ソロサウナtune
レポート
2021.01.19
ライフスタイル|LIFESTYLE

ソロサウナtune

ひとりで“ととのう”!完全個室の本格フィンランド式サウナが登場。
コロナ禍で誕生した、ソロサウナという新しいマーケット

このところ、サウナブームが拡大している。サウナを愛する”サウナー”を名乗る有名人や愛好家、サウナのための普及活動を行う“プロサウナー”が登場し、サウナがメディアに取り上げられる機会も増加。「サウナイキタイ」「サウナーズ」などのサウナ専門サイトや関連書籍も増え、「TTNE PRO SAUNNER(ととのえ プロサウナー)」などのサウナ専門ブランド「Metos Sauna Soppi(メトスサウナソッピ)」(八王子)などのサウナアイテム専門店も登場。屋外でサウナを楽しむ”アウトドアサウナ”も好評で、日本最大級のサウナフェス「SAUNA FES JAPAN(サウナフェスジャパン) 」、12月には東京・有明で屋外テントサウナイベント「NAKED SAUNA-ART OF MEDITATION-(ネイキッドサウナ)」なども開催された。

実は渋谷PARCO・GALLERY X でも、11月に「POP UP SENTO パルコ湯」を開催し、プロジェクトチーム「SENTO FOREVER」がキュレーションした40組以上のクリエイターや企業の銭湯・サウナグッズを販売。期間中のイベントは若者を中心に行列ができる人気ぶりだった。

年齢や性別を超え、カルチャーとして定着しつつあるサウナ

 サウナ人気拡大のきっかけのひとつが、雑誌『モーニング』で連載された漫画家タナカカツキ氏の『マンガ サ道~マンガで読むサウナ道』(講談社・2016年)だろう。サウナによって得られる多幸感を「ととのったー!」というキラーフレーズで描写し、新しいサウナの楽しみ方をポップに提示(実はこの作品、漫画版のずっと前2011年にパルコ出版から活字版エッセイ『サ道』が発売されているが、現在は絶版に)。2019年7月にはテレビ東京でドラマ化され、若者や女性など広い層に人気を拡大。昨今では「サウナ=おじさんのもの」というイメージは薄れ、年齢や性別を超えたひとつのカルチャーとして定着しつつある

こうしたブームが続くなか、日本で初めて”ソロ”で楽しめる完全個室のフィンランド式サウナ「ソロサウナtune(チューン)」が2020年12月4日、神楽坂にオープン。新しい形態のサウナとして話題を集めている。
サウナ室のベンチは横幅2m、奥行き60cmで寝転がってゆったり楽しむこともできる。間接照明のみのライティングにより実際の明るさは写真よりもっと抑えられているため、メディテーションなどもしやすい。
フィンランド式サウナに欠かせないのがロウリュ(日本語で“蒸気”の意味)。ロウリュとは、サウナストーンに水をかけて水蒸気を発生させ体感温度を上げる行為。湿度により苦しくなく、身体の深部からじっくり温まることができる。好きなタイミングで“セルフロウリュ”ができるのもソロサウナの醍醐味だ。
 同店があるのは、神楽坂駅からすぐのホステル「UNPLAN(アンプラン)」の1階。明るいカフェスペース横にある受付を通り、紺色ののれんをくぐると、ダークグレーの落ち着いた空間が広がる。

同店を運営するtune株式会社取締役の河瀬大介さんはサウナ歴20年というサウナ愛好家で、実は、コロナ禍以前からソロサウナの構想があったという。

冷却スペースには400口径のオーバーヘッドシャワーを設置し、頭上から全身にしっかり冷水を浴びることができる。水温調整が可能なシャワーヘッドと、シャンプーやボディソープもセットされている。
オーバーヘッドシャワーの水温はチラー(冷却器)によって1年中15℃前後を維持。しっかりクールダウンできるよう水温にこだわった。

コロナ禍で誕生した、ソロサウナという新しいマーケット

ソロサウナ構想のきっかけは、長年サウナに通うなかで、自分の好きなペースや温度でサウナを楽しみたいと感じ始めたこと。周りにサウナ好きも多く、サウナ室の順番待ちや冷水待ちのストレスなく楽しみたいというニーズを感じていました。オープンの直接のきっかけとなったのは、やはり新型コロナの感染拡大ですね。スパ・サウナはいち早く営業規制となり、サウナに行けないストレスもあって、事業化を決意しました」(河瀬さん)。

珍しい印象のソロサウナだが、実はサウナの本場・フィンランドにはプライベート用・集団用の2種類のサウナがあるという。前者は一家にほぼ一つあるという家庭用サウナ、後者は外出先で楽しむ公共サウナで、グループコミュニケーションやレジャーの役割を果たしており、日本のお風呂のような存在であることが伺い知れる。「銭湯やスパに併設された従来の日本のサウナは、主に集団用。ソロサウナという新しいマーケットを広げることで、サウナ業界の拡大や活性化にもつながると考えました」(河瀬さん)。

幅広い人に楽しんでもらいたいと、ターゲットはあえて絞っていないという。ソロサウナなら、コロナ禍でもお年寄りや持病など身体的にハンディキャップがある人を含む全ての人が、自由に安心して楽しむことができそうだ。
休憩スペースには頭上にサーキュレーターを設置しており、屋外にいるような“微風浴”でしっかりチルアウトができる。

サウナで“ととのう”とは?

サウナの魅力については、「情報に囲まれて休息をとることが難しい現代のなかで、心身ともにリラックス・リセットできること」と河瀬さん。サウナ好きの経営仲間が集まり設立した会社名「tune」には、「自分らしくサウナを楽しみ、自分をチューニングしてほしい」という想いが込められている

ソロサウナ用の個室は、コンパクトなプライベート空間ながらも、着替え・サウナ室・冷水によるクールダウン・リラクゼーションがスムーズに完結するようレイアウトにこだわった。サウナ監修は、河瀬さんの長年の知人でありサウナプロデューサーの秋山大輔さん。自分に向き合えるようにメディテーションの要素を取り入れ、各部屋の照明の輝度や色温度を調整、居心地の良い空間を目指したという。

「サウナは冷水との繰り返しというイメージが強いが、実はサウナで重要なのが休憩。サウナと冷水、休憩を繰り返すことで、交感神経から出るアドレナリンが残ったまま副交感神経が優位になり両方が共存した状態、つまり”ディープリラックスしながらも冴えている”状態になる。これが、サウナ愛好家がいう究極の快感=「ととのう」こと。スポーツ選手の”ゾーン”に近いと言われていて、経営者やビジネスマンでサウナ愛好家が多い理由もおそらくここにある。1時間でサウナ8〜9分、冷水1分、休憩10分を2〜3セットを繰り返すのが理想的ですね」(河瀬さん)
ドアを開けるとすぐに脱衣用のカウンターがあり、奥が休憩スペース、左手がサウナ室と冷却スペースになっている。
基本1人利用の個室だが、4部屋うち1部屋は同性3名まで収容可能なグループルームとなっており家族や友人と一緒にサウナが楽しめる。
メインのサウナ室には本場フィンランドから輸入したサウナストーブと、フィンランド式ロウリュ(サウナストーンに水をかけて水蒸気を発生させる入浴法)を導入。白樺エキスを抽出したオリジナルのアロマ水をかけて、自分の好きな温度や湿度で楽しむことができる。日本で一般的なドライサウナ(高温・低湿)に比べて、フィンランド式サウナは75〜80度の低温・高湿で、身体の深部からじっくり温める効果がある。さらに横になったり自由な体勢で過ごせるよう、室内には横幅2m、奥行き60cmの栂製のベンチと枕を用意した。

また、冷水のシャワーにはチラー(冷却機)を完備し、通年を通して”サウナー理想の水温”である15度前後をキープ。400口径の大型ヘッドシャワーやウルトラミストがあり、頭から肩から体全体をしっかりクールダウンできる。あえて水風呂なしにした理由は「オフィスや空港など幅広いニーズに対応するべく、サウナの一連の流れを最小限にパッケージ化したかった」と河瀬さん。最初は「水風呂がない」とネガティブに捉えるサウナーも少なくなかったが、実際に体験すると「水風呂がなくてもととのう!」と好評だという。

瞑想がしやすいように黒で統一された休憩スペースには、低く安定感のあるアームチェアと”微風浴”が楽しめるサーキュレーターを設置。野外で休息しているような気分が堪能できる。室内にはスマホと接続可能なBluetoothスピーカーがあり、自分の好きな音楽をかけてリラックスすることも可能だ。
利用は完全予約制。専用サイトから2週間後までの予約が可能だが、オープンから1ヵ月以上経った今でも全室満室で予約困難な状況が続く人気。こちらは3名までのグループルーム。
個室以外に、女性専用のパウダールームを設置。チェックアウト後にゆっくり身だしなみを整えることができる。

ウェルネス&ビューティー需要にもマッチ。トレンドに敏感な20~30代女性にも拡大

神楽坂という立地を選んだ理由は、「衣食住など自ら上質なものをきちんと選ぶ人が住む理想的なエリアだった。ホテル内なら利用客同士のシナジーも大きいと考えた」と河瀬さん。物件探しの際、コミュニケーションやコミュニティの形成ができるような飲食スペースも欲しいと考えていたところ、ちょうどホステル「UNPLAN」社長との出会いがあり出店に繋がった。「ソロサウナtune」は1階奥の元客室の一部を改装して作られており、サウナ後は併設のカフェでクラフトビールやサウナ飯が楽しめる価格はシングルルームは60分3,800円、最⼤3名入れるグループルームは70分1万1,400円
ホステル1階カフェスペースの奥にソロサウナ tuneの受付があり、チェックインの手続きをする。右手はゆったりしたカフェスペースとなっており、サウナ後は仕事や飲食など自由な過ごし方ができる。
近年のサウナブームについて河瀬さんは「特に20〜30代女性の間で、美容の視点からサウナのニーズが高まっていると感じる。若い女性はSNSを通して圧倒的な発信力があり、コロナ禍以降は特にライフスタイルやウェルネス関連の発信が増えている。行きたいけど行きづらいという”隠れサウナファン”も多いのでは」と語る。一方、経営者やビジネスパーソンにもサウナ愛好家は多い。心身を整えることで仕事に集中でき、アイディアも生まれやすくなるほか、仕事仲間のコミュニケーションの場所としても機能しているという。実際にヤフーの川邊健太郎社長をはじめサウナ好きを公言する経営者も多く、経営者の本田直之氏・”ととのえ親方”松尾大氏による共著『人生を変えるサウナ術 なぜ、一流の経営者はサウナに行くのか』(KADOKAWA)も話題に。静かに自分と向き合うサウナは、「今この瞬間」に意識をおくマインドフルネスの考え方にも通じていて、心身ともになかなか休まることがない現代人にとって必要な空間なのかもしれない。

このような背景を基に「今後はお客さんのニーズを拾いながら少しずつ変化させていく予定」と河瀬さん。現在ソロサウナを含む4つのtuneプロジェクトを進行中で、複数で楽しむ貸切の”プライベートサウナ”のほか、オフィスに併設して仕事の休憩やコミュニケーションの場となる”オフィスサウナ”も展開予定。さらにサウナによる”ととのい”の効果を計測・数値化する“サウナアプリ”を開発中。普段の体調管理にも役立つというから楽しみだ。

【取材・文=フリーライター・エディター/渡辺満樹子】
サウナ歴20年というサウナ愛好家でもある、tune株式会社取締役の河瀬大介さん。
「ソロサウナtune」が入居するホステル「UNPLAN Kagurazaka(アンプラン・神楽坂)」。


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