場所は、原宿・表参道のファッションビル「エスキス」の2F。シャネルやイブサンローラン、グッチといったハイブランドが多数出店するなかにあって、コンクリート打ちっぱなしの床や壁、天井、白いペンキで塗りつぶされた開口部にヨーロッパのヴィンテージのソファやテーブル、什器などが無造作に並べられた無機質な空間はかなり異質である。
「きっかけは、一年ほど前、エスキスさんから望月が手がけるブランド『RICO(リコ)』への出店依頼のお話をいただいたことからです」と言うのは、同ショップを運営する(株)エスオーインクのプレス担当、瀬戸典子さん。
渋谷や原宿、青山、恵比寿など、毎月たくさんのショップがオープンするなか、恵比寿にある同名のショップの単なる2号店というのでは、3ヵ月もするとすぐ忘れられてしまう。だったら、ある意味固定された空間だからこそできるファッションへのアプローチにこだわって何か面白いことをしよう、と遊び仲間でもあったスタイリストたちに声をかけたところ、4人が集結。16カ月だけの期間限定の「多目的提案型コンセプトショップ」という業態になったのだという。
テーマを「創造途上空間」と設定し、売り場面積の半分はエキシビジョンとして貸出すほか、什器をはじめとするインテリアもすべて販売。取扱う商品は、ripvanwinkleやPUERTA DEL SOL、THE ROODS 、is-ness、RUMHOLE、AMAN、suzuki takayuki、KITSUNE、okiraku、YOSHIKO CREATION PARISなど、今どきのファッション誌を賑わせている人気ブランドとのコラボレーションアイテムに加え、4人によるオリジナル商品などすべて限定生産商品で1〜2ヵ月ごとにリリースしている。
オープンして約4ヵ月。エキシビジョンとしては、知り合いのデザイナーの展示会を開催したり、イラストレターのMisaoさんやアーティスト米津智之さんなどの展覧会、4人によるフリーマーケット、ショップの閉店後にキャバレー「アケミ」と題した音楽イベントを行うなど、4人とその仲間のクリエーターたちの自由な表現の場として話題を呼んでいる。
「かっこいいものと実際に売れるものは違うんですよね」(瀬戸さん)。
イベントを開催するたびに軽く300人以上の業界関係者が集まってしまう「集客力」を持つ4人だが、東京のストリートの若者たちにとっては近寄り難い存在であることは確かだ。
ファッションがアパレル(洋服)を超えた今、たとえば、アート作品のキャンバスとして用いられたTシャツのように、洋服で洋服じゃないものをつくり出していく行為が「トーキョー・セレブ」な人たちからはじまっているようだ。
取材・文:『ACROSS』編集部