AR家族会議@下北沢モナレコード
レポート
2009.09.03
カルチャー|CULTURE

AR家族会議@下北沢モナレコード

9月6日(日)、「AR三兄弟」が“拡張現実”をリアルに体験できるイベントを開催!

AR家族会議 <2009年09月06日(日)>下北沢モナレコードにて開催!!

■日時 2009年09月06日(日)  
■時間 OPEN17:30 START18:00 2部START19:30 CLOSE21:30
■会場 モナレコード@下北沢(http://www.mona-records.com/)
■参加費 3,500円 ※2,500円相当のT-shirts付き ★詳細・応募はこちらから
「AR三兄弟」長男の川田十夢さん。
 リアルな空間の中で、仮想空間の情報を重ね合わせて体験できる技術の開発が進み、これを用いたサービスや製品が一般に向けても開始されつつある。これは「AR(Augmented Realityの略)」と呼ばれ、日本語に翻訳すると「拡張現実」となる。電子空間の中で完結する「仮想現実(=バーチャル・リアリティ)」とは似て非なるものだ。
 
ARはiPhone 3Gが発売されたあたりから急速に一般化が進みつつある概念であり、携帯電話やeメールのように、新たな可能性を持つコミュニケーションツールとして期待が高まっている。いま、モバイル・キャリアやデバイスメーカー、アプリケーション開発者などがこぞってサービスの準備を進めている。今はウェブの一般利用が爆発的に広がる前夜にも似た状況だと言っていい。

 代表的なものに「エア・タギング」という技術がある。位置座標情報をアドレス代わりに使い、そこに合わせて貼り付けた「タグ」をiPhoneや携帯端末を通して見ることができるというもので、これを用いれば、たとえば「端末を通して現実空間を覗くと見えるAR看板」や「携帯の画面をかざすと最寄りの地下鉄の駅が見えるサービス」などが提供可能になるわけだ。
2009年9月には、「頓知・(とんちどっと)」(株)から拡張現実アプリ「セカイカメラ」がリリースされる予定である。これは現実空間の中に浮かぶエアタグをiPhoneの画面越しに見たり、目の前の空間に登録できるアプリケーションとして海外からも注目を集めている。

 このAR技術を使ってちょっとユルめの面白い作品を発表して注目を集めているユニットが「AR三兄弟(エーアールさんきょうだい)」だ。彼らは2009年春にAR技術の探究を目的として結成されたばかりだが、これまでウェブサイト(http://ar3.jp/)上で発表してきた彼らの作品は国内外のクリエーターから注目を集めている。「Twitter(ツイッター)」など、誰でも気軽に使えるツールを使ってニヤリと笑えるような遊びを提案してみせるのが特徴だ。

 9月6日(日)には第1回目となるAR推進イベントが開催される。その名も「AR家族会議」クリエイティブユニット「SCHEMA(スキーマ)」が運営を担当、会場は下北沢のライブスペース&おんがく食堂「mona records(モナレコード)」だ。コンベンション会場ではなく、デジタルな匂いが一見希薄な、レコードショップ併設のライブスペースというのは、ちょっと意外に思えるロケーションである。

 「AR家族会議」のイベントは2部構成で、1部は「AR三兄弟」の兄弟エピソード、2部ではARを参加者全員で体験しながら食事と交流を楽しむというもの。彼らがこれまでオフィシャルサイトで発表してきたARをリアルな空間で体験することができる、初めての機会である。参加条件は「Twitter」IDを所有していること。ユーザーが「Twitter」に登録しているアイコンや、「Twitter」へのつぶやきが現実空間に重なるといった仕組みになっているからだ。イベントで体験できる(であろう)作品の映像は以下の通りだ。
・第一話 | ワンダとtwitterと優しい奴ら
拡張現実×「Twitter」=ARど根性ガエル
http://vimeo.com/5488408

・第二話 | 部屋とTシャツと名刺
拡張現実×NENPYO=AR南くんの恋人。

AR3Bros episode-ii | twitter & NENPYO & namecard & AR from ar3bros on Vimeo.


・第三話 | 風の谷の三丁目のRPG
拡張現実×「Twitter」=ARドラゴンクエスト。
hthttp://vimeo.com/5641067

・第四話 | 二つの意味でエポック!AR野球盤
拡張現実と「Twitter」、エポック社の野球盤をマッシュアップ。

AR3Bros episode-iv | twitter & BaseballGameClassic & AR from ar3bros on Vimeo.


・番外編 | 人食いエレベーターピッチの逆襲
「TechCrunch」のエレベーターピッチ用に作ったAR紙芝居。

AR3Bros | AR-KAMISHIBAI from ar3bros on Vimeo.

 わかりやすいコミックやゲームをアイデアの素材にして、それをARの技術で遊んでみせる彼らの作品は、PCやウェブカメラなどの一般的な機材を使い、「Twitter」「NENPYO(ネンピョー)」といった既存のサービスをマッシュアップして作られている。特殊な、あるいは大掛かりな装置は使われていないので、ライブハウスでもイベントが開催できるというわけだ。今、携帯メーカーや広告業界、コンテンツメーカーなど、官民いずれもがARに関心を抱く世の流れから少し外れたところで遊んでいるようなところが面白い。
 
 三兄弟の長男、川田十夢さんに話を聞いた。
「この『AR紙芝居』なんかも、自分で作っていて楽しいんですよ。マジックで書いた絵がボコッっと出てくると、作った自分でも『おおっ』となったり(笑)。手書きとウェブ、真逆のことが繋がる楽しさがありますね。 
 先日参加した『TechCrunch Japan(テッククランチ ジャパン)』のイベント『東京Camp』でも、紙芝居や野球盤は海外の参加者にすごく面白がってもらえました。日本にしかないオリジナルなものだからなんでしょうね。
 僕らのように、できあがった技術を組み合わせる“マッシュアップ”って、ウェブを含めてメーカー系にはあまりない概念なんです。モノを作るのも、組み合わせるのも全て自分たちで賄おうとするところがありますが、今は、ウェブの世界ではそういう枠が関係なくなってきつつあります。メーカーさんがそのあたりに気付くようになってくると、もっと面白いですよね」(川田さん)。
 
「AR三兄弟」の活動は、長男の川田さんと、ファッション系に強いという次男の高木伸二さん、音楽も開発もてがけるという小笠原雄さんの3人がメンバー。彼らはいずれも「ALTERNATIVE DESIGN++(略してXXX)」というクリエイティブ開発チームとして活動する、JUKIゼネラルサービス(株)の社員でもある。彼らはミシンの部品を発注するウェブシステムを開発したり、海外で行われる展示会ブースのプロデュースなどに携わり、プロモーション映像で使う曲やサウンドトラックなども、全て自分たちで作ってしまうという。国が予算を投じるICT事業にも参画するなど、ハードメーカーの中でテクノロジーとカルチャーを結びつける仕事を幅広くこなしている。

 実は、「ALTERNATIVE DESIGN++」では、「Creative Commons(クリエイティブ・コモンズ)」主催のミュージックビデオコンテスト『音景』の小山田圭吾賞、アドビシステムズ「Adobe Records」のアートコンテストでインタラクティブ・アート部門 優秀賞&ミュージッククリップ部門 秀賞を受賞するなどの実績もあり、「Adobe Records」の受賞作品はCD化もされた。

「これらの作品では、技術的には『AR三兄弟』の作品よりもっと凄いことをやっているものもあります(笑)。こういうものもいずれ『AR三兄弟』の活動の中で見せていければと思いますね」(川田さん)
 
 「先日、『頓知・(とんちどっと)』のCEO井口さんが『AR行為』という表現をされていたんですが、例えばタギングする行為って、まだまだフツウの人から見たら怪しい行動じゃないですか。携帯で写真を撮るのも以前はそうでしたし。
 でもその異様さは、おそらく来年、再来年になるとどんどんあたりまえの行為になって薄れていくと思うんです。そうなる前の“なんか奇妙だね”という感じを、イベントの“演目”として行うことで残しておくのが面白いと思うんです」と川田さんは語る。

 これから多様な対応アプリやハードやサービスが開発され、一気に普及が進みそうなARだが、その普及前夜といえる現在の空気を遊びながら感じることができるのは今しかない。イベントに参加すると、“AR家族”限定Tシャツがもらえるそうで、イベントに参加していち早く“AR家族”の一員となっておくのも面白そうだ。


[取材・文:本橋康治]

会場:mona records(モナレコード)

住所:〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-13-5 伊奈ビル2F
TEL:03-5787-3326


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