第339回定点観測(2009年3月7日実施)
レポート
2009.03.19
ファッション|FASHION

第339回定点観測(2009年3月7日実施)

カウントアイテム(もっともマス化しているアイテムやスタイル):女性ミニ丈ボトムス、うちひらミニ

ミニ丈は今春ピークに。

 2月下旬から続いた悪天候から一転、久しぶりの晴れとなった2009年3月7日(土)の定点観測。いつも通り、学生や社会人で構成される外部スタッフとカメラマン計14名で実施した。

 さて、前回は数年間かかって定着したムートン素材の多様化とブーツの多様化を再確認した<2000年代の秋冬の集大成>となった定点観測だったが、今回は、ここ数年続く<ミニ丈ボトムス>の流行がピークである現状と、今春夏も継続するか否かを検証したいという仮説をもって、「女性ミニ丈ボトムス、うちひらミニ」をメインの注目スタイルとした。

 今回のミニ丈ブーム、いったいいつからかなのかと定点観測を振り返ると、2006年に「ヒザ上丈ボトムス+ブーツ」として取り上げて以来、徐々にその丈が短くなっていることがわかる。一方、「ひらミニ」の系譜としては、2001年に「ふんわりスカート」、2003年に「シフォン系スカート」、2004年に「うす軽スカート」というように、女らしく、フェミニンでエレガントなシルエットと素材の支持が高まり、05年、06年とセレブブームに乗っ取って、ゴージャス感がプラスされ、「ミニ丈のドレス」へとバージョンアップしていった。

 その後、ミニ丈ボトムスは、07年秋冬〜08年春と、シフォン系/サテン系/レーヨン系/ポリエステル系の、薄くて軽い素材のミニ丈スカートやキュロットへと進化。その背景には、ミニ丈のワンピース/ロング丈チュニックという、トップスなのかワンピースなのか分からない<曖昧な/ツーウエイなアイテム>の人気の高まりが大きく影響しているのも重要なポイントといえるだろう。その多くは柄もの。今回かなり増加していたティアードのミニスカートや、フレアシルエット、バルーンシルエット、プリーツなど、ふわっと腰部分だけ膨らんだ王子様のようなシルエットが形成されており、いよいよ今春はシルエットが大きくボリュームのあるものへと変化しそうな兆しを確認した調査となった。


以下に各地点の今回の特徴をまとめたので参照してほしい。

渋谷地点

■まちのようす:久しぶりの晴れということもあり、先月よりも軒並み通行量が多かった3月7日の定点観測。なかでも渋谷は124.8%ともっとも高い結果となった。街を行き交う人のファッションも一気に重衣料からライトアウターへとシフト。もこもこウールやダウンよりも、コットン素材やニットのカーディガンを羽織るだけ<脱冬>を感じさせるファッションの人のほうがオシャレに感じられた。
春休みということで、ガイドブック片手の地方からの来街者や中国・韓国等からの観光客も目立った。また、花粉症対策としてピンクやグリーンのカラーマスクをする人も見られた。
また、ここ数年増えているカップルは手を繋いでいるシーンを多く見かけた。

■女性ミニ丈ボトム、うちひらミニ:「ミニ丈ボトムス」の着用率は14.7%、「ひらミニ」着用率は6.3%と3地点中もっとも少ない結果となったが、ヒザ上10センチ以上という定義よりはやや長めの「ヒザ上丈」のデニムスカートやシフォン系のスカート、ティアードスカートはかなり浸透していた印象を受けた。
ジャケットやニットアウターからチラリと見える程度のペチコートっぽいものや、ハイウエストのミニスカートやアウターの上からベルトをオンしたスタイルも浮上。合わせる足下も、レギンスまたはタイツ長かった<ゆるふわワンピース>から確実にシルエットが変化しているようすが伺えた。

■男性・ロールアップ: 20代〜30代、40代と幅広い層で見られた<男子のロールアップ>スタイル。もっとも多かったのは、シャツにパンツというトラッド/アメカジベースのきれいめなファッションの人に多く、足首を見せ、デッキシューズやローテク系のスニーカーなど、決してポインテッドトゥではないローファーを合わせて、<脱力系のソフトトラッドスタイル>を形成していた。
30代(ヘタウマ世代〜団塊ジュニア世代)には太めのデニムやチノパンツにマウンテンブーツというアウトドア/スポーツに倒したスタイルが人気で、20代には、ケミカルウォッシュのデニムやクラッシュ・デニムなどトレンドのロックテイストのスタイルとなっていた。

■バッグ・アクセサリー: ちらほら見かけた制服の女子高生や小中学生にはスクールバッグにケアベアやミッキー、ミニーなどが二体、三体。ひょっとして私服時にも付け替えている(もしくはバッグは変えてない?)と思われるほど、小さいぬいぐるみ類を付けるのが流行っていた。
梨花が愛用していることで人気急浮上となったスージーズーのブーフやディズニーシーのダッフィー、定番のミニーなどは『sweet』や『PS.』『Vivi』などを読むような20代の女子にも大人気。
一方、20代、30代には携帯ストラップのような小さめのアクセサリーが多く、よく観察すると、携帯のストラップをバッグの外に出していることが判明。また、エレガンス系OLや40代のマダムに多かったのは、ヴィトンやコーチなどのブランドバッグに同じブランドのポーチのような小さいバッグのセット持ち。また、ストリート系の子には大きめの缶バッチなども人気だった。

■マス化していたアイテムやスタイル:ショートパンツ、大きめのバッグ、リュック、メッセンジャーバッグ、男子のハット、ライダースジャケット、カラータイツ、ボブヘア、女子の黒縁眼鏡など

■今後増えそうなアイテムやスタイル: マカロンカラーのアイテム、女子のベリーショートヘア、女子の金髪のショートヘア、金銀スニーカー、変な柄のリュック、ヌーディーカラーのアイテム、女子のシャツスタイル、民族調(メキシカンまたはアンデス調)のマキシスカート、ローテクスニーカー、女子のジャケット、ウエストベルト、リボンモチーフのアクセサリー、大ぶりピアス、巾着型バッグ、太めのバングルなど

原宿地点

■まちのようす:久しぶりにヨーロッパ系の外国人観光客が目立った原宿地点(築地までの行き方を聞かれた!)。表参道のGAP前は、『メンズナックル』の撮影に集まったギャル男で賑わっていた。ラフォーレ原宿の店頭がカラフルだったのとは対照的に街は黒い装いの人が多かった。ギャル男はもちろん全身真っ黒だが、中には全身ショッキングピンクでメイクをしているフシギ・メンズの姿も。90年代後半にピカチューの着ぐるみを着た男女のガングロ系のトライブを彷彿させた。


■女性ミニ丈ボトム、うちひらミニ: スカートやパンツだけでなく、チュニックやロング丈Tシャツなど、ミニ丈バランスは約31.0%と3地点中もっとも高かったのは、やはりティーンズ〜20代前半が多い原宿地点ならでは。デザイン別にみると、もっとも多かったのはデニムのミニスカート/パンツ+黒または茶のレザーブルゾンというコーディネート。次にシフォン系のふわふわ/ひらひらのガーリーな素材のミニスカートを履く女子が多く、ギャルや『NYLON』『FRUiTS』系のモードっぽい子は、青などのカラーサテンのティアードスカート、『Cancam』系の子はツイードっぽいグレーの5、6段の細かいヒラヒラのティアードスカートを着用していた。
また、ピンクやグリーン、イエローなどのパンプスやタイツなどカラフルなアイテムも目立った。

■男性・ロールアップ: もっとも多かったのはパンツの丈を調整する程度のちょいロールアップ。足首を見せるスタイルは先月に比べると若干減っており、代わりにアーガイルなどの柄ソックスを見せたり、ヘンプなどのアンクレットをスタイルが目立った。興味深かったのは、最初からロールアップしたような中途半端丈のパンツが急増していたこと。シルエットも多種多様だったが、比較的太めのルーズなものが目立った。

■バッグ・アクセサリー: ふだんの原宿では専門学校生やストリート系の男女のリュックに缶バッチやキーホルダーをたくさん付けたスタイルを多く見かけるが、今月はやや少なめ。中高生はキャラクターのキーホルダーや幼稚園の名札のようなものを付けていた。トーキョーモード系の男子は、バッグにステッカーを貼りまくっていたり、ギャル男はキャップを、サロンボーイ系はヘッドホンをバッグに下げていた。また、スイカやパスモのカード入れ(定期入れ)として使えるぬいぐるみのような大きなモチーフを付けている女の子も多かった。

■マス化していたアイテムやスタイル:レザーブルゾン、リュック、ベレー帽メンズ(チェ・ゲバラっぽい)、ミニ丈+レギンス、小さめのバッグ、ティアードスカート、水玉柄など、

■今後増えそうなアイテムやスタイル:カラフルスニーカー、シャカシャカアウター、オールインワン、カットソーワンピース、トートバッグ、太いベルト、マッシュボブ、カラーパンプス、ケミカルウォッシュのデニム、ロングスカート、ノーカラージャケットなど

新宿地点

■まちのようす:上京したばかりの新・東京人がお父さん、お母さんと連れだって歩いている光景が目立った09年3月7日の新宿地点。卒業式だったと思われる袴姿の女の子も。また、カップルも増えており、男性はダウンジャケットを着ている人も少なくなく、まだまだ冬の装いだったが、女性はコートを脱ぎ、ジャケットだけや足首を出してパンプスを履くなど春らしい雰囲気が感じられた。

■女性ミニ丈ボトム、うちひらミニ: おそらく09年3月がMAXでは、と思われるほどミニ丈ボトムスは多く、なかでも柄ものが幅広い年齢層に浸透していることが確認された。もっとも多かったのは小花柄のひらミニスカート。07SSに浮上したD&G風の茶色ベースの花柄に加え、青地や白地のものも浮上。レザーブルゾンと組み合わせたボヘミアン風のコーディネートが『PS.』系や『sweet』系の子に人気だった。
チェック柄のカラフルなひらミニもマス化しており、ティーンズにも浸透(そういえば制服もチェックのミニ!)。OLさんにはティアードのひらミニまたはワンピースが人気で、アウターの前を開けたスタイルでインナーの春らしさをちら見せするスタイルが多かった。

■男性・ロールアップ: 大きく分けると2つのタイプに分類することができる。ひとつは、色落ちジーンズやチノパン、ヒッコリーなどの太めのパンツをロールアップし、ジャックパーセルやスリッポン、デッキシューズなどの短靴か、足首までのレザーレースアップシューズの<ソフトトラッド系>=草食系男子=クリエイティブクラスな男子たち。
もうひとつは、ロールアップしたような丈のクロップトパンツに派手派手のハイカットスニーカーでデカリュックにシャカシャカアウターの<スポーツカジュアル系>。ヘアスタイルも、前者はボブ男が多く、後者はボウズが多い。

■バッグ・アクセサリー: 予想していたよりずっと子どもっぽいのにびっくり。もっとも多かったのはクマのぬいぐるみで、共通するのはマイクロファイバー素材の柔らかい形状のパステルカラー。ディズニーシーのダッフィーやケアベアなど、携帯電話に付けるチャームのよう。一方バッグは、コーチやコーチ風のモノグラムやパッチワーク風のデザインが多く、横長のボストンバッグにはネックレスのようなチェーンを付けていたり、大きなショルダーバッグにはポンポンが付けられていたりと、レザーやブランド系のバッグにチープなモチーフを付けるスタイルも目立った。

■マス化していたアイテムやスタイル: レザーブルゾン、チェック柄、長めの丈のシャツ、水玉柄、ストライプ柄、クマのぬいぐるみ、三日月型のレザーバッグ、細いカチューシャ、ボブ、ダメージ加工、ロングカーディガンなど

■今後増えそうなアイテムやスタイル:ジーンズ+パンプス、マキシ丈スカート、グラディエーターサンダル、ドレスジャケット、トレンチコート、全体的に白っぽいコーディネート、ハイカットスニーカー、明るいヘアカラーなど


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