定点観測
2004.07.03

#283 | 実施日 : 2004.07.03 | 最高気温 : 29.5 | 最低気温 : 19.1 | 天候 : 晴れ

283定点観測・解説


■2004年7月3日(土)実施:女性サンダルうち、トングサンダル

梅雨の中休み。セール立ち上がり後初の週末となった第283回めの定点観測。今もっとも“ど真ん中のトレンド”として浸透しているアイテム、「トング・サンダル」に注目した。

夏の女性の足元といえばサンダル。というのは、一見常識なようで、実はストリートファッションの歴史からみると、オフィシャルな場所でも公認の定番アイテムになったのは、90年代を経てからのことである。ましてやカカトのないデザインの「ミュール」が市民権を得たのは94年以降のこと。02年にはとうとう30℃を越える夏日にも関わらずブーツを履く若い女性が台頭するなど、サンダルもブーツも、季節とは関係なく、靴のデザイン・種類のひとつへと意識が変化していることがわかるだろう。

また、計283回の定点観測調査から取り上げたアイテムの変遷を振り返ると、「JJ」→「スポーツルカジュアル」→「グランジ」→「コギャル」→「ギャル」→「エスニック」→「ナチュラル」→「モード・ミックス」とその時々に台頭するストリートのトレンドが変化していることも確認できる。

*1980年8月以降、計283回の定点観測調査の結果から
・83年6月4日:ぺたんこサンダル
・93年5月8日:サンダル、うち+靴下
・93年6月5日」サンダル、うち平底サンダル
・94年6月4日:サンダル、うちミュール
・95年5月10日:サンダル、うちオープントゥサンダル
・97年5月10日:サンダル、うち厚底サンダル
・98年5月9日:サンダル、うちレースアップサンダル
・98年7月4日:ブルーデニム、うち+サンダル
・99年6月12日:サンダル、うちスリッパ・サンダル
・00年3月4日:ミュール
・2年7月6日:夏のブーツ
・02年8月3日:サンダル、うちぺたんこサンダル
・03年6月7日:サンダル、うちトング・サンダル
・04年7月3日:サンダル、うちトング・サンダル

さて、今回取り上げた「トング・サンダル」は昨年と同じである。これは、00年以降のトレンドの傾向が、ひとつのトレンドが2年がかりで浸透する「反復現象」となっていることを結果的に立証することとなった。
たとえば、欧州のコレクションで発表された来年のトレンドを東京の一部のファッションアディクトたちが発表年に即着用する。季節が変わり、そのなかからいくつかのトレンドがより多くの人に支持されることで、翌年マスを越えたメガ級のトレンドになる。ちなみに、2年めがボリューム化する背景には、20代後半や30代、40代といったストリートから少し遠い“大人の女性”が多く含まれるのは言うまでもない。

この「トレンドの反復構造」を実際の支持率を比較してみてみよう。

                   2004年7月3日    2003年6月7日
●女性サンダル着用率           40.1%          34.4%
 ・うち、トング・サンダル着用率     11.3%           6.0%

3地点平均で比較すると、サンダル着用率は5.7ポイント、トング・サンダル着用率は5.3ポイントも増加。サンダルの約4分の1がトング・サンダルという結果になった。地点別にみたトング・サンダル着用率の比較は、順に原宿(9.3ポイント)、新宿(4.7ポイント)、渋谷(2.9ポイント)。いずれもカラフルなペディキュアとセットで女っぽい足元を演出する女性が目立った。

d数が増えたぶん、色やデザイン、ヒールの形状などはかなり豊富にっている。一見カジュアルな印象のトング・サンダルだが、今年は色がポップだったりスケスケビニールだったり、ビーズやスワロフスキーなどのビジョーが施されていたり、ちょこっとヒールがあるなど、ほどよくエレガントで女っぽい雰囲気のものが多い。なかには、ビーサンなのにカラフルでちょこっとヒールのあるものも!おそらく、今春の根底にあるトレンド、いろんなデザインやアイテムでオンナっぽさを演出したい、という気分を反映しているのだろう。

もうひとつ忘れていけないのが、今春は男の子のサンダルがかなりマス化していること。カジュアルなものだけでなく、欧米の正統派靴メーカーからもエレガントなレザーサンダルが多数出ており、幅広い年齢層に支持されていた。

一方、ビルケンシュトックやそのセレクトショップによる別注のものなど、履きやすくらくちんなのに、“ど・カジュアル過ぎない”ものも増えている。たとえば、足型はビルケンシュトックなのに、アッパーはノーズが長めとか、ビーズやラインストーンが施されているなど、テイストをミックスするようなアレンジが加わっているようだ。

00年以降トレンドがよみにくくなったといわれているが、それは前述した「トレンドの反復現象」が大きく影響しているといえそうだ。ひょっとすると、「ニワトリが先かタマゴが先か」じゃないが、作り手側と消費者の双方が新しいトレンドに飛びつくことに二の足を踏んでしまい、昨年支持された安全なトレンドに少しだけアレンジを加えるだけ、と保守的になってしまった結果なのかもしれない。

しかし、その「反復」されている中身をよく見ると、「定番化」した商品を、少し前は一部の人がカスタマイズしていたが、今はそのカスタマイズされたものが欲しいという消費者が増えため、商品化されるようになった。つまり、より消費者の欲求が深くなったともいえそうだ。

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