penderie(ペンデリー)
レポート
2008.12.10
ファッション|FASHION

penderie(ペンデリー)

ポストSPAブームは個人オーナーの小さな店。 セレクトショップ「penderie」恵比寿にオープン

Primark (Women's)
Duffle Coat 3万6,750円
壁面にアンティークのフックを
用いランダムに配置。グレーの
レザーバッグは同店オリジナル。
日本のデコレーターに制作を依頼した
オリジナルの照明。
アンティーク家具をレイアウトに
使用するなど、細部にまでこだ
わりを感じる。
フランス語でワードローブという意味の「penderie(ペンデリー)」を冠したセレクトショップが08年9月13日、恵比寿にオープンした。取り扱うのは日本ではまだめずらしい海外デザイナーのものが中心で、ベーシックな中にもオリジナリティとトレンド感があふれるアイテムが充実している。バイイングから販売までを行っているのは、高梨奈穂さんと檀上佑一さんの2人だ。

それぞれアパレル業界でキャリアをスタートさせた2人は、その後、海外ブランドを多く扱う某セレクトショップで出会う。ファッションに対する感覚や好みが類似していることから意気投合し、ファッションを核にライフスタイル全体をコーディネートするショップを始めようと思い、1年間の準備期間を経ての出店となった。出店場所を恵比寿に決めた理由は、数多くのファッションビルやアパレルショップが密集する渋谷、原宿、表参道ではなく、恵比寿の適度な静けさの中でこそ、同店の個性が引き立つと考えてのこと。恵比寿と代官山の中間地に位置するため、双方の客層を取り込む事も視野に入れたのだという。

「ブランドの有名無名や、ジャンルにとらわれることなく、私たちが面白いと感じる商品を選んでいます」(檀上さん)。

他店では取り扱いの少ないWON HUNRED(ウォン・ハンドレッド)RISTO BIMBILOSKI(リスト・ビンビロスキ)といったブランド、converse(コンバース)のプロダクトCONVERSE REDなどの珍しいアイテム、価値観を共有できるデザイナーと話し合い生まれたコラボレーションアイテムなど、充実の品揃えが同店の強みだ。元々アパレル業界にいただけにトレンド情報の入手は得意とするところ。店内には、感覚だけではなし得ない、確かな目利き力を投影した商品が多く並んでいる。セレクトの基準は、共感度が高かったメゾンだそうだ。

オーナー2人が店頭に立つことで、お客様にデザイナーの思いを直接伝える事ができるのも特徴。コミュニケーションを図ることでお客様の信頼感が増し、「ここに来ると、何か面白い発見がある」という期待感からリピーターも多いそうだ。

「現在、ヨーロッパのブランドが中心で全商品の約6割を占めます。海外デザイナーの中には、日本に進出していない素晴らしいデザイナーが多くいます。家族経営や若いメゾンだからこその、ユニークなディテールや、きめ細やかな仕上がりをお客さまに伝えたいですね」(高梨さん)。

取り扱いブランドは約15。レディスとメンズの比率は6対4。来店者の年齢層は20歳代後半から上は60歳代までと幅広く、中心は30歳代半ばだそう。人と同じでは満足しない、ファッションにこだわりのある層が多く、在勤者が昼休みの合間に訪れ、仕事帰りに再来して購入というパターンや、在住者が帰宅前に立ち寄るケースが目立つそうだ。平均価格帯は、ジャケット3万円〜6万円、ニット1万円〜4万円、ボトムは1万円〜3万円。

16坪の店内の随所には、2人のこだわりを感じるインテリアが並ぶ。例えば、店の中央に位置する照明は、透明な球体をネットでつなげたユニークなデザイン。これは、2人がロンドンを訪れた際に、目にしたカフェの照具に着想を得て、日本のデコレーターに制作を依頼したオリジナルのものだ。また、新品の作り付け什器がある一方で、ネクタイなどの小物がレイアウトされた引き出し付きトランクや、大テーブル、ソファといったアンティーク家具がバランス良く並び、空間を引き締めている。完璧にしつらえるのではなく、あえて作りかけの状態を残すことで、居心地良い雰囲気を醸すことにも注力したそうだ。

「お客さまのライフスタイルに商品が取り入れられて、はじめてワードローブとして機能します。商品とお客さま、デザイナー同士など、当店はその触媒的な場になりたいです」(高梨さん)。

また現在、ハンドメイド雑貨のアーティストとファッションデザイナーのコラボレーションも企画しているという。国内外のSPAブランドが席巻し、似たようなMDを扱う店舗が増えるなか、このような個性の光る個人オーナーの店の動向に次の時代のヒントが隠されている。

[取材・文/フリーエディター・ライター藤原祥子+『ACROSS』編集部]
penderie
住所:東京都渋谷区恵比寿西2-9-9
TEL:03-5428-6638
FAX:03-5428-6639
営業時間:12:00〜20:00
定休日:不定休



同じタグの記事
同じキーワードの記事
2024_0115~ ストリートファッション1980-2020 定点観測40年の記録 アマゾンで購入 楽天ブックスで購入
YOOX.COM(ユークス)