しかし、今回の GOTH MALL はそういったアメリカ発の“モールゴス”や”日本的ゴス文化”とは少し違う。
彼らが目指すのは、単なるリバイバルではなく、ゴスの精神を現代的に再解釈する場所だ。
「The Smashing Pumpkins(スマッシング パンプキンズ) のビリー・コーガンのインタビューに衝撃を受けたんです。『セックスに最適な曲は?』と聞かれて、『ゴスの世界ではセックスはしない。ただ黒い窓から黒い太陽を見つめているだけだ。』と答えていて。フレーズとしてもすごく格好いい。今回集まったメンバーは、まさにそういった“美学”をそれぞれの形で表現している気がします。それに、6人中4人が男性ですが、みんなフェミニズム的な考えを持っている。服の着方も、世界観も、性別にとらわれないという共通点があるんです。」(Omega)
「古典的でクラシックなゴスよりはユースカルチャーとの結びつきがあるゴスがいいですね。こてこてはしんどいから。渋すぎないっていうかアップデートされたゴスみたいなスタイルが好きです。ポップで突き抜けてる感じでいたい。」(Ido Kyo)
それぞれの感覚やムードの中に存在する“ゴス”。解釈や表現は違っても、その根底に流れるのは「自分の内側を見つめる」姿勢だろう。かつてのように反骨や退廃だけを叫ぶのではなく、自分の美意識を肯定するためのカルチャーとして、ゴスは今、再び息づいている。
「イベントに来てくれた人にスナップをお願いすると、喜んでくれることが多いんです。今後は2〜3ヶ月に1回のペースで定期化したいし、これからもお洒落して行こうという場になると嬉しいです。最終的には“本物のモール”でやりたい。本当に“ゴスがモールに来る”現象を、自分たちの手で作りたいんです。もちろんゴスだけのためじゃなく、いろんな人に来てほしい。人と人とが繋がる場所にできたらいいなって思います。」(Omega)
黒をまとうことが、単なる悲しみの表現ではなく「自分らしさの証」に変化を遂げている時代。DIYで服をカスタムしたり、小さなブランドやクリエイター同士が繋がったりと、ゴスは今「共創」へと進化している。GOTH MALL は、その感性を映す鏡のように、新しい世代の“ゴス”を、そして新しいコミュニティを広げていくかもしれない。
GOTH MALLを立ち上げたチーム。左から順にセレーナ美花、quietgrrrl、Omega、Yusuke Takamoto、Ido Kyo、Hirotaka Kuwayama。