第340回定点観測(2009年4月4日実施)
レポート
2009.04.17
ファッション|FASHION

第340回定点観測(2009年4月4日実施)

フェミニンからマニッシュへ。

フェミニンからマニッシュへ。

 最高気温18.1度、最低気温9.4度、桜満開!となった4月4日(土)に実施した第340回目の定点観測。今回も直前までプレサーベイを実施し、以下のように今注目すべきアイテムやスタイリングを決定した。


(1)「女性パンプス」、「女性カラーパンプス」:カウントアイテム(もっとも普及しているファッションアイテムやスタイルを、その着用率を測定することから命名)

(2)「ロングスカート」:ズームアップアイテム(今月まちに急浮上し、今後増えそうなアイテムやスタイル、またはある特定のグループを中心に、今この瞬間増加した瞬間風速的なアイテムやスタイル)

(3)「アギネス・ヘア」:ズームアップアイテム(同上)

 まずは、急浮上し、あっという間に10代〜40代まで浸透し、カウントアイテムとした「カラーパンプス」。ミニスカートと合わせたフェミニン&カワイイスタイルに加え、ロールアップしたデニムに合わせて、ややマニッシュなスタイルにする人が増えた点も注目される。

各地点のロールアップスタイルはこちらから。

http://www.web-across.com/observe/cnsa9a000002wz8g.html


 また、何年かに一度、大きくまちの風景としてのファッションが変わる瞬間があるが、09年4月はまさにそのタイミング。<新東京人>がまちに溢れていたのとは別に、<新しい若者世代>がストリートファッションの主役へ台頭しつつあるのが確認された。

 「ロングスカート」はまさにその代表的なアイテム。90年代生まれのティーンズを中心に、久しぶりに<古着っぽい着こなし>が浮上している点が気になります。

 もうひとつのズームアップアイテムの「アギネス・ヘア」は、プラチナブロンドのベリーショートヘアがトレードマークのイギリス人スーパーモデルのアギネス・ディーンのヘアスタイル、という意味で、日本では木村カエラちゃんのような、女の子っぽい服装でも甘すぎず、モード感のあるスタイルにみえる点から、ファッション感度の高い層に広がりつつあるので注目した。

 思えば、00年代は女性はフェミニン、男性はセクシー(新しいマチズム?)という大きなトレンドの潮流を背景に、女の子も男の子も髪を伸ばす傾向にあったのは記憶に新しい。実際に、某化粧品メーカーさんとの共同研究のなかでも、00年前後は「髪を伸ばしたい」と言っていた人が多く、徐々に長い子が増え、名古屋巻きの<モテ>を経て、徐々にストリート系の子にもエレガントなロングヘアが増えていった経緯がある。

 とはいえ、髪の毛を伸ばすのには年月がかかるが、「今すぐ!」という欲求を満たしてくれるアイテムとしてエクステンション市場は急成長。その後、08年秋になり、理想のロングヘア達成した人も増え、さて、さて先どうしよう、とサロンで相談したところ、前髪(バングス)をつくる)、という単純な割には顔まわりの印象は大きく変わるヘアスタイルがオシャレな子に急浮上。「つけ前髪」というヒット商品を生みながら、徐々に一般化していったというわけだ。

 そういったヘアスタイルの変化の背景には、理想とする女性像が、フェミニンから<モテ>になり、モード、そして脱セクシーへと緩やかに変化していることを表象していると言えるだろう。



ヘアスタイルのトレンドの変化については、バックナンバーをご覧ください。
http://www.web-across.com/observe/d6eo3n0000039kb5.html



また、「新しい若者世代(90年代生まれ)」については、さまざまな業界・立ち場の方で研究会を発足したいと思います。参加ご希望の方は下記までご連絡ください。
info@web-across.com




***「アクロス」では、「デザイナーやアパレル企業がつくり出すファッションではなく、それぞれの時代・社会や文化を背景に、街に集まる若者たちに実際に支持され、発信されるファッションのこと」をストリートファッションの定義としています。


各地点のようすは以下の通り。

渋谷地点

■まちのようす:代々木公園で花見をしようという集団や、イベント「春風」に行こうとするエスニック系ファッションの若者、そして新東京人などで賑わっていた渋谷地点。全体的にはまだまだ黒っぽい服装の人が多く、足下だけが、パンプスに変わった、という印象が強かった。

■女性パンプス、うちカラーパンプス:3地点中33.2%ともっともパンプスの着用率が高かった渋谷地点。いちばん多かった色は黒。次いでベージュや白、シルバー、ゴールド、それ以外となっていた。カラーパンプスで目立ったのは、ギャルのロールアップデニムとのコーディネート。ひらミニ、柄ワンピースなどとの組み合わせは20代後半〜30代に多かったが、ヒョウ柄やパーツごとに色が違うマルチカラー、ドット柄といった色柄ものも浮上していた。
一方、数は少なかったもののおしゃれに感じたのは、ウエッジソールやヒールがデザインされたパンプスを履くモード系の着こなしだった。また、まったくヒールのないぺたんこシューズも浮上中。

■ロングスカート: イベント「春風」の影響か、民族系のボリューミーなロングスカートも目立ったなか、うすいピンクや水色のギンガムチェックやナローシルエットのロングスカート+スニーカーが新鮮だった。また、ややゆったりめのAラインシルエットのワンピースは30代以上の『InRed』世代に人気。リラックススタイルを形成していた。

■アギネス・ヘア: まず驚いたのは、ショートヘアがもの凄く増えたこと。なかでもマッシュルームヘアは若年層を中心に一気に人気のヘアスタイルとなっており、かわいらしいアイテムを着用していてもモードな雰囲気に見えるから不思議だ。

■マス化していたアイテムやスタイル:スニーカー、ティアードスカート、フリルミニ、デニム素材、シフォン素材、ボーダーアイテム、ショートヘア、カラフルリュック、柄リュック、厚め前髪、バレンシアガのバッグ、ドーリーヘア、ミニトートなど

■今後増えそうなアイテムやスタイル: ベリーショートヘア、刈り上げヘア、トレッキングブーツ、アウトドアアイテムなど

原宿地点

■まちのようす:新中学生、新高校生、新東京人の若年層がものすごく多かった原宿地点。3人以上の男女グループや、母子(またはファミリー)、郊外から来たと思われる男の子のグループなど、先月の原宿とは異なる風景となっていた。

■女性パンプス、うちカラーパンプス:黒以外で目立ったのは白、ベージュのベーシックな色。コンサバ系以外にもギャルや『sweet』系と幅広い層に支持されていた。もっとも多かったのはミニスカートで、黒のタイツかレギンスに+パンプスという新定番のスタイルへと昇華していた。色では、ゴールドやシルバー、イエロー、ブルー、レッドとさまざまだった。
一方、柄やカラフルなパンプスのトレンドのウラでは、ぺたんこ靴が急浮上。リラックス感あるスタイルがかなり新鮮に感じられた。

■ロングスカート:古着かと思われる花柄やバティック柄、ギンガムチェックなどのボリュームのあるソングスカートがティーンズ〜20代前半に大人気。足下はショートブーツやスニーカーで全体的にリラックス感あふれるスタイルとなっていた。

■アギネス・ヘア: 金髪のボーイッシュなショートの原宿キッズっぽい感じの子が多いが、20代後半にも支持されていた。合わせるファッションでは、ロングジャケットにスキニーパンツ、タイトスカートなどシャープでボディコンシャスなシルエットがオシャレな印象。

■マス化していたアイテムやスタイル:カラフルスニーカー、ローテクスニーカー、ミディアムボブ(梨花ボブ)、うす色デニム、シャーベットカラーアイテムショートジャケット、レザージャケット+ミニワンピ、ウエストマーク・ワンピ、ミニトートなど

■今後増えそうなアイテムやスタイル: 外国人観光客のロリータ、ケミカルウォッシュのデニム、コンパクトなナイロンブルゾン、コットンなど柔らかい素材のライダース、少し崩したショートボブ、フラットシューズ、丸いスタッズの付いたレザーバッグなど

新宿地点

■まちのようす: 「おととい東京に越してきたばかり」という新東京人を中心に、ものすごい人で賑わっていた新宿地点。新社会人なのか、スーツ姿の若者も目立った。また、「ロングやミディアムの巻き髪+ブルゾン(レザーデニム)+ひらミニ+黒タイツ+ブーツ」のスタイルも目立った。

■女性パンプス、うちカラーパンプス:まだまだ黒タイツ+黒パンプスが多い結果となった新宿地点だが、黒タイツがやや透け感のあるものに変化していた点が注目される。ボトムスはひらミニで、30前後のOLさんにはスキニーデニムとの組み合わせが主流。ギャル系にはヒョウ柄やストライブ、ボーダーなどの柄パンプスも浮上。靴をワンポイントにした着こなしで主張していた。
ティーンズ〜20代前半には、白やヴィヴィッドピンク、のパテント(実はビニール)のハイヒールが人気。足首にストラップが付いているものも目立った。
40代以上のプレシャス世代に支持されていたのは、イントレチャート風の茶系パンプス。メッシュ風の型押しで、表面に立体感があり、ウエッジソールが多かった。

■ロングスカート: おしゃれ度が高かたアイテム。白やベージュのコットン素材にピンクの小花柄、チェック、ドット柄などバリエーションも豊富で、見ていて愉しかった。
実際には古着ではなく新品のようで、ボヘミアンんというよりは、リゾート&リラックスといった雰囲気。小さめのレザーブルゾンやGジャン、パーカーなどでコンパクトなトップスのバランスシルエットが新鮮だった。

■アギネス・ヘア: 新宿はまだまだボブ、ロングが主流。アギネスほどのべりショートはさすがに少なかったものの、マッシュからやや短めのレイヤーショートが人気のよう。色も背部リーチ、金髪が多く、洋服は今まで通りのショートパンツやひらミニ、ワンピースなどでも、ヘアスタイルがエッジーなので、脱フェミニンなモード感あるスアイルとなっていた。

■マス化していたアイテムやスタイル:ひらミニ、OLさんのティアードスカート+レザーブルゾン、花柄(再浮上)、スキニーデニム(再浮上)、トゥーレスタイツ、柄リュック、レースアップシューズ、。トレンチコート(再び)またはベルトだけ異なるトレンチコート、デニムのタイトスカート、ショートパンツ、アンコンジャケット、ベレー帽、カラータイツ、テーラードジャケット、ピンク色アイテムなど

■今後増えそうなアイテムやスタイル: ジーンズ、シャンブレーなど色落ち素材のスカートやワンピース、カレッジ系アイテム、トレンチコート、コルセット、つなぎ、ジャンプスーツ、ロングジャケット、男の子のカラーパンツ、花柄のストール、リネン素材のアイテム、男性のカーディガンスタイル、柄リュックなど


同じタグの記事
同じキーワードの記事
2024_0115~ ストリートファッション1980-2020 定点観測40年の記録 アマゾンで購入 楽天ブックスで購入
YOOX.COM(ユークス)