みになっている
料理・健康・子育てなどのテーマごとに分類された日常生活関連書が充実している。児童用スペースと同フロアにあるためお母さんには使いやすい
ガラス扉付きの「おはなしのへや」。子供連れでも気兼ねなく利用できると利用者からも好評
4Fのワーキングデスクは有料で利用可能。ほかにも各フロアに無料のスタディコーナーや団体向けの打ち合わせスペースなどが配置されている
JR中央線/西武多摩川線・武蔵境駅前の「武蔵野プレイス」は、図書館を軸とした武蔵野市の複合文化施設。曲線や吹き抜けを取り入れた柔らかな施設デザイン、子供や親子連れが利用しやすい運営方法など随所に新しい試みが盛り込まれており、2011年7月のオープンから多くの市民が集まる人気スポットとなっている。
 

 
正式名称は「武蔵野市立『ひと・まち・情報 創造館武蔵野プレイス』(以下『武蔵野プレイス』)」。JR中央線・武蔵境駅南口のロータリーに面する好立地にあり、建物は地上4階・地下3階、延床面積は9809平方メートル。「図書館機能」「生涯学習支援」「市民活動支援」「青少年活動支援」という4つの機能を担っている。図書館機能を軸として全館の「ブラウジング(回遊性)」を促進するようにデザインされたフロア構成が特徴である。
 

 
施設の中心となる図書館の蔵書数は図書が約15万5000冊、2階から地下2階までのフロアを占めている。1階エントランスを入ると、まず目に入るのがフロア中央の大きな「新着・返却資料」のオープンラックで、「今読まれている本/新しい本」が利用者の目に入ってくる仕掛けだ。マガジンラウンジには雑誌約560誌/新聞約30紙を揃えており、大型の図書館でもあまり見かけない洋雑誌や専門誌も充実している
 

 
メインライブラリーを地下1階に配置。壁面書架を用いたフロアは、周囲を本で囲まれていながら、自然光が入る吹き抜けがあるため程よい開放感がある魅力的な空間だ。視覚障害者向けの録音資料を作成できる録音室も設置されている。
 

芸術書や青少年向け書籍・雑誌を約1万5000冊を配置する「アート&ティーンズライブラリー」(地下2階)、生活関連図書をテーマごとにまとめた「テーマライブラリー」(2階)などをフィーチャーしたコーナーを配置。2階には乳幼児~小学校高学年までを対象とする児童図書を揃え、さらに子供たちが靴を脱いで本を読み、遊ぶこともできる「おはなしのへや」、さらに授乳スペースや幼児用トイレも併設し、親子や家族で一緒に読書を楽しめるよう配慮している。

図書館というイメージを前面に出さず、多様な使い方を促したい、というのが施設側の狙いだ。1階中央にカフェを設置しているのもその現れである。カフェには小さい音量でBGMが流れ、吹き抜けがあるため図書館フロアにも人のざわめきが聞こえてくる。静かな図書館ではかえってちょっとした物音がうるさく感じられてしまうものだが、音があるためむしろ気にならない。
 
「来館者が本について友達と気軽に話ができるような場所にしたいと考えています。図書館スペースでもBGMのほかさまざまな音が聞こえますが、これは“暗騒音”といって、一定の音があることでノイズを打ち消す作用があるんです。2Fにも”おはなしのへや”からお子さんたちの声も聞こえてきますし、一般的な図書館よりも音が大きいと思いますが、特に来館者からの不満は寄せられていません。子供を連れてきやすいということで、地域のお母さんたちからは好評なんです」
と武蔵野プレイス館長の三澤和宏さんは語る。
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B2F「ティーンズスタジオ」にはクライミングウォールや卓球台が設置されたオープンスタジオのほかクラフト、サウンド、パフォーマンスのスタジオがある
B2Fのパフォーマンススタジオ。ここを利用する高校生が自主企画でダンスバトルを開催することもあるという
570冊(2013年5月現在)の雑誌と30紙の新聞を閲覧できるマガジンラウンジ
1Fフロアの中央に配置されたオープンカフェ。このカフェのざわめきやBGMが「暗騒音」となることで却って館内の居心地はいい
2Fから隣接する境南ふれあい公園に臨む椅子席は館内でも人気のスポット。屋上庭園やデッキなど開放感ある館内
武蔵野プレイス館長の三澤和宏さん
その一方、勉強や仕事向けに静粛なスペースも充実しているのも特筆すべきポイント。「ワーキングデスク」(4階)、読書や調べものができる「スタディコーナー」(3階)に加え、1階のギャラリーも展示がない時はワークスペースとして解放している。
 

 
地下2階の「ティーンズスタジオ」は、同館の「青少年活動支援機能」の場となるフロアで、19歳以下に利用を限定している。フロアの中央に広がるラウンジスペースにはさまざまなインテリアが配置され、過ごし方は自由。大学の学生食堂ホールを想定していただけると分かりやすいだろうか。
 

 
さらに卓球やウォールクライミングなどが楽しめる「オープンスタジオ」、楽器演奏の練習ができる「サウンドスタジオ」、ダンスや演劇の練習用の「パフォーマンススタジオ」、調理や工芸などのものづくり活動ができる「クラフトスタジオ」を備えている。19歳以下の青少年が利用しやすいように、料金を一般利用者の10分の1に抑えている。
 

 
「練習だけはでなく身近な発表の場にもなっていて、ダンススタジオでは高校生たちが自主企画でダンスバトルのイベントを開催しました。学校とは違うコミュニティが生まれているんですね。目的がなくてもある程度自由に過ごせますし、職員も見守っているのでご家族としても安心感があると思います」(三澤館長)
 

「市民活動支援機能」の場となるのが3階の「ワークラウンジ」。ミーティングや作業ができるオープンスペースや、活動に必要な情報を提供する市民活動カウンターを設置。市民活動団体として登録した団体であれば、館内の充実した設備を利用できる。さらに3階には「生涯学習支援」の施設として生涯学習に関する相談や講座の受付、武蔵野地域自由大学の入学手続などを担当する事務局、会議室を配置している。
 

 
武蔵野市は地域に新しく流入する人口が多い一方で、既存の町内会が存在しない。市民のコミュニティづくりをどう支援していくかは大きな課題であるといえるだろう。同館では施設運営にとどまらず、隣接する都市公園境南ふれあい広場公園を活用してコミュニティ活動の場を整えている。
 

 
地域の団体が中心となり、毎月第1日曜日に「さかいマルシェ」という朝市を開催していますが、公園にお弁当を持ってきてくつろぐ市民の姿が増えてきました。他にも館内と公園を一緒に楽しめるような企画を予定しています。私たちが意図していたよりも、市民の方の方が上手く使っていらっしゃるような気がしますね。自然発生的に何かを見つけて、継続的な活動になっていってほしいと思っています」(三澤館長)
 

 中央線沿線、特に三鷹〜立川駅のエリアでは、JRの高架化に伴って駅周辺の風景が大きく変わりつつある。それに合わせてコミュニティづくり、あるいは再生に向けた多様な試みが生まれつつある。ACROSSでもその動きを引き続きレポートしていきたい。


【取材・文: 本橋康治(
コントリビューティングエディター/フリーライター)+ACROSS編集部 】 

武蔵野プレイス

住 所:武蔵野市境南町2丁目3番18号
施設概要:敷地面積 2,166.20平方メートル
     建築面積 1,571.47平方メートル
     延床面積 9,809.76平方メートル
       (うち駐車場等の面積938.71平方メートル)
     地上4階・地下3階
電 話:0422-30-1900
アクセス:JR中央線・西武多摩川線 武蔵境駅南口徒歩1分
    有料駐車場あり(30分200円)


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