kagure(かぐれ)
レポート
2009.03.02
ファッション|FASHION

kagure(かぐれ)

URBAN RESEARCHの新業態はモードなオーガニックファッションを提案するセレクトショップ

従来のオーガニックファッションとは
一線を画す、トラッドでモードな
デザインのアイテムが充実。
マノロ・ブラニクなどの靴も扱っている。
2階は雑貨フロア。日常使いができるよう、
比較的リーズナブルな若手作家の作品を
揃えている。
益子町のカフェギャラリーSTARNET
デザインを手がけ、陶芸家の石松信彦
さんが作成している「ブルーシリーズ」。
入り口の共有通路は土と石畳の小道に
なっており四季折々の植物が楽しめる。
オーストラリアのREMEDICaの石けん
各¥1,890。石けんは40種類以上
取り扱っている。
kim white handbagsのポーチ。
アメリカの自動車用に生産された素材を
再利用している。各¥5,250
V/Nニットワンピース¥13,650
バルーンスカート¥15,750
オーガニックファションをテーマにしたセレクトショップ「かぐれ」が、2008年12月6日、表参道にオープンした。同店は「URBAN RESEARCH(アーバンリサーチ)」や「KBF(ケイ・ビー・エフ)」等を展開する(株)アーバンリサーチの新業態である。

コンセプトは、「トラッドとモードと、地球」。都会的なライフスタイルを送る人々に向けて、オーガニックコットン(有機栽培綿)を用いた洋服と天然素材からなる雑貨を通じて、地球環境を考えるひとときを取り入れることを提案する。

「これまではオーガニック素材を用いた洋服というと、ゆったりしたワンピースやワイドパンツ等のリラックス感のあるデザインや、フェミニンでかわいらしい世界観のものが主流でした。しかし当店では、そこから一歩進んで、都市生活者が日常的に着られるような、ベーシックで甘すぎないデザインのものを提案しています。オリジナルもセレクトも、モードなデザインであることを重視し、特にシルエットの美しさを大切にしています」(店長/渡辺敦子さん)。

オリジナルとセレクトが5対5、レディースとメンズは8対2の割合。オリジナルブランドの「I-UKI-KAHA-NGURENGURE(かぐれ)」は、同社初となる社外デザイナーを起用し、オーガニックコットンのほか、竹繊維、ウール、牛乳のたんぱく質からなるカゼインボタン等の天然由来の生地やボタンを使用。テーラードジャケットやシャツ、ステンカラーコートなど、街ではもちろん、オフィスにも着ていけるようなベーシックでトラッドなデザインのアイテムが充実しているのが特徴だ。セレクトブランドは、ニューヨークの「Organic by John Patrick(オーガニック バイ ジョン・パトリック)」「Stewart + Brown(スチュワート+ブラウン)」等。オーガニックコットンやフェアトレードを取り入れ、デザイナー自身もオーガニックな生活を送っているブランドを基準に選んでいるという。価格帯は、カットソー3,500円、シャツ1万6,000円、パンツ1万5,000円〜2万3,000円。

また、アンダーウェアやルームウェア、「made of Organics(メイド オブ オーガニクス)」のベビー服のほか、「babu(バブー)」「REMEDICa(レメディカ)」等の化学成分を含まない純石けん、洗剤、タオルといった日常生活品、箸や若手陶芸作家の器も取り扱っている。

「中目黒や恵比寿も候補地として考えましたが、より高感度な方々に認知して頂くため、ファッションの最前線の街である表参道を選びました」(渡辺さん)。

ガラス張りのビルの1階部分がウェアや靴を扱うアパレルのフロア、2階がコスメや器、カトラリーなどを扱う雑貨フロアという構成で、広さはそれぞれ20坪。1階の床が土間になっていたり、2階の床に白樫、天井に杉材、壁に牡蠣殻の入った漆喰を使うなど、国産資材を多用している。内装は、什器を手掛けた金属と木の作家・海野毅さんや、建築家の前田幸則さん、スタッフとでアイデアを出し合ったという。

メインターゲットは、家庭を持ちながら都市部で働く30代〜の女性。子育てを機に未来や環境について関心が高まったり、年齢を重ねたことによって、ナチュラルでオーガニックなものを求めるようになった人たちに向けている。

「実際には20代前半〜50代まで幅広い年齢層の女性にお越し頂いています。20代の男性も多いですよ。2フロアを隈なくじっくりと見てまわる方が多く、平均滞在時間が約30分と長いのも特徴です」(渡辺さん)。

また同店では、オープン時から、毎月ワークショップを開催している。「おとなの為の心理ぬりえ講座」「肩もみマスター」「オーガニックコットン手縫いの会」など、生活を楽しむヒントになるような、ユニークな内容が中心。店内のワークルームを使用しており、一回の定員は4名、参加費は1,000円〜。

「2008年のエコブームを通して、オーガニック生地を調達しやすくなり、デザインできる幅もぐっと広がりました。ファッションとエコを両立できるようなアイテムが増えつつあることで、消費者の皆さんにも確実にエコの概念が浸透してきているように感じます」(渡辺さん)。

日本オーガニックコットン協会のHPによると、アメリカのNPO、Organic Exchange(オーガニックエクスチェンジ)が発表したオーガニックコットン生産に関するレポート「Organic Cotton Farm and Fiber Report 2008」では、2007〜2008年にかけての世界のオーガニックコットン生産量が、前年比152%も急増しているという。小売り分野において世界的に需要が高まっており、小規模な店舗だけでなく大規模なブランドに至るまで、オーガニックコットンの価値が浸透しつつあるのだ。

国内を見てみても、08年あたりから、大手セレクトショップやドメスティックブランドで、オーガニック・コットンを使った商品がたくさんリリースされるようになっている。同ショップもそのひとつ。国内で企画・生産することでリアルな東京のトレンド、モード感を反映したデザインを実現。モードなデザインを色濃く打ち出すことで、オーガニックファッションの可能性を広げたケースといえるだろう。

今後は、多店舗展開を目指すほか、「URBAN RESEARCH」とのコラボレーション商品も企画していくそうだ。

[取材・文/緒方 麻希子(フリーライター)+『ACROSS』編集部]
■kagure(かぐれ)

住所:〒150-0001
   東京都渋谷区神宮前4-25-12 MICO神宮前
電話:03-5414-5737
営業時間:11:30〜20:00(不定休)



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