ヴィンテージマーケットの今と、これから
レポート
2022.04.19
ファッション|FASHION

ヴィンテージマーケットの今と、これから

ゲストスピーカー:株式会社Grimore代表/VCM代表 十倍直昭さん

〜「ACROSS」編集室主宰トレンド情報共有会の記録から

2022年2月にオープンしたVCMのマーケット型リアル店舗「VCM MARKET BOOTH」。
「ACROSS編集室」では毎月、社内・グループ内向けに「トレンド情報共有会」という勉強会を主宰しています。前半は当該月の「定点観測」の考察で、後半はその時どきのトピックを象徴する現象について、社内外からゲストをお招きする2本立て。かれこれ10年くらいになりますが、今年度よりその一部をレポート記事として本サイトにて紹介することにしました。

記念すべき第1回目は、昨今の古着・ヴィンテージブームを背景に、全国各地にあるヴィンテージショップから約100店舗を厳選し、VCM(VintageCollectionMall)としてオンライン上に「ヴィンテージECモール」という新業態をローンチした、株式会社Grimoire(グリモワール)の代表、十倍直昭さんをお招きし、改めて「ヴィンテージマーケットの今と、これから」と題してお話しいただきました。

数年前より大人気のヴィンテージのエルメスやティファニーなどのアクセサリー。2022年春はカルティエやロレックス、グッチなどヴィンテージのブランドウォッチが人気に。

お手本は海外のマーケット、
コロナ禍が後押ししたネットワーク型ヴィンテージ店舗の誕生

高野(以下、MC):今日はよろしくお願いします。

十倍代表(以下、十倍さん):こちらこそよろしくお願いします。

MC:さっそくですが、十倍さん。会社のウェブサイトを拝見して驚いたのですが、ヴィンテージ総合モールを立上げられた他に、青山にギャラリーもローンチされていたのですね。

十倍さん:はい、ヴィンテージを軸としたクリエイティブ事業を様々やらせていただいております。

MC:2月から渋谷パルコ4FにVCMのマーケット型リアル店舗「VCM MARKET BOOTH」をローンチいただいたわけですが、その前史ともいえるイベント「VCM MARKET」を、昨年10月に渋谷店屋上で開催して頂き、これが本当に大盛況で。本当にありがとうございました。
この「VCM」に関しまして、すでにいろいろなメディアでもインタビュー記事が出ているかと思いますが、改めて立ち上げられることになったきっかけについて教えていただけますか?

十倍さん:はい。発想のヒントになったのは、世界中を旅して見てきた海外のフリーマーケットなんです。洋服だけじゃなく、家具や雑貨とかが一緒に売られていて、日本では値段が付かないようなモノにも値段が付いていて、そういう自由な雰囲気にすごく魅力を感じ、日本にもそういうマーケットを作ってみたいな、ということから、VCMの業態を思いつきました。まずは、コロナ禍でも皆さんがお買い物しやすいFから始め、その後イベントとして発展していきました。

MC:近年、定点観測でも若者たちに古着が大人気で、ユーズドと言う人もいれば、ヴィンテージっていう人もおり、もちろん古着という人もいるのですが、その区別が曖昧になっているように感じます。

十倍さん:ここ最近、「ヴィンテージ」に対する捉え方が二極化していて、たくさんの中から古着を安く買いたいという層と、高くてもセレクトされた良いものを買いたい」という層が増えているんです。たとえば、一昨日は、4FのVCMで70万円のエルメスのブレスレットがポンと売れました。60年代のヴィンテージのものです。実はこのお客様、お店がオープンして以来3,4回通ってくださっていて、ある日、ご購入いただきました。今回、店内の半分くらいはエルメスやティファニー、グッチ、セリーヌなどの60年代〜00年代のヴィンテージのバッグやアクセサリーなどを扱っていて、そういう普遍的な価値のあるものを求める層が広がっているように思います。中には投機目的の方もいらっしゃるようです。

渋谷パルコ・平松次長(以下、平松さん):うちの若いスタッフなどは、1点もののヴィンテージは着ていて人と被らないから個性を主張しやすくていい、と言います。また、メルカリの浸透でリセールの概念もすっかり定着し、プライスの高い低い関係なく、フラットに捉える感覚が幅広い年齢層でも慣れてきたように思います。

十倍さん:もともとヴィンテージって「どこで探せばいいの?」っていうお客様の声があったのですが、コロナ禍で古着を扱うお店も販路拡大しようとEC化に悩まれていたという実態もあり、声を掛けさせてもらい、ネットワークが広がっていきました。ある意味、いいタイミングだったのかもしれません。
現在、「ファッション」「インテリア」「ライフスタイル」3本の軸に、洋服以外にも、ジュエリー、雑貨、家具、インテリア、ラグ、ポスター、ポストカードなど取り扱う商品の幅もずいぶん広くなりました。

可変式のパイプが内装デザインの特徴。豪華な什器ではなく、あえて商品群そのものが独特のゾーニングを形成している。出店者や商品の変化に準じて、「売り場」も変化するという商業施設としては新しい試み。
厳選された90店舗以上のショップが揃う、ヴィンテージ総合E Cモール「Vintage Collection Mall(VCM)。 https://vintagecollectionmall.jp/

オンラインからオフラインへ。
“SKWAT”×ヴィンテージを軸としたO2Oの誕生

そんな画期的なヴィンテージ総合ECモール「VCM」が、2020年2月25日に渋谷パルコの4Fにリアルショップ「VCM MARKET BOOTH」をオープン。商業施設内にヴィンテージショップがいくつも出店しているマーケット型の売場はまだ珍しく、連日視察の人も含めにぎわっている。

MC:2月のはじめごろだったでしょうか。たまたま通りかかった時に、渋谷パルコの4F「SKWAT!(スクワット)」の文字が一際目を引く仮囲いができていて、いわゆる70年代のヨーロッパで起こったアーティストたちが都市のスキマなどを占拠したスクワッターというアートムーブメントを彷彿とさせて、個人的にはワクワクしました。

平松さん:「SKWAT」は「DAIKEI MILLS」という設計事務所を運営する中村圭佑さんが「twelvebooks」の濱中敦史さんといっしょにスタートさせたプロジェクトで、都市空間やを気軽に上書きしていく、という彼らの思想に賛同し、パルコとも一緒に取り組んでいこうというプロジェクトの第1弾でした。

MC:VCM MARKET BOOTHのパイプを多用した可変可能な内装はとてもユニークでした。

平松さん:あの独特なオレンジ色の床は実は共用通路だったんです。完成してみたら、「唯一無二」という「SKWAT!」の哲学がぴったりハマって嬉しかったですね。
商業施設を運営している立場からすると、テナント運営ですから、どうしてもある時期が来ると改装しなくてはなりません。そういう意味では本当にスクラップ&ビルドで、ゴミなどもたくさん発生してしまいます。だったら、一度“SKWAT”して、ある程度のスペース・ゾーンを定め、例えばある時は本屋さん、ある時は飲食店とか、テーマで誘致したり転換していけば、ゴミも出ないし改装などのコストも抑えられる。そういうふうに考えた結果完成したのが、VCM MARKET BOOTHです。
実際に、ヴィンテージショップというこれまでの店舗ごとに区画をバラ売りするようなリーシングでは成り立ちません。とはいえ、これまでとは違う契約形態となると、それはそれで難しい問題もあったのですが、渋谷店の担当者の箱田さんや本社の法務担当者がいろいろ工夫して、対応してくれた結果、成立したという感じですね。

MC:なるほど、SKWAT!は、新しい業態を提案しただけでなく、実はテナントリーシングのスタイルまで変えてしまったのですね。

平松さん:売り場をつくる側としても、同じお店の中で30万円のエルメスと5千円のTシャツが同居していることが面白いですし、実際にお客様は自由に選んでいらっしゃるのも嬉しいですね。もともと私たちパルコは70年代の百貨店しかなかった時代に「専門店の集合ビル」として誕生したわけで、十倍さんたちのヴィテージマーケットのように、1つ1つが自立していて、「個」として成立していて、そういうモノが集積して成り立っている、ということが本当に感慨深いです。

十倍さん:いまVCM MARKET BOOTHに出店いただいているのは6店舗ですが、順次入れ替わっていく予定です。たとえば、3ヵ月出店した店舗さんが「またイイもの仕入れてきますので冬に御願いします」「買い付けの旅に出ます」といった具合に、「いい野菜が出来たから持ってきました」というマルシェみたいで楽しいじゃないですか。

個性的な色や柄をあえて提案するショップも(写真上)。洋服だけでなく、キリムやラグなどインテリアや雑貨なども人気だった。(写真下)

ルーフトップでのリアル店舗イベント「VCMマーケット」は大盛況!
「オンライン⇄常設スペース⇄イベント」という循環型に。

MC : 昨年の10月の最初の週末。ちょうど毎月実施している「定点観測」の日だったのですが、インタビューで来街目的も伺うのですが、「VCMマーケットに来ました」という方が偶然にも3組もいらっしゃって、しかもみなさんとってもおしゃれな方で、そういう方たちに実際に渋谷パルコに来店いただいていたというのは嬉しかったですね。このイベント企画はどんな感じで実現したのですか?

平松さん:最初に話してから実行するまでは本当に早かったですね。VCM MARKET BOOTH が決まった時から、屋上(10F)の「Roof Top Park」を使ったイベントも不定期にやろう、という話はあったのですが、具体的に詰めてからはあっという間でした。おかげさまで大盛況。ヴィンテージをよく理解された意識の高い方々が目立ちましたね。出店者も個性派揃い。実際のところ、どのようにして出店者を決めているんですか?

十倍さん:ヴィンテージ業界は基本的にオーナーやバイヤーの個性が色濃く出るんですよ。たとえば映画好きとか音楽好きとか、そういうカルチャーが感じられるお店を選んで声をかけています。SNSとかHPとか、1つひとつ見て、声をかけています。品揃えとか写真の撮り方・載せ方とか、大体オーナーの感じとかもわかるんですよね、SNSとか見ていると。
そうやって声かけていって、VCMには現在全国約100店舗以上のヴィンテージショップに出店いただいています。基本的にこちらから募集とかはしていないのですが、希望される店舗さんからの問い合わせがどんどん増えています。 VCM MARKET BOOTHはその「リアル版」。そして、屋上でのイベント、VCMマーケットにはすでにVCMに出店いただいているお店さんもありますが、そうではないところもあり、約30店舗に出店いただきました。

マーケットの日はあいにくの強風だったため、屋上ではなく9Fと10Fの通路などのスペースも活用して開催。観察していると、みんな最低でも3周して自分のお気に入りを選んでいた。

ファッションのコンテクストを着る時代に大切なのは、
「数」ではなく、フォロワーと形成する「濃い」コミュニティ

平松さん:「GRIMOIRE(グリモワール)」の頃からずっとヴィンテージを見てこられたと思うのですが、売れているヴィンテージショップに共通する特徴とかはあるんですか?

十倍さん:あると思います。1つは専門性が高いこと。他にない品揃えがあって、もちろん知識も豊富であること。もう1つは、やはりSNSによる発信力があること、この2点ですね。といっても、インスタはフォロワー数ではなくて「濃さ」だと思います。お店と同じで規模が大きくなると中身が薄くなるし、小さすぎて熱量ばかりでもビジネスにはならない。バランスが大切だと思いますね。

平松さん:なるほど、フォロワーは数ではなくて「濃さ」。勉強になります。

MC:コミュニケーションだけでなく、ヴィンテージストアにおけるCRM分析なども興味深いです。売れ筋アイテムなども把握していらっしゃるんですか?

十倍さん:そうですね。やっぱり今は80年代、90年代のアイテムでしょうか。若い人は、「それぞれの時代のカルチャーを着る」という感覚で買い求める人が多いですね。たとえば、90年代初頭のラルフローレンのシャツとか価格が高騰しています。あとは、ずっと人気のミリタリーアイテム。また、春ということもあって、カラフルで個性的なシャツなどが人気です。

2022年3月25、26、27日、マーケット型リアルイベント「VCM MARKET」の第2回目が、渋谷パルコの9F、10Fで開催され、悪天候にもかかわらず、前回を上回る人で賑わった。

ACROSS編集室のスタッフも、それぞれ個別に“消費者”として訪問し、現場でばったり(!)というシーンも。全店舗を3〜4周して、「HOLIDAY WORKS」さんでシャツを購入したり、途中「commune」でお茶をしながら悩んだり、そのあと4Fの常設店舗VCM MARKET BOOTHでパンツを購入するなど、意図せず、商業施設ならではの回遊を楽しんだ。

今年41年めの「定点観測」を振り返ると、「“古着“のブーム」は過去に何度も訪れていたが、SNSなど個人メディアの浸透で、ファッションがカテゴライズしにくくなった2010年代以降、それはブームではなく、スタイルとして定着している。十倍さんが「(最近の若者は)その時代のカルチャーを着る」とご指摘されていたように、ファッションのコンテクストをどうデザインするのか、が大切な時代になってきたようだ。

[記録:菰田順二、文:高野公三子]

夢中になって商品を探していたら、気がついたら隣の店舗にいた、ということも。お店とお店の境目が曖昧なマーケットらしい雰囲気も好評だった。


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