MASARU OZAKI<Motion + Design + Magic>
レポート
2009.11.19
カルチャー|CULTURE

MASARU OZAKI<Motion + Design + Magic>

「chair(チェア)」
表面を光りが走る様は圧巻。綿密に
計算されたシステムによる完璧な
構成になっている。
映像作家の尾崎勝氏
「昔は手品師もしたことがあります。
その時の技術も生かしています」
 11月9日から渋谷パルコパート1の正面入り口に、積み重ねられた“箱形”のクリスマスイルミネーションが登場した。夜5時を過ぎると、いくつもの箱のフチをなぞるように光の矢が動き、箱の面それぞれに異なった映像が投射され、箱形のスクリーンと一体となった不思議なオプティカル・インスタレーションとなっている。制作は国内外で高い評価を得る映像作家の尾崎勝さん。映像作家以外では、国内外でVJとしても活躍しており、クラブイベントのほか、JOHN LAWRENCE SULLIVAN(ジョン・ローレンスサリバン)Neil Barrett(ニールバレット)DIESEL(ディーゼル)などのファッション関連の映像や空間演出を手がけるなど、幅広い活躍をしていることでも有名だ。

parco factory(パルコファクトリー)では今月の23日まで、尾崎さんの初の単独展となる『MASARU OZAKI×VJ MASARU“MOTION+DESIGN+MAGIC EXHIBITION』が開催されている。同展覧会では既存の作品に加え、今回のために再構築された作品も並ぶ。同展示のプロデュース・設営を手がけたのは、ツールインク代表の古賀リエさん。同展覧会以外にも、多くの尾崎作品をプロデュースしている。

建物やイスを多面体のスクリーンと捉え、1台のプロジェクターで映像を投射し、思わぬビジュアル効果を生み出すプロジェクションマッピングアート。その第一人者である尾崎さんは、様々な立体物に、その一面、一面に異なった独自のアルゴリズムで動くアニメーションを組み込むことで、不思議な映像のリズムと空間を数多く生み出してきた。09年2月のファッション合同展rooms(ルームス)では、会場の代々木体育館を丸ごとスクリーンに仕立て上げ、様々な物体に転換する強力な演出力を見せつけたことで話題になった。

1台のプロジェクターから投射されるアニメーションは通常、一方向からの一つの時間軸で構成される“映像イメージ”であり、投影する“モノ”も、スクリーンなどフラットな平面だが、身近な小物から大きなビルまで、あらゆる立体物を、スクリーンに仕立てる尾崎作品は、線で構成される多面体の枠を、アニメーションなどで視覚化することで、動き(=モーション)を自在にデザインできるのが特徴。そのデザイン性の高さやビジュアルの美しさは、日本だけでなく海外でも高く評価されている。

「今回のテーマは、大人から子どもまで楽しめるよう、モーションとデザインのわくわくするような面白さという意味を込めて、“マジック”です。マジックを見たときの、あの『不思議』な感覚になって頂くのが狙いです」(尾崎さん)。

代表作品であり、今回も展示している、イスの輪郭をなぞるように、レーザーのような光線が面の端を動き、そして輪郭を結ぶ角で合流、平行移動する作品「chair(チェア)」では、視覚効果が、イスの存在自体を透明化する奇妙な感覚に捉えられる。他にも、テレビや奇妙な立方体などを使い、面それぞれが独自のアニメーションで構成されながら、音楽とともに不思議な存在感のリズムを生み出している。

作品制作に要する手間と時間は膨大だ。例えば25個の箱からなる渋谷パルコパート1正面入り口のクリスマスインスタレーションは、“面数”分のアニメーションが必要で、「制作期間は着手から7ヶ月に及び、ショートフィルム1本分ほどの期間が必要でした」と古賀さん。だからこそ、独自のアルゴリズムで設計された映像作品も、デザインとともに、技術力の完成度も評価され、海外ではアートやデザインの展覧会に招待され、高い支持を受けている。

ここ数年の定点観測インタビューで着用アイテムのブランドや購入店を分からないと回答する人が少なくない。その背景には、「MD似すぎてる問題」の「どこで買っても同じ」という、こだわりの薄さや情報に対する受け身の姿勢が感じられてならない。そんな状況を憂いてか、「実際に、『見た瞬間は何だかよく分からないけど、なんか楽しい、どうなっているのこれ?』というように感覚に訴えるのが狙いです」と尾崎さんは話す。

今後は国内での巡回展も予定しているそうだ。

『MASARU OZAKI×VJ MASARU “MOTION+DESIGN+MAGIC EXHIBITION』

・会 場:PARCO FACTORY(パルコファクトリー) 渋谷パルコ パート1 / 6階

・期 間:09年11月7日〜09年11月23日 

・開場時間:10:00 〜21:00(入場は閉場30分前まで)
※最終日(11月23日)は18:00に終了いたします。

・入場料:一般300円・学生200円・小学生以下無料

・お問合せ:03-3477-5873(パルコファクトリー)


2024_0418~ ストリートファッション1980-2020 定点観測40年の記録 アマゾンで購入 楽天ブックスで購入
YOOX.COM(ユークス)