第362回定点観測・速報
レポート
2011.02.15
ファッション|FASHION

第362回定点観測・速報

女性ベージュ系/キャメル系アウター、うちショート丈

■カウントアイテム:女性ベージュ系/キャメル系アウター、うち、ショート丈

トレンドは「脱・黒」。
 

「クラシック&エレガント」というグローバルなトレンドの東京版。


 2月は通常通り第1週目の実施となった第362回定点観測。前日までのプレサーベイを通して感じたのは、少しだけトレンドが動いたのでは?!ということである。その代表的なアイテムやスタイルが、今回の「ズームアップアイテム」の2点、「ロングスカート」「フード出しスタイル」だが、ここではまず、今秋冬のアウターのメイン・トレンドが、「ベージュ系/キャメル系のショート丈のアウター」である点に注目した。

 

 重衣料のトレンドとしては、00年代以降順に、Pジャケット、ダッフルコート、トレンチ、ミリタリーコート、厚手のロングカーディガン、レザーブルゾン(茶)、ダウンコート(ドレス調)、ノーカラーコート、ラップ式(ガウン調)のコート、ショート丈ダウン(ボレロ調)ポンチョ、シャカシャカアウター、レザーブルゾン(黒)、ショート丈ダッフルと、ほんとうにいろいろなアウターが入れ替わり立ち代わりずっと台頭。それぞれが、より着やすく買いやすい商品として「リアルクローズ化」していくなか、近年は、ボトムスのトレンドに併せて丈がショート丈になること、色展開することがひとつのトレンドとなっている。

 

 たとえば、1012に取り上げたショート丈ダッフル、それ以前もちらほら見かけてはいたものの、紺や黒ではなく、今シーズンは茶系、ベージュ/キャメル系が主流になっている。思えば、2008秋冬〜09年春夏は「ロック」をキーワードとした黒のトレンドがギャル系やプレシャス世代(40代以上のマダム層)を中心に席巻していたのは記憶に新しい。しかしその後、感度の高い90年代生まれの若者たちの台頭とともに、クレージーカラーの80sファッションと、「グリモワール」系に代表される古着〜アンティーク〜ドーリーなミルク〜ベージュ系ファッションが台頭。2010年になりその流れは、オシャレ感度のいい「女子」たちから徐々に「脱・黒」が進行しており、グレー系ではなく、茶系、しかも彩度の浅いベージュ系〜ラテ色が今秋になりかなり増えているのである。

 

 ルーツは、2011春夏のトレンドカラーだった「ヌーディカラー」の延長にあるものだろう。ちなみに、30年間以上に渡ってストリートファッションの観察をしている立場からすると、00年代のファッショントレンドは(残念ながら)比較的トップダウンのものが多い。

 

 もっとも量的に多かったのは、「Cancam」〜「AneCan」、「Zipper」系に多いウール素材のコート。前者はダブルブレスト風になっていたり、袖口やバックスとラップがリボンになっていたり、襟元にファーがあしらわれていて上品&プリティな着こなしで、後者はデフォルメして着こなしてドーリー、ポップ&キッチュなニュアンスを演出していた。

 

 一方、ストリート系には、ツイードやウールのダブルブレスト、ツイール/ホームスパンの表面がモケモケした(パタゴニアの代表的なもののようなボア素材)ブルゾンなどで少しラフなおじさんっぽい/ダサイ/バナル/カジュアルな雰囲気に着こなしに。20代後半以上のエレガント系には、ウールのコートに黒のボトムスというシックなコーディネートが目立った。

 

 実は、2003年ごろにもベージュ系〜ピンク系がトレンドカラーになったが、当時はくすんだ色味が主流だった。今シーズンのベージュ系/キャメル系は、もう少し彩度が浅く、透明感があり、春夏に向け、もっと白っぽくなるのでは、という印象を受けた。そういえば、ヘアカラーも昨秋に比べるとやや明るくなり、裾がカールした柔らかいスタイルが増えている。ベージュ系/キャメル系に裾カールヘアなど、グローバルなトレンドが「クラシック&エレガント」だとすると、東京のストリートでは「昔からいるかわいい女の子」というニュアンスにスライドしている点も興味深い。



◎女性ベージュ系/キャメル系アウター(うちショート丈)着用率
・渋谷: 18.9%(7.3%) n=1,834人
・原宿: 14.4%(5.6%) n=3,933人
・新宿: 10.2%(4.7%) n=3,221人


今回は珍しく渋谷地点がもっとも着用率が高い結果となった。何かとオシャレ感度が下がっているとネガティブなイメージで語られることの多い渋谷だが、原宿や新宿と比較すると(今月は)ややキレイめ〜おしゃれな人の来街が目立った。また、各地点とも先月と比較すると全体的な来街者数も多かった(先月はセンター試験の日と重なったため激減した)。


★下記のリンク先の「Count Item」「ZoomUp Item1」「ZoomU2のタブをそれぞれクリックいただくと、別のページをご覧いただけます。


渋谷地点のOverview

原宿地点のOverview

新宿地点のOverview



■ズームアップ・アイテム(1)ロング丈スカート

ようやく今春夏はトレンドに変化。

まずはシルエットから

 

 久しぶりに70sファッションがビッグトレンドになりそうな今春、その代表的なアイテムとして昨夏よりちらほら浮上していたロング丈スカートがこの1カ月で急増していたので今回「ズームアップトレンド」とした。

 

 もっとも目立ったのは、スウェット素材のストンとしたワンピースの上にアウターを重ねていたスポーティでカジュアルな着こなし。胸元にはレタードがデザインされているなど、今春浮上しそうなカレッジファッションの要素も入っており、最近購入したのでは、という印象を受けた。

 

 次いで多かったのは、フォークロア調の大きめな花柄ロングスカート。そして、数はまだ少なかったものの、薄手のコットンやチュチュのように何枚かのガーゼを重ねたロングスカートで、下に履いたショートパンツが少し透けて見える着こなしがエッジーな子の間で浮上していた。

 

 言うまでもなく、ボトムスのメインのトレンドは(あいかわらず)ミニ丈である。しかし、あまりにもミニ丈着用者が増えてしまった今、他の人と違う格好がしたい、という感度の高い層から、今流行っているアイテムやスタイルに対峙するロング丈スカートが支持されはじめているのである。この流れは、今春から夏、来年の秋冬向けて徐々に一般化していくと思われる。

 

 また、柄のロング丈スカートのニュアンスは、パンツにも波及しており、柄のシガレットパンツはギャル系に、ワイドパンツはモード系にと春に向けて増えそうだ。



ロング丈スカート Overview


■ズームアップ・アイテム(2)フード出しスタイル

上位トレンドと並行に浮上する
「新リラックス・スタイル」は、
再び<ストリートの時代>にシフトする予兆?


 先月の定点観測で予期せず浮上していたスタイルがこれ。その後ストリートでは増えているものの、「メンズノンノ」をはじめとする雑誌などでは一切掲載されていない、真のストリートファッションのトレンドである。 

 もっとも目立ったのは、20代全般の男子のアウターとしてはすっかり定番化したレザーブルゾン/ライダースの上から、スウェット素材のパーカーを重ねる00年前後に浮上した「ハイストリート」なスタイル。さらに、スタジアムジャンパーやテーラードジャケット、ダウンベストなど、80sのプレッピー/スタイルも加わり、今春全国に広がりそうだ。

 

 また、原宿地点に特に目立った90年代生まれを中心に支持されていたクレージーカラー&柄のブルゾンに差し色として単色のパーカーを重ねるスタイルも浮上。もともとフードが付いたデザインのものも多く、3月、4月の新東京人が増える季節にますます増えそうだ。

 

 また、女子の間でもフード出しスタイルは増えており、男子と変わらないアイテムを多用する「山ガール」的なファッションの他、レザーブルゾンやトレンチコートなどハードなアイテムをカジュアルダウンする要素としてパーカーが着用されていた。

 

  いずれにしてもパーカー/フード出しのスタイルはカジュアルダウンの代名詞。エレガント&クラシックな上位トレンドと並行して、東京の下位トレンド=ストリートでは、00年前後に浮上した「らくちん」「リラックス」スタイルが支持されているようだ。

今回のフード出しスタイルは、ひょっとしたら、上位トレンドがトリクルダウン的にストリートに反映されてきた00年代後半のファッショントレンドのメカニズムが一段落し、再びストリートの時代が始まる、まさに過渡期なのかもしれない。


フード出しスタイル Overview


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