chim↑pom展
2012.11.01
その他|OTHERS

chim↑pom展

アートの可能性を拡張する大型個展

パルコPART1の前に現れた高さ6メートルの巨大なゴミ袋は「Gold Experience」という作品
パルコのネオンサインを外して展示に使用するという仕掛けのインパクトは実に大きかった
アパレルショップを再現した空間インスタレーション作品「S-H-O-P-P-I-N-G」
商業ビルの中で消費文化への批評性を持つ作品が展示される、という面白さがある
「C」と「P」の2文字が大音量で流れる曲に合わせて点滅する作品「PAVILION」
インドネシアのゴミ山にヘリで上空からポリ袋を投下するプロジェクト「Saya mau pergi ke TPA」などの映像作品
渋谷公園通り、パルコPART1の前に現れた高さ6メートルの巨大なゴミ袋。パルコの外壁の「PARCO」のネオンサインから突如消えた「C」と「P」の2文字。これはパルコミュージアムで開催された、いま最もラディカルな活動を繰り広げるアーティスト集団・Chim↑Pom(チンポム) の大型個展『Chim↑Pom展』の作品の一つである。 パルコ全館を巻き込んだ展示のインパクトはニュースとして広がり、会期23日間トータルで1万1,000人を越える観客を集めた。

Chim↑Pomは卯城竜太・エリイ・林靖高・岡田将孝・水野俊紀・稲岡求の6名からなるアーティスト集団で、2005年の結成以来、社会に向けた強いメッセージを持つ作品を発表してきた。2011年4月には、渋谷駅内に設置されている岡本太郎さんの壁画『明日への神話』に福島第一原子力発電所事故の絵をゲリラ的に付け足したことで話題を集めたことは強く記憶されている。

今回の個展で、彼らがテーマとしたのは「生産・消費・廃棄」。前述した巨大ゴミ袋の作品「Gold Experience」をはじめ、ポップな消費文化を象徴する渋谷という街、さらにファッションビルのパルコという装置を最大限に生かした作品を作り出した。

展覧会場を入って最初に現れるのは、アパレルショップを再現した空間インスタレーション「S-H-O-P-P-I-N-G」。洋服も置かれた什器やレジカウンター、試着室などを配したショップそのままの空間がペインティングされている。壁面に描かれた「SMILE¥0」などの文字、試着室の鏡を開けて隣の展示室に移る順路など、あちこちに彼ららしい仕掛けが施されている。

今回の展覧会で最も反響が大きかった作品は、壁面から撤去したネオンサインを使った作品「PAVILION」だろう。高さ3m×横2mの「C」と「P」の2文字はChim↑Pomの頭文字を示し、それが大音量で流れる曲に合わせて点滅する。『We Will Rock You』(クイーン)『カルミナ・ブラーナ』(カール・オルフ)というスペクタクル感のある曲や、閉店時間を思い出させる『蛍の光』といった楽曲が、ネオンサインを間近で見るというスケール感と相まって面白い効果をあげている。

このネオンサインの実物を撤去してそのまま作品にしたことは、それを受け入れたパルコの姿勢も含めて大きなインパクトを伴って受け止められたようだ。90年代に中村正人さんがマクドナルドやコンビニエンスストアのネオンサインを用いた一連の現代美術作品を発表しているが、それを更にポップに、かつ事件性をもって展開したような新しさがある。
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展覧会会期中、ネオンサインから「C」と「P」の文字が消えたパルコのファサード
会場を訪れる観客は20〜30代の男女が中心。アートファン以外の関心を集めることに成功したと言えそう
作品の制作過程で出たごみを使ったインスタレーション作品
本展作品のアイデアスケッチ。これなら“アート言語”を持たない観客にも展示の意図が伝わりやすいはずだ。
「パルコの中身を全て出す」など実現困難なものも含めてさまざまなプランがあったという
週末には入場待ちの列が出来る盛況となった
続いて渋谷パルコで開催された「シブカル祭。」にも参加したchim↑pom。メンバーのエリイさんの大型バナーが掲出された。ラディカルな活動とポップな露出の振り幅の広さが彼らの魅力である
渋谷センター街のごみ置き場に置かれたごみ袋に放射能標識をステンシルで描き、それをゴミ集積車が収集する様子を収めたビデオ作品「東京BOMBerman」、インドネシアのゴミ山にヘリで上空からポリ袋を投下するプロジェクト 「Saya mau pergi ke TPA」などの映像作品の上映や、作品の制作過程で出たごみを使ったインスタレーションなど、「廃棄」をテーマとした作品群の展示が続く。こうした社会性の高いテーマを扱いながら、偽善的な雰囲気が漂ってこないのも、chim↑pomの魅力である。

渋谷の街でネズミを捕まえてピカチュウを模した剥製にした「SUPER RAT」、渋谷の空にカラスを大量発生させるパフォーマンス「BLACK OF DEATH」など、渋谷という街をモチーフにした作品を発表してきた。今回の作品もそれに連なるものだといえるが、今回はさらに渋谷パルコという商業施設と共振することで、より広い層に届く力を持ったとと言えるだろう。

ラストに展示されていたのは、本展作品のアイデアスケッチ。現代美術の展覧会では作品のコンセプトやアーティストのステートメントなどを文字で読ませることが多いが、このスケッチによる解説なら“アート言語”を持たない観客にも一発で意図が伝わる。この分かりやすさも、商業施設の中での開催がもたらした成果の一つだ。

社会のリアルに介入した強いメッセージを持つChim↑Pomへの注目は、2011年の震災後に国内外で高まっている。作品発表以外にも多彩な表現活動を展開している彼らは、美術手帖の「Chim↑Pomプレゼンツ REAL TIMES」特集/2012年)、ワタリウム美術館「ひっくりかえる展」のキュレーション(2012年)、さらに他ジャンルのクリエイターとのトークイベントなど活動の幅を拡げてきた。

Chim↑Pomが2012年に発表の場としたパルコやワタリウムは、80年代以降のアートのポップ化に大きな役割を果たした場所であり、そこで展示を行ったことは改めて意義深い。さらに今回、Chim↑Pomが美術館でもギャラリーでもなく、商業施設を舞台にして「アートはここまでできる」ことを知らしめたことは、今後大きな意味を持ってくるはずだ。この展覧会で彼らがパルコに向けて提案した展示アイデアには、実現していないものも多くあったという。今後どのようなことが実現されていくのか、楽しみなところだ。

【取材・文:本橋康治(ACROSSコントリビューティングエディター/フリーライター)+『ACROSS』編集部】

Chim↑Pom展

Chim↑Pom展
会場:パルコミュージアム (渋谷パルコ・パート1・3F)
期間:2012年9月22日(土)〜10月14日(日)
主催:パルコ


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