12XU(ワンツーエックスユー)
レポート
2011.09.15
ファッション|FASHION

12XU(ワンツーエックスユー)

人気セレクトショップDELTAのメンズショップは「ニュースタンダード」アイテムを集積

大手セレクトショップでは取り扱いが少ない、ミドルレンジの価格帯のアイテムを集積。
シンプルでベーシックでありながら、
どこかトレンド感があるアイテムが揃う。
70年代にサーファー達から火がついたZig-Zag shoes。現在ではスケーターを中心に人気。
内装は、元IDEEの若松義秀氏率いる「SLOPE(スロープ)」に一任。
木と鉄を基調とした店内はまるでNYの
セレクトショップのような雰囲気。
音楽やスケートなどストリートカルチャー感じるテイストは、かつてバンドをやっていたという有記さんならでは。
代々木上原駅から徒歩1分。周辺に住むクリエイターやミュージシャンも多く訪れるそうだ。
 2004年のオープン以来、フェミニンでエッジのきいたセレクトで根強いファンを持つ、代々木上原の隠れ家的セレクトショップ「DELTA(デルタ)」。その2号店となるメンズセレクトショップ「12XU(ワンツーエックスユー)」が、55日にオープンした。場所は代々木上原駅南口からすぐ、「DELTA」からも徒歩3分程の距離だ。

  

 同店のオーナーは、DELTA(デルタ)と同じく大倉有記さんと大倉綾さん夫妻。主に有記さんがディレクションを行い、バイイングから販売までを担当する。


 「DELTAはレディスのみの展開ですが、以前から男性のお客さまやカップルでの来店も多く、メンズを取り扱ってほしいという要望が増えてきたため、23年から構想を練っていたんです。ちょうどその頃、知り合いの不動産屋からこの物件が空いたと聞き内見した所、デジャヴかと思うほどイメージにぴったりだったことからすぐに出店を決めました」(有記さん)

 

 以前は和菓子屋だったという物件は約10坪。白壁に木・鉄を基調とした内装は、元IDEE(イデー)の若松義秀氏率いる「SLOPE(スロープ)」に一任した。彼らが手がけた「rag & bone the Omotesando Store(ラグ & ボーン ザ 表参道ストア)」を見て、内装と彼らの世界観が気に入ったことから、直接オファーしたという。

 「店を作る際にイメージしたのは、NYの「Freemans Sporting Club(フリーマンズ・スポーティング・クラブ)」など、個人的に好きで通っている海外のセレクトショップです。また、00年ごろからニューヨークを中心に広がったヒップスタームーブメントや、またその流れと並行するインディ・ロックのブームなど世界的なカルチャーの潮流を意識したお店を、と考えていました」と有記さん。有記さんは、もともとグラフィックデザイナーで、バンド活動も行っており、ツアーのために何度もアメリカを訪れていた経験を持つ。自身が影響を受けた音楽やカルチャーの視点を通して、ファッションを提案していきたいという。

 商品は全てメンズでインポートが中心。セレクトの基準は「長く使える定番アイテム」でトレンドに左右されず着られるベーシックなアイテムでありつつ、実際に着たときにバランスやシルエットが良いものにこだわっている。

 「日本の男性はナチュラルでかわいいものを好む傾向にありますが、もう少しラギットなものや、シンプルだけどロックっぽい感覚も提案していきたいですね」(綾さん)

 取り扱いブランドは、スウェーデンのVELOUR (ベロア)HOPE(ホープ)CHEAP MONDY(チープマンディ)、フランスのAPRIL 77(エイプリルセブンティセブン)、アメリカのBLOOD IS THE NEW BLACK(ブラッド・イズ・ザ・ニュー・ブラック)、ロンドンのNEW LOVE CLUB(ニュー・ラブ・クラブ)など。また、70年代にカリフォルニアのワーキングクラスが愛用し、昨今ではスケーターに人気の ZIG-ZAG SHOES(ジグザグシューズ)をはじめ、VANS(ヴァンズ)DR.MARTIN(ドクター・マーチン)などの靴のほか、ANTHONY PETO(アンソニーぺト)のハット、FILSON(フィルソン)のバッグ、BILY KIRK(ビリーカーク)のレザー類など、小物も充実している。 

 同店ではインポートブランドの定番アイテムを集積しており、Tシャツが3,0006,000円、シャツやパンツで1万円前後とミドルレンジの価格帯のアイテムを揃えているのが特徴だ。

 

 「国内のセレクトショップでは、シャツやカットソーなどミドルの価格帯のものはPB(プライベートブランド)展開するのが主流になっていて、インポートの扱いは激減しています。日本人の体型に合うようにアレンジされたドメスティックブランドか、インポートでは高額なものしかない。自分はそこが不満だったので、シンプルでベーシックな日常にちょうど良いインポートアイテムを集めた店をやりたかったんです」(有記さん)

 

 客層は3040代が中心。代々木上原の近隣に住む人が中心で、クリエイターやミュージシャンなど、音楽やカルチャーに関心が高い人も多いというという。

 

 特に最近は、大手セレクトショップが売れ筋のアイテムばかりを集めたMDになっていて、20代の若い子達が、それが全てだと思ってしまう事が心配です。90年代前半、自分が10代〜20代の頃は渋谷や原宿、下北など個人オーナーのスタイルのあるショップが各地にあり、ドキドキしながら店に行った記憶がありますが、若い子達にそんなファッションの楽しさを伝えられるような、長く続く骨太なショップを目指したいですね」(有記さん)
 

 ちなみに、店名はUKパンク・ニューウェーブバンド「WIRE」の曲名から。「利益重視型のファッション業界に対する"fxxk U"という挑戦の意味も込めて(笑)」いるという。

 

 ファストファッション上陸後、ファッションマーケットはシステム化・均質化が進み、通りいっぺんの表面的なレンドのアイテムばかりが店頭に並ぶようになって久しい。リアルプライスの「上質なフツー=ニュースタンダード」なアイテムを集積し、カルチャーやライフスタイルまで多角的な視点を持ちながら提案する同店は、そういった状況につまらなさ、物足りなさを感じている消費者のマインドにマッチするショップと言えそうだ。

 

 今後は、元Dish(ディッシュ)のスタッフとコーヒースタンド「12XU COFFEE」をショップインショップとしてスタートする予定で、さらに友人や知人とコラボレーションしながら、深夜のライブイベントなども予定しているという。

[取材・文:渡辺マキコ+ACROSS編集部]


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