Grimoire(グリモワール)
レポート
2010.04.15
ファッション|FASHION

Grimoire(グリモワール)

野村さんが手がけるアクセサリー
ブランド「DOLLY(ドリー)」。
ネット販売で爆発的人気となったことから
同店をオープンした。
インテリアはすべて十倍さんが個人的に
収集したコレクション。一時はトランク
ルームを借りるほどだったそう。
まるでグリム童話のようにファンタジック
な店内。作り込んだディスプレイは訪れる
ファンを飽きさせない。
スカート3,000円〜、ワンピース
6,000円〜とリーズナブルな価格も
魅力。10代〜20代前半の若者にも
買いやすい価格設定だ。
店長件バイヤーの野村仁美さん。
女性スタッフ3人が元読者モデルで
各々に熱狂的なファンを持つ。
 渋谷区神南、電力館向いにある雑居ビルの7階に、隠れ家のように存在する古着店「Grimoire(グリモワール)」。09年末頃から「定点観測」インタビューで、アラウンド90年生まれの女の子に好きなショップ、憧れのショップとして支持を集めていることから、取材を行った。

 同店を運営するのは、オーナーの十倍直昭さん(29歳)と、店長兼バイヤーの野村仁美さん(23歳)のカップル。オープンは2008年6月15日だ。十倍さんは元美容師で、2009年9月にストリートスナップサイト『DROP(ドロップ)』が創刊した雑誌『LASSIE PAPER(ラシーペーパー)』ではメディアプランナーを務めている。また、野村さんは服飾大学の学生時代に雑誌『CUTiE(キューティ)』の人気読者モデルだった経歴を持つ。野村さんは学生時代から、自身の手作りアクセサリーブランド「DOLLY(ドリー)」をネットで販売していたが、売れ行きが好調だったため、それなら本格的に店舗を作ろう、となったことがきっかけ。野村さんが古着好きだったことや、十倍さんがアンティークの雑貨とインテリアを集める趣味があったこともあり、それらのコンテンツを融合した店舗を作ろうことにしたという。

 十倍さんが内装デザインをしたという店内は広さ9坪。ツタや葉っぱ、フルーツなどの装飾で埋め尽くされた店内に、アンティークドールや鳥籠が随所に並び、まるでおとぎ話のようなファンタジックな空間になっている。店内に足を一歩踏み入れると、渋谷であることも忘れてしまいそうなほど世界観に浸れる。

 「テーマは古きヨーロッパのこじんまりした部屋。アパレルショップやカフェの雰囲気は私自身どこか緊張を感じるので、当店ではリラックスして買い物してもらえるよう、アパレルショップというイメージを壊したかったんです」(オーナー/十倍直昭さん)

 コンセプトは、ファンタジックな世界観を持つ空間で買い物を楽しんでもらうこと。店名を“魔術書”の意味を持つ「Grimoire(グリモワール)」としたのも、ページをめくるたびに魔法に出合える魔術書と同じように、店舗に来るたびに不思議な世界に浸ってほしかったからだという。

 商品構成はすべてレディス。チェコ・ドイツ・オーストリア等のヨーロッパ古着とアメリカの古着を扱っている。古着の年代が持つ価値よりもデザインや世界観を重視しており、時には街で流行っているトレンドのアイテムを古着で打ち出すこともあるという。2010年春夏シーズンは野村さんが特に興味を持つ、チェコやオーストリアの民族衣装、70年代のワンピースが充実。また、野村さんの「DOLLY(ドリー)」や、「Reinette et mirabell(レネット・ミラベル)」等のアクセサリーも揃う。価格帯は、スカート3,000円〜、ワンピース6,000円〜、靴5,000円〜、アクセサリー1,000円〜。

 物件は、ギャル・ゴスロリ・ハイブランド・古着等の多彩なファッショントライブが集まる渋谷に絞って探したそうだ。さらに、渋谷のなかでも古着好きに回遊してもらうために古着店が多いファイヤー通りであること、別世界に来たような雰囲気を出すために路面店以外の物件であることにこだわったという。

 ターゲットは、「時代に興味を持つ人(十倍さん)」。主な来客層は、10代後半〜20代後半の女性で、20代前半層が中心。古着好きはもちろん、ギャル系や40代の母と10代娘という親子連れまで幅広い。また、野村さんを含む女性スタッフ3人が元読者モデルで、現在でも頻繁にストリートスナップに登場していることから、彼女たちに憧れて来店し、彼女たちの洋服やヘアメイクを含めたスタイルを真似て、同店の服で全身をコーディネートする熱狂的なファンも少なくないそうだ。また、地方客やロンドンやアメリカからの外国人客も多いという。

 雑誌やテレビに加えて、スタッフのストリートスナップやmixi(ミクシィ)のコミュニティなどで同店を知って来店する人が多く、東京のファッションを海外向けに紹介する英語のサイト『TOKYOfashion.com(トウキョウファッションドットコム)』で紹介されたこともあるそうだ。来店客のほとんどが目的客なので買上げ率は高いそうだ。

 「ファストファッションの台頭で古着店は苦境ではないか、と尋ねられることがあるんですが、実はおかげさまでうちは右肩上がりです。ファストファッションとは真逆の、今では生産できない、その時代にその時代の生地でつくられた1点ものを打ち出しているので、1点ものに価値を感じる、他にはないものを探している方に支持していただいているのではないでしょうか」(十倍さん)

 同店では、商品・空間・スタッフが三位一体となって独自の世界観を演出。まるでテーマパークのような「非日常」な世界観に消費者が完全に浸れる点が、アラウンド90年生まれの「日によってテーマを決めてコーディネートを変える」というコスプレ感覚とフィットしており、スタッフへの強い憧れや消費意欲へと繋がっているように感じた。

 この5月にはオンラインショップをスタートする予定。今後は、2店舗目のオープンを目指すそうだ。

[取材・文/緒方麻希子(フリーライター/エディター)]
Grimoire(グリモワール)

〒150-0041
東京都渋谷区神南1-10-7テルス神南7F
TEL:03-3780-6203
営業時間:月〜金 12:00〜20:00
土・日・祝 12:00〜20:00



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