第8回不定点観測
インタビュー@The Madam Show 2012
レポート
2012.12.21
ファッション|FASHION

第8回不定点観測
インタビュー@The Madam Show 2012

日本初!マダム向けの大型ファッションイベント

2005年にスタートしたTGC(東京ガールズコレクション)以降、Girls award(ガールズアワード)原宿スタイルコレクションなど、リアルクローズ型のファッションショー/販売イベントが定着して久しい。年々動員数と売上高を伸ばして新たなマーケットを創出し、現在では名古屋、沖縄などの地方都市や、パリ、北京など海外でも開催されている。

そんななか、40代〜50代のミドルエイジの女性をターゲットにしたファッションショー/販売イベント「The Madam Show」が開催された。主催はThe Madam Show実行委員会(企画/制作:ホリプロ)。実行委員長はホリプロ取締役でファウンダーの堀威夫さんが務めた。

12年12月1日(土)渋谷ヒカリエ9Fのヒカリエホールには、40〜60代の女性約1,600人が来場した。

マダムに人気の14ブランドのファッションショーを開催し、終了後に隣のホールでショーに登場したアイテムが購入できる販売会で構成。一部では、雑誌「25ans」による「エレ女的プリンセスファッションレクチャー」、二部では、男性向けのファッションショー「JIJIコレクション」といった特別ステージが繰り広げられた。NTT docomoTOYOTAアデランスのFontaine、日本生命などがスポンサーとして協賛した。
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theory luxeやAMACAなど14ブランドが最新コレクションを披露。会場内で販売され、ECサイトMAGASEEKでも同時発売した。
会場はフランスの街並をイメージした背景に、パリの石畳をイメージしたランウェイを配置。左右にひな壇状の座席が設けられ、ゆったりと座ったままショーを観覧できるよう工夫されていた。アンバサダーの萬田久子さんが、総合プロデューサーのテリー伊藤さんとゲストのパンツェッタ・ジローラモさんのエスコートで登場。テリー伊藤さんが「このイベントはカワイイとは違う、ハイセンスでゴージャスなマダムに向けた日本初のファッションイベント。仕事に恋に子育て、自分の好きな時間に好きなファッションを楽しんでほしい」と開会宣言をすると、観客から大きな拍手が沸き起こった。

ファッションショーは「wb」「DoCLASSE」「SPORTIFF」「EVEX byKRIZIA」「theory luxe」など14ブランドが、ダウンコートやニット、ブーツなど今シーズンの最新の着こなしを披露。ショーの合間にはタレントの西川史子さん、武田修宏さんがゲストモデルとしてランウェイに登場。また、Fontaine×fitfitのステージでは、ボディメイクトレーナーの樫木裕実さんがツィッギー風の衣装とウィッグで登場し、80年代のディスコミュージックに合わせて踊り出すと、会場は一気にヒートアップ。手拍子が大きく鳴り響き、リズムに合わせて身体を揺らす観客も見られ、この日一番の盛り上がりを見せた。

来場者は40〜50代の女性が中心で、圧倒的に多かったのは友人同士、次いで夫婦、母と娘の親子連れ。16歳以下は入場制限を行っていたこともあり、60代の母親と30代の娘といった年齢層の親子連れも少なくなかった。ブランドから聞いてこのイベントを知ったという声が多数で、ショーに登場したブランドの顧客や抽選に当たったという招待客もいた。

来場者のファッションは、今期のトレンドでもある黒を基調としたシックなコーディネートが主流。シャネルスーツ風のツイードのセットアップ、ニットワンピース+ロングブーツといったスタイルが多かった。華やかな場ということもあってか、ラメが入ったジャケットや光沢のあるロングダウンジャケット、襟元や袖口にビシューが編み込まれたニットなど、輝きのある素材が人気。AMACAtheory luxeL’ EQUIPE YOSHIE INABA等、ショーに登場したブランドの着用率が高く、全身をひとつのブランドでコーディネートする熱烈なファンも少なくなかった。大ぶりのネックレスやリングの重ね付けなど、アクセサリーを多用してドレスアップ感を演出しており、エルメス、シャネル、セリーヌといったハイブランドのバッグも多かった。

インタビューをしてみると、ふだんのショッピングはショップチャンネルやQVC等のテレビ通販で洋服やコスメを購入するという人が多数。「体型が気になるので、洋服はテレビで着用した時のシルエットを確認して購入する」という人も多く、「今日のようなファッションショーは、実際に着用した時のシルエットがよく分かるので購入意欲が湧く」という意見が多く聞かれた。

The Madam Showと従来のガールズコレクションなどの大きな違いは、購入方法である。若者に比べて携帯端末の操作に不慣れなミドルエイジ世代に配慮して、実物を手に取って試着できる販売ゾーンを設けた。14ブランドのうち5ブランドはECサイトMAGASEEK(マガシーク)内に特設サイトを開設し、販売会とネットの両方で購入できる仕組みを設けた。販売会は「やはり試着しないとイメージが湧かないから実際に手に取れるのは嬉しい」「手持ちの服や靴とのバランスを確認できてよかった」と大旨好評。しかし、ショー終了後に800人が一斉に販売会場に流れ込んだため、個々のブースがすぐに混雑してしまい、商品を手に取れずにやむなく会場を後にする人も。今後は、ブースの面積確保やショッピングタイムの分散化などが課題となるだろう。

また、行きつけの店舗との結びつきが強い顧客層も多く、「店舗で買える商品をイベントでわざわざ購入したくない」という声も聞かれ、イベントでしか購入できない限定品の投入や次シーズンの先行販売といった、“スペシャル感”を感じられる販売戦略が必要かもしれない。売り上げは非公開だが、主催者は初めての試みに手応えを感じており、同イベントは来年、第2回目の開催を予定しているそうだ。
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総合プロデューサーのテリー伊藤さんと、アンバサダーを務めた女優の萬田久子さん、エスコート役のジローラモ・パンツェッタさん。
2007年あたりから、バブル期に青春を過ごし、美に貪欲で消費志向が強い「ハナコ世代」の女性を対象にした商品やプロモーションが相次いで登場。子育てが一段落し消費の主役に舞い戻ったこの世代をターゲットに、2008年『HERS』、2009年『美STORY』(現在は『美ST』に改名)などファッション誌も相次いで創刊され、実際に都心部では、20代と変わらないトレンドのファッションを着こなす若々しい40代・50代の“美魔女”が急増した。さらに、2013年4月にはシングルアラフォー女性をターゲットにした『DRESS』が創刊される。

現在、都心部では一段落した感がある“美魔女”ブームだが、地方のマス層へと広がっていくのはこれから。さらに美の基準が、単純な見た目の美しさから、健康までをも含む「アクティブエイジング」へと変わりつつある今、ファッションやコスメだけでなく医療や食、健康食品、運動、メンタルヘルスなどそのジャンルは多岐に渡っており、全国規模で考えると、まだまだポテンシャルを持ったマーケットと言えるだろう。
メインターゲットは40〜60代。 会場となったヒカリエホールには 約1,600人が来場した。
萬田さんとテリーさんによる トークステージ。
ショー終了後は、隣の即売会場 へ一斉に駆け込み気に入った服 を購入する観客らの姿が多数 みられた。
アデランスの女性向けウィッグ ブランド「フォンテーヌ」の ブースでは実際に試着・購入する 事ができる
第2部は「JIJIコレSTAGE」と 題し、マダムをエスコートする 男性をイメージしたメンズコレク ション。
スポーツキャスターの大林素子さん、元競泳選手の宮下純一さんもランウェイに登場。
取材・文/阿部博子(フリーライター)
撮影/伊藤彰浩


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