FINAL HOME原宿店

FINAL HOME原宿店

レポート
2002.11.26
ファッション|FASHION

ブランドの原点であるナイロンコート「FINAL HOME」。
ポケットに新聞紙を詰めれば防寒着に、非常食や
医療キットを入れて災害時に着れば非難着にもなる。
10月26日、神宮前3丁目に『FINAL HOME原宿店』がオープンした。運営するのは、アパレルメーカーの(株)エイネットである。

「FINAL HOME」は、デザイナー兼アーティストである津村耕佑氏が、「もし、災害や戦争、失業などで家をなくしてしまったとき、ファッションデザイナーである私は、どんな服を提案できるか」という自分への問いに対し、94年に発表したコートから始まったブランドである。コンセプトは「サバイバル・プロテクト・ファンクション・リサイクル」。黒いファスナーがいくつもついた鮮やかなオレンジ色のナイロンコート「FINAL HOME」はあまりにも有名だ。

その後、「モードジャポニズム展(’95 PARIS)」や「ヴェネティアビエンナーレ展(’00)」など世界各地の展覧会にも出展、DJ KRUSHなどの他分野のアーティストとのコラボレーションや、難民救済のためのチャリティー行事への参加など、服という意味のファッションにとどまらない活動を行ってきた、コンセプチュアルなブランドである。

ショップは、98年9月に、『KOSUKE TSUMURA/FINAL HOME』として、『KOSUKE TSUMURA』の旗艦店内に併設する形で青山の裏手で営業していたが、よりブランドをアピールできる場所を求め、00年に閉店。原宿を中心に物件を探した結果、今回FINAL HOME単独では初となる路面店のオープンしたというわけだ。

「原宿は、アパレルやサブカルチャーに関して日本で最も発展しているエリアだと思うんです。目の肥えたお客さんが多い中で、改めてFINAL HOMEというブランドの訴求をするために、この地でのショップ展開をしたい、というのはありました」と、プレスの大滝さん。

内装は、『移動式クローゼット』をテーマに、クラインダイサム・アーキテクツが担当。ショップのテーマカラーであるオレンジを基調とした、かなり近未来的な空間に仕上がっている。取り扱う商品も、服に留まらず、「M-16クッション」や段ボール製のソファ「FINAL HOME SOFA & COVER」など、同ブランドのコンセプトがより幅広い角度により表現されている。

「メインターゲットは20代の男性ですが、女性客やカップルも多く、客層は幅広いですね。40代くらいの男性も来店しますから、原宿では特殊な店だと思います。単に消費される服ではなく、世代を越えて長く着られる服を目指しています」(大滝さん)。

もともとユニセックスのブランドだが、今秋冬からはレディースラインも本格的に展開。コンセプトはそのままに、より女性にも着やすいようにパターンを改良したそうだ。

さらに、今回のオープンに伴い、『FINAL HOME GRAPHICS』というプロジェクトをスタート。これは毎回、世界のさまざまな地域に注目し、そこに根ざしたアーティストの作品を展示するとともに、コラボレートした商品を販売する、というアート企画である。その第一弾として、12月6日からは、イギリスのブライトンを中心に活動を行うアーティストをフィーチャーしたエキシビジョン『BRIGHTON based Creators』が行われるという。

また、“Re-HOME”という名の「さまざまな生活シーンに対応できる商品を開発することを目的としたプロジェクト」もスタート。その第一弾として、「SKATE FURNITURE」という土屋隆亮氏との出会いから生まれたスケートボードBAGも発表している。

メンズブランドのショップが原宿から恵比寿や中目黒などに移転する“脱原宿”の傾向は年々強まっており、目立たない場所にあえて出店する「隠れ家志向」はますます顕著化している。そんな中、同店は、メジャー化したことで幅広い層が集まるようになった「裏ハラ」エリアにあえて出店することで、「ブランド」としての可能性を広げたケースといえるだろう。

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