myein(ミュエイン)

myein(ミュエイン)

レポート
2004.12.06
ファッション|FASHION

デザイナーの篠崎宏美さん(右)と
口田真史さん(左)
このところ、再びクリエイター・ブームである。『装苑』の05年1月号でも「新しい才能200人」と題した特集が組まれているように、新進気鋭の服飾・小物デザイナーが続々と登場しているのは周知の事実。そんな新人クリエーターが一同に集い、専門店や百貨店などのバイヤー向けの商談を行う“合同展示会”も急増。それぞれ、あっという間に規模が拡大している。

そんな中、あえてキャットウォークにこだわり、デビューコレクションを行ったブランドがある。04年春に文化服装学院を卒業したばかりである22歳の篠崎宏美さんと、口田真史さん(29)が手掛ける、新進レディースアパレルブランドmyein(ミュエイン)だ。

在学中より、動物の型紙からつくり出す独特のフォルムで話題となった「POTTO」で山本哲也氏のアシスタントを努めていた篠崎さんは、03年友人と共にmyeinの活動を開始。卒業と同時に独立し、初コレクションを行うことになった。

「ある日、次回のショーでデビューしてみない?と、山本さんに声をかけて頂いたのがきっかけです。いずれは独立したいと思っていたので、せっかくのチャンスだと思ってチャレンジすることにしました」と、篠崎さん。

デビューコレクションは、11月11日、紅葉深まる代々木公園で行われた。公園内で「POTTO」のコレクションを行った後、野外ステージに場所を移して同ブランドの発表という合同でのショーである。

デビューを飾るテーマは「UTOPIA(理想郷・桃源郷)」。篠崎さん自身が作った詩から、“たまご”、“城”、“袋”といったイメージソースを洋服に落とし込んだものだった。

「篠崎が甘めなら僕は辛め、叙情的と現実的というように、2人は真逆の存在といっていいかもしれません。そんな2人の共同作業ですから、まずコンセプトの摺り合わせが最もたいへんな作業でしたね。製作過程でも、篠崎が想像の枠を膨らませ、僕が編集・ディレクションを行うという役割が自然と生まれていました」(口田さん)。

ショーでは、随所に袋状の丸みを持たせたものや、ギャザーをふんだんに使用してボリュームを出したものなど、少女性を感じさせるデザインが目立った。とはいえ、決してガーリーではなく、中世的でクラシカルな要素や、プリントのタンクトップやジャージ素材のカジュアルなアイテムなど、時代の気分が幅広く盛り込まれていた。

また、印象的だったのがショーで使われていた音楽。今や音楽シーンにおいて括弧たる地位を築きつつある、エレクトロニカといわれる電子音楽かと思いきや、実は80年代に一世を風靡したファミリーコンピューターのゲームソフト「迷宮組曲」の音楽にノイズを加えたものだという。80年代のファッションアイテムが次々と再燃している今、音楽においても当時の音が斬新に聞こえるのが興味深い。

「楽しいけどどこか危機感を感じる音で、最終的には崩壊する運命にあるユートピアのイメージにぴったりきたんです」(篠崎さん)。

なるほど、チープで無機質に繰り広げられる陽気なゲーム音楽は、どこかもの悲しさを感じさせる。ユートピア同様ゲームの世界も虚空のもの、という意味でも今回のテーマを引き立てるものとなっていた。

ブランド名のmyeinとはミステリーの語源となった言葉で、目と口を閉じるという意味を持つギリシャ語。表層的ではなくその内側に潜むものを、真摯な気持ちを持って表現したい、という意味が込められている。

「全く違う2人のバランスを取るのが楽しい」。ブランドを立ち上げ、コレクションを発表した、という気負いを感じさせないふたりに、新世代の台頭を感じさせられた。

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