AMIMONO SPIN STORE
レポート
2022.06.23
ファッション|FASHION

AMIMONO SPIN STORE

「好きな時に好きなだけ」〜DIY&究極な「暇つぶし」

実は町から消えていた手芸店。毛糸&編み物教室が、ここ渋谷に誕生。


「ACROSS」編集室の事務所は渋谷・神泉町にある。渋谷の喧騒からは少し離れていて、小規模で気の利いた飲食店がポツポツ立ち並ぶおしゃれエリアとしても注目されていたが、COVID-19のパンデミックの影響でその風景もずいぶん変化した。閉店したお店も少なくないが、一方、新しくオープンしたところも出てきている。
 
今回取材・紹介する毛糸・編み物ショップ「AMIMONO SPIN」もそのひとつ。ふだん、渋谷パルコ方面への移動にはいくつかのルートがあるのだが、たまたま、別の路地を入った時、「あれ、こんなところに?」と見つけたのだった。

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目の覚めるようなピンクやイエロー、オレンジ、グリーン、トランスペアレントなどの毛糸がいっぱい。

大都会のなかの渋谷ネイバーフッドたちの出会いとはじまり


「とにかく、編み物の楽しさ、素晴らしさを多くの人に広めたいと思って、こういう場を作りました」と話すのは、オーナーのあすかさん。ニット講師のみゆきさんと2人で事業を開始したのは、最初の緊急事態宣言が明けて街に人が戻ってき始めた2020年の8月のことだった。COVID -19に関しては、どうなんだろうと迷ったものの、「今やらなかったらきっとずっと同じ生活だし、こんなに楽しいじゃん!」という勢いもあって決心したと話してくれた。

みゆきさんとのあすかさんの出会いは、意外にもみゆきさんが働いていた渋谷のとあるバー。あすかさんはお客さんとして通っていたところ、バーの空いている時間を使って、みゆきさんがニット教室をやるようになったのがきっかけだったそう。

「お花とか着物とか、陶芸とかゴルフとか、ひと通りいろんな習い事をやってきてたんですが、どれもハマれなくて。それが、あるとき、みゆきさんに誘われて、編み物のワークショップに参加したら、これだ!って一気にハマりました」(あすかさん)。
 
JWアンダーソンとユニクロのコラボ?を思い出した一見難しそうなカラフルなボーダーニット。「ぐるぐる編むだけ」で簡単なのだとか。
取材当日も入れ替わり、レッスンを受けにお客さんが来店。おしゃべりしながら、黙々と手を動かしていてとっても幸せそうでした。手前にはソファ席や編み物関連の書棚もあり、終わった後にいろいろ雑談することもあるそう。

ワインセラーのような毛糸の棚やバーカウンター、ソファーなども。 目指すは編み物好きのためのサロン


場所は、東急Bunkamuraを旧山手通りに向かう道から少し入った神泉駅に向かう路地を入ったところの新築のマンションの1F。約20坪のスペースは、毛糸などを販売するところを編み物教室・サロンのようなスペースに分かれている。ワインセラーのような毛糸の棚や、部分的に壁にあしらわれたレンガ、家具などから、お店のロゴなども全て、知り合いの都内のグランピング施設なども手がけるアレックスクリエイトの方に直接オーダーしたそうだ。奥には、バーカウンターも配備。いずれはちょっとしたカフェ、バーのようなサービスも付加したいと話す。

 

「先生、ここ3段で合っていますか?」

「はい、あってます。とっても上達していますね。これだったらすぐに完成しますね!」

 

取材で伺った平日の午後も、女性が2名みゆき先生のアドバイスを受けながら、楽しくおしゃべりをしながら黙々と手を動かしていた。1人が帰った後もまた別の女性が来店。先週から編んだ部分を先生に見てもらっていた。COVID-19ということもあるものの、先生とほぼマンツーマンで指導してもらえるのは嬉しいし心強い。

 

「価格の設定はとっても悩んだんですが、初めての方でも無理のないよう、1時間1,500円としました」(あすかさん)。

 

実家住まいのあすかさん。お姉さんも“編み物ファン”に引き入れ、さっそく常連さんになっているのだとか。

 

「お客様は女性だけでなく、男性もいらっしゃいます。オープン当初、毎日通われていた男性がいらしたのですが、カウチンセーターを結局、6着でしょうか。編み上げてらっしゃいました」(あすかさん)。

  

お客さんは、もちろんご近所の方も少なくなく、中には1人で通ってくる小学生もいるという。一方、実は、近年町から手芸ショップが消えていることもあり、ネットで探して遠くから車で来店する人も少なくないという。車は近所にコインパーキングもあるが、店頭のスペースに1台だったら横付け可能だ。

 

それもそのはず、同店では他では見たことのないような毛糸もいっぱい。目の覚めるようなポップなピンクやイエロー、グリーンといった単色のものの他に、複数の色が絶妙にミックスしたもの、また、ウールやコットンだけでなく、和紙だったりなど、素材も豊富で、オンラインでも販売されていて人気だそうだ。

 

「和紙は、バッグや帽子などに適してるんです。先日は、山形の佐藤繊維さんに別注して、特別に染色してもらいました。オリジナルカラーですね。個人的には、いま素材にとっても関心があって、いろいろみゆき先生と探しているところです」(あすかさん)。



奥にはコーヒーやお酒もサーブできるカウンターも(左)。「AMIMONO SPIN」のオリジナル別注カラー。鮮やかなものだけでなく、優しい色合いの毛糸も(右)/写真提供:AMIMONO SPIN。
左がオーナーのあすかさん、右はビジネスパートナーで編み物の先生のみゆきさん。

自己流も楽しいけれど、やっぱり「習う」ことからの学びは大きい。


編み物教室は、文化服装学院やヴォーグ学園などの大手以外は、先生が自宅で開催しているケースが少なくないそうで、アットホームな一方、新しいデザインやアイデアに出会う機会は案外限られているのかもしれない。しかも、編み物やってみたいな、とふわっと思って関連書籍を買って読んでも、案外難しい。最近だとYOUTUBEもあるが、料理と違って、分からなくなった時に「どうにかなる」にもなりにくい。出来上がったサンプルを見せてもらうと、やはり、シルエットや素材のバランス感が絶妙で、いわゆる手編みとは異なる完成度が感じられた。採寸から素材選び、編み物のゲージ、目数や段数を算出するのにかなりコツがありそうだ。

ちなみに、みゆきさんは、昔編み物をやっていたそうで、数年前、改めて多田洋子青山ニットスタジオに習いに通い、日本編物検定協会で講師の資格も取得したのだそう。

「やっぱり、習うことが大事だと思います」とあすかさん。

最後に、編み物の魅力は?と再度尋ねたら、
「まず、かわいい!綺麗な色で編んでいると本当にテンションが上がるんです。そうですね、、究極のひまつぶし、じゃないでしょうか。ご近所ですし、やりませんか?」と誘っていただいた。じわじわ流行しているモチーフ編みから始めてみようかしら、と決心した。

[取材・文:高野公三子(本誌編集長)]


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