Rakuten Fashion Week TOKYO 2023AW:Day1
レポート
2023.03.16
ファッション|FASHION

Rakuten Fashion Week TOKYO 2023AW:Day1

海外からのジャーナリストやフォトグラファーが戻ってきた!
渋谷・表参道だけでなく、日本橋や丸の内、羽田などでも関連イベントが開催。

冠スポンサーが楽天になってから4年。
久しぶりに毎日9〜10ブランド(含デジタル発表)、合計58ブランドが2023年秋冬の新作を披露する「東京コレクション」が始まった。

13日(月)に開幕した、Rakuten Fashion Week TOKYO 2023AW、初日は、11時からIRENISA(イレニサ)のショー。10時半には会場のヒカリエ・ホールA前にはすでに大勢の人が集まっており、中には招待状を持っていないファッション好きの若者たちも当日券(並んでいて最後に席やスタンディング等に余裕があった場合に入れることもある)を求めて集まっていた。

また、そんな若者たちをスナップしようというプロ/アマ問わないカメラマンも目立ち、COVID19前の懐かしい華やかなファッションウィークの風景が戻ってきたようだった。
(文責:高野公三子)

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IRENISA(イレニサ):デビューショー
完成し過ぎない、自然な美しさの大人服。

2023年3月13日(月)11:30/渋谷ヒカリエホールA

元ヨウジヤマモトと元サポートサーフェスという全く異なる服作りのアプローチによるキャリアをもつ小林祐さんと安倍悠治さんによるブランドIRENISA(イレニサ)。コロナが怖くてネガティブなものという印象だった2019年にブランドをローンチ。最初の展示会をファッションウィークで披露して以来、袖を通すとわかる少しクセのある新しい上品な大人のメンズウエアとしてみるみる若い世代を中心に大人気に。東京都と日本ファッションウィーク推進機構(JFWO)が共催する「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)」を受賞し、今回初めてのランウェイショーを披露した。

「今の服装の時代、アバンギャルドではなく、上品な皮肉というような感覚でしょうか。職人の技巧に見られるような手の技と完成し過ぎない美しさを目指しています」。

「モディファイドスリーブ(肩の部分がやや内側に入っている)」が特徴のテーラードのジャケットやコート、ミリタリーをデザインのベースとしたアウターなど、一見ベーシックなアイテムを、京友禅や柿渋染め、職人の縫製の技巧とデザイン・パターン等とのハーモニーで、上品で美しい大人服として仕上がっていた。

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YUEQI QI(ユェチ・チ):
LVMHプライズにノミネートされた今注目のデザイナー

2023年3月13日(月)14:00

インビテーションを見て、会場が新宿の「珈琲西武」と知った時点から、ワクワク楽しみにしていた中国のファッションブランド「YUEQI QI(ユェチ・チ)」。英セントラル・セントラルマーチンズのニットデザイン科を卒業後、2020年春夏に上海ファッションウィークでデビューし、さっそくLVMHプライズにもノミネートされたという実力派だ。

レトロな喫茶店の内装にメタリックなニットウエアや惑星のプリント、パンクなヘアメイクに、一巡してポップなバッグ、今わたしたちがどの時代に生きているのかを一瞬錯覚させるかのような世界観に、Groundsのスニーカーがフューチャリスティックなエッセンスをプラス。途中、妊婦のコムアイさんが生命の源の記号のように膨らんだお腹が輝いていたのにはドキドキ。最初から最後まで目が離せないショーだった。

また、広くない会場には、今注目のファッションブランドのデザイナーやエディター、フォトグラファーなど“ファッションをつくる人たち”もショーの一部始終を見守っていた。雑誌『GINZA』の2023年3月12日配信の記事で「気鋭のデザイナー、ユェチ・チと仲間たち」という記事にあるように、クリエイティブは世界を簡単に超えて連鎖する。「ファッション」にもコミュニティが大事な時代になっていることも改めて感じた。


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D.Nart.Ampta(ディー・ナート・アンプタ) Z世代デザイナーによる、ストリートファッション/裏原系ファッションxモードの再解釈。

2023年3月13日(月)15:00/表参道ヒルズスペースO

“Un wind〜意図を解く様にリラックスして”というテーマで初めてのランウェイショーを表参道スペースオーで発表したブランドD Nart Ampta(ディ・ナート・アンプタ)。デビュー2シーズン目を迎え、裏原宿系のストリートファッションが大好きだった自身の24年間のファッション人生を振り返り、「そこにモードの表現を加えた」のだとデザイナーの大縫理央さんは話す。

レースのプリントがアクセントになったジャケットやコートといったベーシックなアイテムにグラフィックが施されたスウェットパンツ、時折混じった下駄など、「ACROSS」編集室の“ストリートファッション史”からすると、いろんな文脈が混ざって自由に解釈されていたのがとても新鮮だった。

ちなみに、ブランド名の意味は、"D"ダイバーシティ、一人ひとりの違いを尊重し、立場、環境、言語に囚われる事なく、フラットに関わること、"N"ナート、クリエーターと社会、人と服との関係を再考し縫い合わせると、"A"アンプタ、創造に対する壁を無くし、服という概念を再定義することだそう。

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SEVESKIG(セヴシグ)/(un)decided:初めてのランウェイショー フィジカルとバーチャル(AR)の共演

2023年3月13日(月)16:00/渋谷パルコ 10F;commune

2023年秋冬でブランド設立10周年を迎える「SEVESKIG(セヴシグ)」。ウィメンズライン「アンディサイデッド((un)decided)」も加えた初めてのランウェイショーをフィジカルとバーチャルのミックススタイルで開催された。

今シーズン4回目となる同ブランドのデザイナー、長野剛識氏が影響を受けたというアニメーションとのコラボレーション。筒井康隆原作・今敏監督の『パプリカ(PAPRIKA)』か、モデルはさまざまなキャラクターがデザインされたリアルな服を着用し、観客は、「COCOAR」というスマホアプリをかざすと、3DCGで描かれたキャラクターなどがARにて表現され、スクリーンショットすることで共演した映像を手にすることができるという仕組みになっていた。

会場となった渋谷PARCO 10F/ルーフトップには合計約450名(!)ほどの人が集まり、ほぼ全員がスマホをかざしながらショーを鑑賞するというユニークな風景が展開された。

リアルとバーチャル、新しい身体体験はふつうはシンプルにワクワクするものだが、FPM(田中知之氏)による音楽は、ショーのオープニングからエピローグまで、“NO WAR”のメッセージも込められており、メタファーとして描かれていたものたちが一気に現実に引き寄せられ、その境界線が曖昧になっている「いま、ここ」が浮き彫りになった。

また、3月16日から、渋谷パルコ B1「QUATTRO LABO(クワトロ・ラボ)」にて、AR機能付きの限定グッズや、VFX(ビジュアル・エフェクツ)を再現したNFT特典の服などを扱う予定だ。

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「PAPRIKA x SEVESKIG RADIO CLUB展」
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KHOKI(コッキ):初めてのランウェイショー 壮大な物語で披露された、超消費社会の“脱構築”

2023年3月13日(月)18:00/渋谷ヒカリエホールA

「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)」受賞ブランド2組めは、2019年にローンチしたKHOKI(コッキ)。ヒカリエ・ホールAで初めてのランウェイショーを発表した。

ファッションに限らず、どんな人が作っているのかが重要視されがちななか、同ブランドのデザイナーは真逆の非公開。ラグジュアリーブランドなどで経験を積んだ若手数名によるデザインチームが、毎シーズン「民族、クラフトマンシップ、前衛、幼少時代」をキーワードに服やアート、ものづくりを行っている。

ショーは、まるで「シャーロックホームズ」が活躍していたヴィクトリア時代のどこかのお屋敷が舞台。廊下が迷路のように連なったランウェイを、大きなドレスや奇抜なヘッドピース、ノルディック調のニットやキルティングやパッチワークといった多様なモチーフによる独特の脱構築スタイルのモデルたちが闊歩した。鳥のさえずりのような森の自然の音から大音量のストリングスが空間を繋ぎ、物語のエピローグへ。

実は、KHOKIチームは、自分たちでECサイト「EYE」を運営しており、オリジナル商品のほか、KHOKIチームがふだん目にしている本や家具、服などを公開・販売している。他にも、都内のアトリエにて毎月第1金曜日/土曜日に予約制でによる「Fitting(試着会)」を開催するなど、“新しい消費のありかた”を実証実験しているかのようでもあり、今後の展開がますます気になるブランドだ。

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Chika Kisada(チカ キサダ) タイトル

2023年3月13日(月)19:00

初日最後は、楽天の日本発ブランドの支援プロジェクト「バイアール(by R)」から「チカ キサダ(CHIKA KISADA)」が、6年ぶりのショーを披露した。

「“マスキュリン、フェミニン、センシュアル”が今シーズンのキーワードです」とデザイナーの幾左田千佳さん。バレエダンサーの経歴を持つ彼女らしい、身体とファッション、そのあわいを音楽にのせていっしょに表現した美しい舞台芸術となっていた。

衣装は、ピンク〜グレーのなんともいえないスモーキートーン、ニュアンスカラーのチュールドレスが軽やか。テーラードのジャケットやデニムなどがオーガンジーのベールに包まれ、今シーズンのテーマである“霧の花”が舞台いっぱいに広がった。

ショー構成も、バレエダンサーの二山治雄氏をオープニングだけでなく、中盤ではシアーカーテン越しにダンスを披露(その時にストリングスが力強い演奏に)、エンディングではそれを破って大きくジャンプ。美しさが強さに変化する瞬間が提示された。

ストリーミングで視聴していたコレオグラファー(振付家)の菅沼伊万里さんは、「常にファッション界はダンスの見識を、ダンス界はファッションの見識を深めて欲しいと思っているので、このようにダンスをしっかりとアートやファッションとして披露してくれたことに感謝しかない」とコメントしていた。

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今シーズンの概要はこちらをどうぞ。
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なお、楽天ファッションウィーク公式サイトでも、オンラインで発表するブランドの一覧が紹介されており、随時更新もされるので参照ください。


*楽天ファッションウィーク公式HP:オンライン発表ブランド一覧

https://rakutenfashionweektokyo.com/jp/


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