雑誌専門古書店「Magnif(マグニフ)」が新店舗に移転
レポート
2026.01.23
カルチャー|CULTURE

雑誌専門古書店「Magnif(マグニフ)」が新店舗に移転

まもなく移転オープン。国内外問わず幅広い世代から愛される雑誌専門の古本屋

東京・神保町のすずらん通り商店街に位置する「マグニフ」で移転前インタビュー&不定点観測

古本屋が立ち並ぶディープな街、東京・神保町。
古書の街として知られるこのエリアの中でも、すずらん通り商店街は、専門性の高い店が静かにカルチャーを育んできた場所だ。
 
その一角に店を構える雑誌専門古書店の「Magnif(マグニフ)」は、黄色の窓枠と赤い本棚が印象的な、海外の書店を思わせるポップな佇まい。
時代ごとの熱量や価値観を宿した雑誌を扱い、ファッションや音楽、アート、サブカルチャーといった分野を横断する。ページをめくる行為そのものが、過去の空気に触れる体験となるアイコニックな場所だ。
 
2009年のオープン以来(当時の取材記事はこちら)、ファッション愛好家を中心に幅広い世代から親しまれてきたが、2025年12月20日に建物の老朽化を理由に現在の店舗をクローズし、2026年1月24日に並びのビルである東京堂書店の2階に移転することとなった。
長年にわたり神保町のカルチャーシーンを支えてきたこの場所に、ひとつの区切りがつく。アクロスでは、移転前の店舗とそこに訪れる来店客の姿を残すべく不定点観測によるインタビューを実施するとともに、店主の中武 康法さんに話を伺った。
 
 
 
移転前の2025年12月19日に行った不定点観測のインタビューはこちら



撮影のコーディネート、ポージングの参考になるようなものを探していたというモデルの女性。

雑誌それぞれの良さをその都度引き出していきたい

ーー16年間の振り返りと、現店舗への思いは?
 
中武さん:あっという間でした。何もかもが手探りだったので、目標もその達成も特別に報告できることはありません。特に大きな問題もなく続ける事ができて良かった、という事に尽きます。移転については、いずれこうなるとわかっていた事ではあるのですが、この場所、この建物が使えなくなる事の寂しさはあります。

 
ーー移転後のプランについて教えてください。
 
中武さん:基本的には、これまで通りの店でありたいと思っています。そもそも絶版雑誌が取り扱いの中心なので、私の思い通りの商品を集められるわけでもなく、お客様からの買取次第で店のラインナップが大きく変わっていきます。「ファッション雑誌」を軸にしつつも、入荷する様々な雑誌のそれぞれの良さをその都度引き出していければと思っています。
変えていく部分を敢えていうなら、これまで店以外でのイベント出店に時間を費やし過ぎた事が度々あったので、その辺りをできるだけ絞って店に集中していきたいというところでしょうか。
 
 
文化出版局より1971年〜1977年に刊行されていた『Amica』の1974年1月号。

紙の雑誌を多くの人に継承し、未来の雑誌文化に繋げる店

ーー雑誌が売れない時代ですが、雑誌の未来について考えることは?

中武さん:確かに紙の雑誌は年々部数を減らしている傾向があると思われますが、インティペンデントな分野では寧ろ盛り上がっていたり、アクロスさんのようなクオリティの高いウェブマガジンもありますので、そんなに悲観はしていません。ただ私が思う当店の役割としては、“雑誌のいま”を追い求めるよりも過去のアーカイブを紹介する事だと思っています。これまでの紙の雑誌を、コレクター向けの骨董品にはしない形でなるべく多くの人に継承し、その上で未来の雑誌文化に繋げていけるような店でありたいと思っています。


気さくで優しい店主の中武さん。

神保町は、昔から文化的磁場の強い街

ーー最近来店されるお客様の傾向は?
 
中武さん:男女問わずお若い方々が増えました。そしてやはり、海外からのお客さまがとにかく多いです。
 
 
ーー最近よく売れる雑誌、お問い合わせが多い雑誌を教えてください。
 
中武さん:90年代くらいの日本のストリートファッション誌でしょうか。主に『FRUiTS』のようなスナップ雑誌。その他、『POPEYE』については70年代のものから最近のものまで幅広い年代のものが売れています。
 
 
ーー16年で神保町の街に変化はありましたか?
 
中武さん:昔から文化的磁場の強い街であり、マニアックな人々が日本中から集まってはいましたが、近年は観光地としても栄えているかと思います。レトロな喫茶店やカレー屋はこれまでもお客さんで賑わっていましたが、今では必ず行列に並ばないと入れなくなりました。

 

ーー中武さん的、神保町の面白いスポットやおすすめの過ごし方は?

 
 個人的にもう長いこと“神保町イコール自分の店で仕事”になってしまっているので最新情報には疎くなってしまっています。それでも敢えて言うなら、古本探しは色々なお店をまわるのがもちろん楽しいですが、 駿河台下交差点近くの東京都古書会館で催されている古本市もおすすめです。東京都古書組合、つまりは神保町その他の古本屋さんのグループが、月に何度かの日程で一般客でも入場できる即売会をやっているのです。価格的にも当然魅力的ですが、古書のプロとマニアたちの生み出す熱気が、ここでしか味わえない体験になるかもしれません。ちょっと敷居が高く感じられるかもしれないし、実際に、興味本位だけで覗くには配慮が必要な空間かと思います(もちろんそもそもはそれぞれの古書店にも配慮が必要なのですが)が、スケジュールを調べて是非いつか挑戦してみてはと思います。
 

移転を知り放課後に急いで駆けつけたという高校生(写真左)。メルボルンより旅行中の2人は3度目の来日で神保町を新規開拓(写真右)。
メルボルンから来た2人が購入した「POPEYE」。決め手は表紙のかわいさ。

過去と現在、そして未来の文化を繋ぐ「マグニフ」と「神保町」


古くから続く古書店や文具店、喫茶店が軒を連ねる一方で、ヒップな音楽バーやカフェ、古着屋など、新しいカルチャーの息吹も感じられる神保町。
その両方が共存するこの街は、単なる「本の街」ではなく、文化が更新され続ける場所でもある。

英国発のシティガイド/カルチャー誌『Time Out』が、神保町を2025年「世界で最もクールな街」ランキングの第1位に選出したことは、こうした文脈が国外にも共有されつつあることを示しているだろう。
今回の不定点観測では、海外からヴィンテージグッズを求めて訪れる人々や、ファッションや美術を学ぶ若者など、新たに神保町の魅力に惹かれた来街者の声を聞くことができた。

「移転する前になにか買おうと思って、学校終わりに急いで来ました。『マグニフ』は神保町に来たら絶対寄るお店。ファッション誌やアメカジ系、アフリカに関する雑誌を買ったこともあります。」
(17歳/学生)
「知識がないと古本屋さんは入りづらいと思っていましたが、店主さんも気さくな方でした。」
(27歳/モデル)
「『マグニフ』の存在は知らなかったのですが、通りを歩いていて80年代や90年代の古い雑誌が目に入ったので来店しました。自分はグラフィックデザイナーなのでレイアウトを見たり学ぶのが好きです。」(
31歳/グラフィックデザイナー/シンガポール在住)
「70年代から80年代の当時のトレンドが垣間見えて良かったです。」
(30歳/公務員)

10代から20代の若者にとって、かつての雑誌に映る人々の姿は新鮮で、どこか刺激的で格好良く映るという。月刊誌というフォーマットだからこそ、“その時代”を切り取った空気感が色濃く残り、読者は当時へとダイブするような感覚を味わえるのだろう。

過去と現在、そして未来の雑誌文化をつなぐ場所として、「マグニフ」はこれからも神保町で、雑誌というメディアを通して私たちの文化をアーカイブし続けていく。




《新店舗住所》
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-17 東京堂神保町第1ビルディング2階

電話 03-5280-5911
※2026年1月24日より移転先でリニューアルオープン

店内には世界中から集められた雑誌のアーカイブが所狭しと並ぶ。
 【取材・文・撮影・編集:中矢あゆみ・須賀麻結(『ACROSS』編集室)/インタビュー協力:井上みつき】


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