ACROSS海外レポート: NYC 2020夏。
レポート
2020.08.24
ワールド|WORLD

ACROSS海外レポート: NYC 2020夏。

「フェーズ4」でも無期延長となった店内での飲食。

「オープンレストランツ」「オープン・ストリート」の浸透で変わる街の主役。

6月から段階的に進められているニューヨーク市の再開は、7月20日に「フェイズ4」を迎えた。入場者数を制限した上で動物園などが再開する一方で、レストランや映画館、モールなど屋内の活動は引き続き停止したままだという。

NY在住20年以上のコンサルタントYoshiさんからのCOVID-19レポート、その後です。


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かなり人が戻ってきているダウンタウン。食事はアウトサイドがデフォルトに。

フェーズ4のニューヨーク。
無期限に延長された飲食店をサポートする「リパーパス」な施策。


入場者数を制限した上で動物園などが再開する一方で、レストランや映画館、モールなど屋内の活動は引き続き停止したままとなり(*注1)、米国各地で感染拡大が続く新型コロナウィルスが再び飛び火することを防ぐ構えが明らかになった。

並行して、これまで自動車が占有していた場所を、歩行者や自転車、飲食店向けにリパーパス(異なる目的のための再利用)する試みが続いている。

市内の飲食店は屋外に席を設置することが可能になり(「オープン・レストランツ」)、8月20日時点で9,800件を上回る飲食店が同プログラムに登録済みだ。また市内67マイル(107km)相当のストリートが歩行者と自転車向けに閉鎖され(「オープン・ストリーツ」)、自動車の通行を禁止した上で、週末に飲食店に開放するブロックは市内85ヶ所にまで増えている。

レストランの席が車道に食い込むことで、自動車の肩身は狭くなる。車道の両側から飲食スペースが張り出す場所では、乗用車1台がかろうじて通り抜けられるほどにまで車道が狭くなり、自ずと自動車はスピードを落とすことになる。夏の夜の歩道からレストラン客の話し声や食器の音が聞こえてくるのも悪くない。


*注1:レストランとバーの室内での営業は、7月6日に導入された「フェイズ3」で解禁になる予定だったものの、全米各地で感染拡大が続いていること、感染拡大と屋内での飲食が関係している可能性が指摘されていることから、一転して無期限延期に変更された。これに対して飲食業界は、先の見えない不透明感に反発し、明確なガイドラインの発表を州・市政府に強く求めている。


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人気のカフェレストラン「12脚の椅子(12 CHAIRS)」のインスタグラムより。窓辺に設けたカウンター席を含めると、12脚どころか合計70脚以上に! (https://www.instagram.com/12chairscafe/)

経済再開の「フェイズ2」は、
NYC Open Restaurantes(オープン・レストランツ) から。


レストランにとっては、屋内での営業時と同じ席の数を確保できるかどうかが屋外営業に踏み切る目安らしく、どの店も場所の確保に忙しい。ソーホーのサリヴァン・ストリートには「12 Chairs」というその名の通り、「12脚の椅子(12 CHAIRS)」https://12chairscafe.com/soho/)でこじんまりと営業していたチャーミングなレストランがあるが、ここ数ヶ月の巻き返しを図ろうというわけか、今では通常の何倍もの席を車道に展開し、店名を「少なくとも70脚の椅子」に変更してはどうかともっぱらの噂だ。

屋外での飲食店の営業には特有の問題もある。屋内とは全く異なるオペレーションになるため新しい店をオープンするようなものだし、歩道に面したカウンターで営業するバーはほんの少しでも目を離すとカウンターに置いたチップが盗まれる。そればかりか歩道に置いた椅子でさえしばしば消える。そして雨が降ればたちまちテイクアウトだけの営業に戻ることになる。

さらには客と客との距離が十分に保たれていることや、マスク着用の徹底を求めるのは飲食店の責任とされていて、その措置が十分ではなかったという理由で、ウェスト・ヴィレッジの老舗バー、「ホワイト・ホース・タヴァーン(White Horse Tavern)」(https://whitehorsenewport.com/)が7月初めに営業停止になった。

すぐそばに住んでいたアーバニストのジェイン・ジェイコブスや、さらに遡ればジェイムズ・ボールドウィンなどが常連客として通い、数多くの会話と物語を生み出した場所として知られている。多くの人の目がストリートにあることで犯罪を防止することになる。そう主張したジェイコブスがモデルとして描いたハドソン・ストリートのバーが、店の前に多くの人が集まりすぎるという理由で営業停止に遭ったことは、控え目に言って皮肉に過ぎる。

カフェがコーヒーを買う場所のことならデリバリーで十分だし、友人と飲むなら「Zoom飲み」で足りる。人がバーやレストランにやってくるのは、人と会い、知らない人たちと言葉を交わすためなのだ。

17-18世紀のロンドンのコーヒーハウスで続いた商人の情報交換であれ、20世紀を迎えるウィーンのカフェでの政治談義であれ、人と会い、言葉を交わす、そのありようは今日のバーも変わりはしない。異なることといえば、現在の環境下ではそれがウィルスを交わすことになりうるということだ。会話や物語と切り離された「人との距離を保つバー」は、果たしてバーといえるのかどうか。

州や市の規制も頻繁に変わる。感染者数がピークに達した4月の張りつめた空気は遠い過去のもの。夏の日差しの下で飲み物を手にしてくつろぐ人たちが歩道にたむろする光景を見かねたクオモ州知事は、7月半ばに、市内の飲食店の前で立って飲酒することを禁止し、食事を伴わないアルコールのみの販売を禁止した。そして遵守しない飲食店を取り締り、アルコール販売の許可を次々と差し止めている。

非常時のリーダーシップは常時のコントロール・フリークというわけか、その強権ぶりが不評を買いがちな州知事だが、状況をみながら手綱を締めるやり方は理解できなくはない。人びとの警戒心が後退しているのは、ニューヨークの感染の「曲線が平らになった」のを知っているからであり、随時報告される情報に合わせて警戒心を解いた結果、再び感染が増えることもありうる。逃げ水を追いかける飲食店と政府との駆け引きは今後も続くはずだ。

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有名老舗書店「リッツオーリ(RIzzoli Book Store)」が面しているブロードウエイはすっかり車両進入禁止に。まさに24時間「ホコ天」状態ともいえる。

COVID-19で見直される、“路上“の魅力。
“まちはメディアだ”!


このパンデミックで変わったことのひとつは、人が外に出るようになったことだ。4カ月もの間アパートにひきこもり、いまだカフェにもオフィスにも座ることができないのだから、平日の午後に公園が人で溢れかえるのも不思議ではない。

とにかく部屋にいたくないというわけか、外出制限が徐々に解かれ始めた頃のニューヨークの歩道にはあちこち椅子が現れ、アパートから持ち出した椅子に座って話をする人たちを見かけた。ニューヨークのアパートが小さく窮屈だということもあるのだろう、朝目覚めるとすぐに外に出て、コーヒーショップの前の歩道の席に座り、夜が更けるまでバーの屋外の席でチェスやトランプをする人たちもいる。

外で過ごす時間が増えたことで、生活のプライベートな部分が少しずつ屋外のパブリックな場所に侵食する。外にこそ生活があるとでもいわんばかりに両者の境界線が曖昧になるとすれば、都市のありようは大きく変わることになる。「あらゆることが歩道で起きる」とはニューヨークでよくいわれることだが、それはもはや単なる喩えというわけにはいかない。

外の席に座ることの何よりの楽しみは、歩道を行き来する人たちを眺めること。都市の魅力は何よりもストリート・ライフにある。常に行き交う人たちのスニーカーやトートバッグを見ては、珍しいものならどこで手に入れたのかを聞く。

ストリートはトップダウンで媒介する雑誌とは根本的に異なる、本来の意味での社会的メディアなのだ。ほんのちょっとしたきっかけで火が着き、ストリートはウィルスのように伝染する(*注2)そしてウィルスそのものも拡散しうる。



*注2:スニーカーの「UPS/Uptowns」は、1970-80年代にヒップ・ホップと結びつき、ハーレムやブロンクスで絶大な人気を博していたことからその名がつけられている。ナイキの「Air Force 1」以前の話だ。特定のネイバーフッドのマーキングが、グローバルな商品名として浮遊するのはスニーカーに限ったことではない。
 


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