楳図かずお恐怖マンガ展 ー楳恐(うめこわ)ー
レポート
2011.02.01
カルチャー|CULTURE

楳図かずお恐怖マンガ展 ー楳恐(うめこわ)ー

マンガを超える楳図ホラーの世界を体感! いよいよ14日(月)まで

名作『まことちゃん』をはじめとする
フィギュアが並ぶ物販コーナー
図さんは会期中にもサプライズで会場に
たびたび登場。トレードマークの紅白
ボーダーのシャツと“グワシ”ポーズ
物販コーナーは連日ぎゅうぎゅう
アダチ版画研究所とのコラボレーション
によって生まれた楳図作品の浮世絵版
展示会メインビジュアル。怖さとポップさの
振り幅の広さが楳図ワールドの魅力だ
(C)楳図かずお・小学館
エントランスはこんな感じ。入場者は
懐中電灯で場内の作品を鑑賞するという
仕掛けになっている。
楳図かずお/梅図/うめこわ/パルコ/ファクトリー/小学館
サイン会には早朝から多くのファンが
詰めかけた。過半数は若い女性ファン!

 天才漫画家・楳図かずおさんの恐怖マンガの世界を観賞できる展覧会「楳恐(うめこわ)」が渋谷のパルコファクトリーで開催されている。20108月に大阪、HEP5で開催された同名の展覧会にコンテンツを追加したもので、20119月に生誕75周年を迎える楳図さんの“日本一早いお誕生日会”として開催されるもの。

 

 1955年にプロデビュー。貸本マンガ時代にキャリアをスタートし、少女マンガから時代劇、SF/ファンタジー、ギャグに至るまで幅広い領域の作品を世に送り出し続けてきた楳図さんだが、やはりその真骨頂は恐怖マンガにある。本展は、そのタイトルのとおり楳図さんのホラー漫画にフォーカスを当て、その世界観を立体的な展示によって紹介するものだ。

 

 本展のメインとなる展示「ザ・恐怖ワールド」では『おろち』『恐怖』『漂流教室』『わたしは真吾』『14歳』といった代表的な作品ごとにコーナーを設けて展示している。

 入場者は受付で渡される懐中電灯で展示作品を鑑賞するという趣向。薄暗い場内には各作品から代表的なシーンがピックアップされたコーナーが設置され、音や光、造形物などで立体的に再構成している。楳図作品ならではの恐いシーンを懐中電灯で覗き見る感覚だ。

 

 こうして拡大、立体化された形で“楳図ホラー”を改めて見てみると、各作品が時代の空気を反映しつつも、今なお古びていないことに改めて驚かされる。恐さの“効き”が弱まっていないのである。

 とくに1960年代に生まれたマンガ好きにとって、楳図さんのホラー漫画の影響は計り知れないものがある。楳図ホラーは今なお現役で恐い、クラシックといえる存在なのだ。

 

 楳図さんは、基本的に自身の過去の作品を見返すことがないという。常にこれから作るべき作品に意識が向いているのがその理由だ。本展覧会についても、会場の基本的な構成は展覧会の製作サイドが進めたものを監修する形で進められた。

「とてもドラマティックなチョイスと展示になったと思います。安心して、お客さんとしても見させていただきました。改めて自分の絵柄を客観視しましたが、我ながら結構丁寧に書いているなあ、と自画自賛できました(笑)。

 大きいサイズで見ると、本のサイズのときには視界に入ってはいても見えていなかったものが見えるようになるので、また違って見えるんです。原画を大きく拡大すると絵柄がブレていたり雑だったりするのも見えてしまうものなのですが、僕の絵は結構拡大にも耐えるんだな、というのが新たな発見でしたね」

と楳図さんは語ってくれた。

 

 ほかにも貴重な原画のデジタル複製作品や、アダチ版画研究所とのコラボレーションによって製作された楳図かずお×現代浮世絵作品を展示するアートコーナーや、過去に立体化されてきたさまざまな楳図フィギュアを展示するコーナーを設置。

 

 また、幼少期から現在にいたるまでの楳図さんの軌跡がわかるヒストリーコーナー、レコード/CD、ステージといった音楽活動を展開してきた楳図さんがステージで着用してきたコスチュームや収集品などのプライベートコレクションなど、楳図さんの多彩な活動の全貌を網羅している。マンガの世界にとどまらず、ファンを楽しませることをライフワークとしてきた楳図さんの世界が立体的に楽しめる構成だ。

 

 09年に完成した楳図さんの自宅“楳図ハウス”を楳図ファンでもある写真家・蜷川実花さんが撮影した写真集UMEZZ HOUSE(小学館刊)からセレクトされたプリントを展示。中には入浴シーンのショットもあり、観賞中の女子からは「カワイイ!」との声も聞かれた。

 

 楳図さんは腱鞘炎のため95年からマンガの執筆は行っていない。しかしその後、歌やダンス、外国語のヒアリングなどエネルギッシュに活動している。オープンに先駆けて行われた記者会見にも登場した楳図さんは、挨拶の後に自ら作詞/作曲/振り付けを手がけた『まことちゃん音頭』の踊りまで披露してくれた。

 

 楳図さんにとってはこうした音楽やタレントとしての活動、さらに自宅である楳図ハウスにいたるすべての表現が作品であり、それが今なお新しい世代のファンの獲得にも繋がっている。

 122日(土)に開催されたサイン会にも先着70人の枠を巡って早朝からファンが集まる盛況となったが、その過半数が女性ファンだった。今後、会期中の毎週土曜日には、サプライズとして楳図さん本人が会場内に出没するというから、楽しみである。

 

「展覧会では、自分自身で見ても新しいものとして見えるところもありましたから、読者の皆さんにもそういうところが伝わればいいなと思います。

 平面的な絵の世界ですけど、立体的に感じられるような展示ができたので、作品の雰囲気にまみれていただきたいですね。見るというよりも、作品の世界にとけ込んで、別世界へのスリップを体験するという感じで見ていただければ嬉しいですね」(楳図さん)

 

 長く楳図マンガを見てきた読者には楳図ワールドの新たな再体験の場として、新しいファンにはクラシックとなった楳図作品への入り口として、会場で体験してみる価値はあるはずだ。

 

 

 

 

楳図かずお恐怖マンガ展『楳恐-うめこわ-

 

■期間:2011121()214()

場所:渋谷パルコパート1 6F 

 

    パルコファクトリー(東京都渋谷区宇田川町15-1)

 

■時間: 10:0021:00

※会期中無休 ※入場は閉場の30分前まで

※最終日は18:00で営業終了

■入場料:一般300円 学生200円 ※小学生未満無料

主催:パルコ

 

企画制作:バウコミュニケーションズ、 HEP HALL

 

企画協力:小学館集英社プロダクション、UMEZZ.com

■制作協力:小学館、小学館クリエイティブ、美エンタ、アダチ版画研究所、プリンツ21ART STORM、ラッキースター

協力:ECCアーティスト専門学校


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