ダイナミックラボ
レポート
2017.07.11
カルチャー|CULTURE

ダイナミックラボ

廃校を改装! フル・オフグリッドによる「ファブ施設」の誕生!

2017年5月1日、鹿児島に、日本最大規模のファブラボ施設「ダイナミックラボ」がオープンした。コンセプトは、”なるべく地下資源を使わず本質的なものをつくる日本最大級のファブラボ”だという。

場所は、鹿児島県の薩摩半島中央部に位置する南さつま市金峰町。鹿児島空港からクルマで約60分、JR鹿児島中央駅からは車で約40分という自然豊かな環境にある、2013年に廃校になった築49年の旧大坂小学校がファブラボへと生まれ変わったのである。
 
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廃校となった旧大坂小学校
運営するのは、一般社団法人「その辺のもので生きる」。代表のテンダーさんは、自身で版元を立ち上げ、ソーラーオフグリッドの解説書『わがや電力~12歳からとりかかる太陽光発電の入門書』を上梓。同書はなんと2015年の発売から2017年現在までに約6,500部を売り上げているロングセラーとなっている。他にも、南日本新聞で連載を手がけたり、大学など教育機関での講師、アースデイ東京といったイベントへの登壇など、全国各地で精力的に活動を行っている。そんな“現代版ヒッピー”とでもいうようなのテンダーさんが新たに取り組んだのが、このファブ施設というわけだ。さっそく話を伺った。

「ファブラボという業態にしたのは、デジタルファブリケーション機器が活用次第でこれまでの消費中心の社会モデルを変える大きな可能性があると考えているからです」とテンダーさん。

本名は小崎悠太さん(34歳)。出身は神奈川県横浜市、都会育ちだが、23歳から約1年ほど青森県六ヶ所村で暮らしたことをきっかけに、お金と人生の関係、消費社会のシステムに疑問を抱くようになったという。
 
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エントランスとレーザーカットしたつけヒゲをつけるテンダーさん
「お金と社会システムに依存しない暮らしを追求したい」と、その後は旅と自営業をしながら、火起こしなどの先住民技術から電子回路制作やWebデザインなど幅広い技術を習得。ワークショップやイベント企画、さらには選挙参謀をこなしながら放浪し、6年前に鹿児島に辿り着き、移住したのだそうだ。

観光パンフレットのデザインを担当したことをきっかけに、3年半前に金峰町に定住。同時に、2006年よりテンダーさんが主宰しているDIY技術を研究・発信する「ヨホホ研究所」の新プロジェクトとして環境に負荷のない生活モデルの実現を目指す「てー庵」をスタート。低収入・低支出・低負荷をコンセプトに、年間の家賃約1万円の古民家で、水道・ガス・電気といったインフラは一切契約せず、生活に必要なものは基本的に自足するオフグリッドな生活を実践。その様子はKTS鹿児島テレビの特番「電気・ガス・水道料金ゼロ テンダーの思い」(九州民放祭優秀賞受賞、FNSドキュメンタリー大賞2015年ノミネート・優秀賞受賞)として放映されており、現在も妻と子どもの4人でその暮らしを続けているという。

「ある程度の知識と技術、そして機材や道具、それに材料があれば、ソーラーや雨水、トイレなどの下水浄化のしくみや暖房や調理器具など、自分でつくることができるんです。公共インフラという固定費がなくなると、そのための労働が必要なくなるわけです。さらに、下水をドライコンポスト化してわかったのは、化学汚染のないアウトフローは周りの生態系をも豊かにすることでした」(テンダーさん)。

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南さつま市金峰町大坂の地図
旧大阪小学校との出会いは、耐震強度不足を理由に2017年の始めに取り壊しされるというニュースを聞いた際、建物の状態を見て疑問を感じ、行政に情報開示請求をしたのが最初だそうだ。調べてみると、一般的な建物としては十分に使用可能であることがわかり、熱心にアプローチした結果、昨年12月より行政からの貸与が決定したという。2017年1月末にはクラウドファンディングで支援を募り、506人のサポーターから約580万円の支援金を得ることに成功し、オープンに至ったそうだ。

広大な土地を利用した「ダイナミックラボ」のメインとなる「ファブラボ」部分は、3Dプリンターやレーザーカッターなどを揃えたデジファブ部屋、パネルソーやスライド丸ノコなど20種類以上の木工工具を揃え、モバイルハウスも製作可能な木工部屋、染色や縫製など衣類の制作が可能な手芸部室(現在準備中)の3つの部屋で構成されている。間伐材をはじめ、基本的にはゴミも含む余剰物を利用する。

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木工室
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拡張したレーザーカッター
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窓際にある緑色の機械が、プラスチックを粉砕し、資源化する「廃プラ材粉砕機」だ。
同じフロアには図書室も配備。染織から金工まで日本の伝統技術のビジュアル書『日本の意匠』をはじめ、今後はデザイン書やものづくりのアイディアソースとなるような書籍を中心に揃えていくという。

また、別棟では長期滞在も可能なドミトリーとして現在改装中。手作りのかまどやピザ窯での薪を使った食事づくりのほか、校庭では農作物栽培や家畜の飼育なども計画中だという。

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パーマカルチャーガーデン
「目標は、世の中の循環を悪くすることのない合理的なシステムを指向する”ダイナミックラボっぽさ”を浸透させていくこと。施設の設備やワークショップなどのイベントもこれからどんどん充実させていくので、ぜひ、多くの人に足を運んでほしい」(テンダーさん)。

今後は、専門家を招いた3Dモデリングの代表的ソフトFUSION360の入門講座魚突き講座など、多様なワークショップの開催を予定している。
 
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ラボ計画図
営業時間は土日祝の10時~17時。料金は、ファブラボ内の1日利用が1,500円、ワークショップの利用は500円~となっている。また、遠方在住者には特典付きの年間サポート会員1,000円~/月枠も用意する予定。
*2017年7月現在。営業日時、価格ともに変動の可能性あり。

【取材・文:仲村あゆみ+「ACROSS」編集部/写真:小橋理沙】


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