もしもしカワイイ原宿
レポート
2012.07.23
カルチャー|CULTURE

もしもしカワイイ原宿

東京の“カワイイをパッケージしてプレゼンする”土産物店

同店オーナーでフォトグラファーの米原康正さん。
マグカップやチョコレート、クッキー、Tシャツ、お茶やキーホルダーなどお土産の定番アイテムが揃う。
人気商品のmogu mogu Tシャツ¥2,940
オリジナルキャラクターのもしもし君とかわいいちゃん各1,890円。スチャダラパーのアルバム「スチャダラ外伝」のジャケットなどを手がけるイラストレーターのシャシャミンさんによるもの。
寿司ピアス:玉子1,200円、鉄火巻き 1,000円、エビ1,300円、サーモン1,200円
写真奥 ロープトートバッグ¥3,990
写真手前:もしもしくん、かわいいちゃんサブバッグ ¥2,520

タレントグッズ・キャラクターグッズのショップや、アパレル、雑貨店などの小規模なショップが軒を連ね、若者や外国人観光客で賑わう、原宿・竹下通り。その中ほどのビル2階に、 “カワイイをパッケージしてプレゼンする”土産物店「もしもしカワイイ原宿」がある。


パステルカラーで統一された30平米ほどの店内には、顔ハメパネルやガチャポンが置かれ、寿司モチーフのアクセサリーやTシャツ、お茶やチョコレートなど定番の土産物が並ぶ。そのほとんどが「カワイイ」と「原宿」をテーマに作られたオリジナル商品だ。


ディレクターを務めるのは、フォトグラファーの米原康正さん。「海外や地方からの観光客はもちろん、日常的に遊びに来ている人々にも向けて、日本独自のカワイイ文化を発信していきたい」と語る。


90年代から、チェキなどのインスタントカメラを使ってリアルな日本の女の子の姿を撮り続けてきた米原さん。現在では中国のSNS「新浪微博(シンランウェイボー)」で50万人以上のフォロワーを有しており、フォトシューティングとDJをセットにしたイベントで、中国各都市を飛び回っており、中華圏をメインに絶大な人気を博している。米原さんはそういった活動を通して、近年、日本の文化に対する危機感を抱くようになったと語る。


「70年代にはセントラルアパート、80年代の竹の子族やホコ天、90年代の裏原宿。原宿にはいつも新しいカルチャーが生まれ、独自に育まれてきました。小さい店がたくさんあって、それぞれが面白いと思うことを発信してお客さんが集まり、育っていく場所だったんですよ。しかし現在では、外資系のショップや大資本企業による大・中規模のファッションビルが林立し、世界の大都市や日本の地方都市と変わらない街並みとなっている。メディアも店もすでにウケてるものに乗っかって儲けることばかりで、新しく発信されるものを扱わず、保守的になっている。文化が育たなくなっているのは危険な状況です」(米原さん)。


「原宿で買い物するお客さんの3割近くが中国を中心としたアジアからの観光客。彼らは原宿に対してかつての裏原宿やギャルのような、日本独自のカルチャーを期待していますが、実際に来てみると、海外の都市と変わらない街並にがっかりしてしまう。日本に対して求められているのは、美容、安全、手先の器用さ、セレクトして編集する能力など。打ち出すべきものってまだいろいろあると思うんです」(米原さん)。


それが、“カワイイ”だった。

「日本人は根本的に小さくてコロコロしているから、欧米人の真似をしようとしてもなりきれない。カワイイは日本特有の魅力で西洋には真似できない。なのに今の日本は、外国で評価された加工された「かわいい」しか評価しなかったりする。無理して欧米人のまねをするのでなく、西洋変換されていないカワイイを素直に認めて、その得意分野で勝負したほうがいいんじゃないかと思います。カワイイを通して日本の文化を見直すことができると思うんです」(米原さん)。

 

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「観光客はもちろん、日常的に来ている人々にも向けてカワイイ文化を発信していきたい」(米原さん)。今後はモノを売るだけではなく、原宿と関わりがある人たちを集めたイベントも企画している。

 

青文字系モデルのファッションイベントHARAJUKU KAWAII!!!とのコラボ商品も展開。人気読者モデルの瀬戸あゆみフォトTシャツ。
セレクトで扱うNEON OPERA TOKYOは、東京発のランジェリーブランド。SF、マンガ、アニメ、恋愛小説など、東京のもつ幻想をデザインに散りばめている。
フィギュアイラストレーター、デハラユキノリさんによる明太子のキャラクター「めんた君」のガチャガチャ。各¥200。
場所は竹下通りの中ほど。ピンクとブルーのポップな階段が目印。

同店は米原さんが代表を務める(有)オフィス・サマサマと、ハワイでキャラクターグッズのショップを展開する(株)メリーランドによる共同経営。かねてから知り合いだった代表の仁科光裕さんと久しぶりに再開し、日本独自のカルチャーを発信したいと意気投合したことから、2012年3月、同店をオープンするに至った。


商品はオリジナルが9割でセレクトが1割。オリジナルキャラクターのデザインは、イラストレーターのシャシャミンさん。商品企画は米原さんと仁科さんが手がけており、米原さんがオフィシャルカメラマンを務める青文字系モデルのファッションイベント「HARAJUKU KAWAII!!!」とのコラボTシャツも展開している。セレクトの「NEON OPERA TOKYO(ネオンオペラトウキョウ)」はSF、マンガ、アニメ、恋愛小説などをテーマにしたユニークなランジェリーブランド。店長は台湾出身のクイニーさんで、中華圏からの観光客にアピールするためTwitterfacebook、新浪微博で日本語だけでなく北京語でも情報を発信している。


日本独自のカワイイを切り口に原宿でしか買えないもの、原宿でしか体験できないことに特化した同店。米原さんの問題意識が背景にあるとはいえ、竹下通りという立地や、誰もがカワイイと思えるキャラクター、手頃な値段や分かりやすい商品構成など、かなりポップな打ち出しになっている点が特徴だ。今後は「もしもしカワイイ福岡」や「もしもしカワイイ台北」など、そこにしかないものを扱うというパッケージでのフランチャイズ展開を考えているという。


さらに、原宿カワイイのモデル撮影会をはじめ、某アイドルグループやニコニコ動画関連などの人物を起用したイベントを企画しており、モノを売るだけではなく、原宿と関わりがある人たちや、東京や日本をテーマに活動する人たちが集まって発信していく場にしていく構想があるそうだ。


2006年以降、原宿周辺はTOPSHOPやH&M、Forever21や「東急プラザ表参道原宿」のアメリカンイーグルアウトフィッターズなど、外資系SPAブランドの基幹店の集積地となっている。しかし実はこのエリアには、幣紙でも紹介したミキリハッシンRADD LOUNGE(ラドラウンジ)などの東京モード系ショップや、6%dokidooki、NADIA(ナディア)、AVANTGARDE(アバンギャルド)といった、カワイイ系ショップが点在しており、アラウンド90年生まれの若者を中心に絶大な支持を得ているのだ。


だれもが「カワイイ」というキャッチーな土産物店という業態を通して、軽妙に“日本の面白さをプレゼン”するという手法は、日本独自のカワイイを追求してきた米原さんならでは。今後どのような広がりを見せていくのか、注目したい。


取材・文:小林 沙友里(フリーライター)+ACROSS編集部

 

もしもしカワイイ原宿

東京都渋谷区神宮前1-16-11 五三九ビル2F


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