Veggie Paradise(ベジパラダイス)
レポート
2008.05.20
フード|FOOD

Veggie Paradise(ベジパラダイス)

“生きている食べ物”という新発想、日本初のリビングフードレストラン

築50年以上の民家を改装した店内。
“都会のオアシス”をテーマに、グリーン
と黒のインテリアで統一している。
ランチプレートはスープ&サイドディッ
シュ付きで1,470円。日本人の味覚に合う
ようにアレンジされている。
広々とした厨房。弁当の受注や
ケータリングサービスも行っている。
リビングフードの食材や調味料、
調理器具の販売も行っている。
ベジタリアン料理研究家で日本リビング
フード協会代表のいとうゆきさん。
ここ数年、“体への優しさ”をコンセプトにしたレストランやカフェが続々と登場している。弊サイトでも、オーガニック、マクロビオティック、ベリタリアン、ビーガンなど、さまざまなキーワードの飲食店を紹介しているが、今、女性誌を中心に注目を集めているのが、最新の酵素栄養学に基づいた食事法「リビングフード」である。

代々木上原の「Veggie Paradise(ベジパラダイス)」は、日本初のリビングフードレストランとして2007年9月にオープン。運営元は、料理教室や食材・調理器機の卸し販売等を手掛ける株式会社リビングフード。2004年に日本リビングフード協会を設立した、ベジタリアン料理研究家のいとうゆきさんが代表をつとめている。

「“生きている食べ物”を意味するリビングフードは、アメリカで1985年にエドワード・ハウエル医学博士が確立した『酵素栄養学』に基づく食事法です。人間の生命活動に欠かすことのできない大切な栄養素として酵素の働きが注目されていますが、“生きている食べ物”には酵素が多く含まれています。ただし、酵素は熱に弱く46~48度の加熱で破壊され、その効果を失います。生きた酵素を摂るために加熱処理をしないのがリビングフードの大きな特徴です」(いとうさん)。

“生きている食べ物”とは、生野菜や果物、さらに生のナッツや種、ドライフルーツなどのことで、加熱処理をせずに調理するのが大きな特徴。土地柄と季節にあった食べ物を食べる「身土不二(=地産地消)」と、野菜を根っこから葉っぱの先まで食べる「一物全体」が基本。食材は極力オーガニックで、それ以外は農薬落としのパウダーで洗い、ひと手間かけてから調理している。味噌やたまり醤油など生きた酵母を豊富に含んだ調味料も“生きている食べ物”として使用している。人間の体は動物性たんぱく質を消化しにくいという研究結果から、肉や魚は生であっても含まれない。生のものは体を冷やすのではないかと思われがちだが、実は酵素を摂ることで新陳代謝が活発化され、冷え性改善の効果もある。加熱処理され酵素を失った食材はデッドフードと見なされる。

「リビングフードは、デミ・ムーアやドリュー・バリモアをはじめとするハリウッドセレブがダイエットに成功した食事法として話題になりました。当初は医療の現場で取り入れられていましたが、無理のないダイエット効果やアンチエイジング効果が注目されて、今ではグルメ料理として発展。ニューヨークやサンフランシスコでは、リビングフードのカフェやレストランが続々とオープンし、スーパーやコンビニでもリビングフードのお菓子が売られるようになるほど浸透しています」(いとうさん)。

長年アトピーや過敏性腸症候群に苦しみ、マクロビオティックなど数々の食事療法を試してきたいとうさんは、酵素や菌が生きている食べ物が体に与える変化を、身をもって体験。「いろいろな食事法がありますが、リビングフードは臨床実験に基づいたものなので、体の変化が早い」とその魅力を語る。アメリカでリビングフードを学び、日本リビングフード協会を設立後、アメリカのレシピを日本人の口に合うようにアレンジして、料理教室や関連書籍の執筆をスタート。現地のリビングフードレストランでの修行を経て、「ベジパラダイス」をオープンした。リビングフードを取り入れる人をリビングフーディストと呼ぶが、同店では厳格な食事法としてよりも、色鮮やかで見た目に美しくおいしい料理を五感で楽しみ、リビングフードを少しでも毎日の食事に取り入れることを提案している。

同店が出店したのは、代々木上原1丁目の住宅街。築50年以上の民家を改造した店内は、グリーンを基調とした約28坪・45席の広々とした空間になっている。客層は20代〜60代までと幅広く、男女比は4:6程度。リビングフーディストやベジタリアンの外国人も客層の1/3を占めるが、あえて外看板にリビングフードレストランであることを書いていないため、近所の人がふらりと来店して「健康食なのに、普通の料理よりもおいしい」とリピートすることも少なくないそうだ。2階は日本リビングフード協会の事務所、料理教室、ヨガスタジオ(多目的ルーム)、アートメイクのエステルームを併設。料理教室や体験セミナーの受講者もここ1〜2年で急増しており、日本でも酵素の重要性が知られるようになり、20代 ・30代はダイエットやアンチエイジング、またアレルギーの子どものために、40代は新しい料理法に興味を持って、50代・60代は家族の健康管理のために、というように、きっかけや目的も幅広くなっているそうだ。特に最近では男性が増えているのを実感しているという。

もともと日本リビングフード協会は代々木八幡で創業し、さらに今回のオープンにあたって、取引のある老舗自然食材店「GAIA(ガイア)」がある代々木上原エリアを選んだという。このエリアには他にも、天然酵母のパン屋「Le Vian(ルヴァン)」や、乾物をテーマにしたデリ&カフェ「Kanbutsu Cafe(カンブツカフェ)」、化学調味料無添加の中華料理店「jeeten(ジーテン)」などがあり、“体へのやさしさ”にこだわったショップの集積地帯となっている。環境やエコロジー、食などに関心の高い住民が多いことに加え、休日にはこれらのショップ巡りを目当てに多くの人が来街者も少なくない。どうやら代々木上原エリアは、“体へのやさしさ”を求める人たちにとっての、注目エリアになりつつあるようだ。

〔取材・文:佐久間成美(エコライター)〕


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