ARの可能性を探る実証実験@渋谷、スタート!
レポート
2010.02.11
カルチャー|CULTURE

ARの可能性を探る実証実験@渋谷、スタート!

総務省とソフトバンク、ARコモンズらによるARの実証実験実施中 〜3月10日まで

99年の渋谷の「上質なフツー」系のカップル。
サブカル全快だった90年代のストリートファ
ッションが出尽くした後に台頭した。2010年
のトレンドとしても参考になる。
86年のボディコン(ボディコンシャス)ファ
ッションの女性。大ぶりのネックレスや太い
ベルトでウエストマークするスタイルは2009
年の春に少し台頭した。改めてファッション
のトレンドが繰り返し(サイクル論)である
ことがわかります。
本プロジェクトでは、ARに関するアンケー
ト調査も実施。回答してくださった方先着
500名様に、渋谷パルコで使用できる500円分
のグルメチケットを差し上げています。
iPhoneをお持ちの方、または家族がお持ち
の方は、せっかくですので渋谷でARを体験
してみては。
NHKさんの取材に対応する岩渕慶応大学教授。
 2月9日の夜8時45分からのNHKニュースで既にご存じの方も多いかもしれないが、2月9日、総務省主管による、「ARの実証実験プロジェクト」が渋谷でスタートした。

 AR(*1)とは現実空間にさまざまな電子情報を重ね合わせて表現する技術で、幣サイトでも昨年、AR三兄弟によるイベント「AR会議@下北沢」を取材し記事にしているが、なかでも、iPhone(アイフォーン)などのモバイルデバイスのカメラ映像に、インターネットの情報を付加するサービスへの注目が高まっている。この技術の将来性について、多方面でさまざまな実証実験が行われるなか、今回は、総務省からソフトバンクテレコム株式会社が受託した「ICT(情報通信技術)利活用ルール整備促進事業(サイバー特区)」プロジェクトの一環として、多くの人に実際にARを体験してもらうことを目的に、ARを使った情報提供やARG(代替現実ゲーム)などを行う「SHIBUYA COLLECTION 2010 SPRING、Augmented Reality Showcase @Shibuya Tokyo 〜見上げてごらん、渋谷の空を〜」を紹介したい。
 
 というのも、手前ミソで申し訳ないが、プロジェクトメンバーのひとりである、慶応大学政策・メディア研究科の岩渕教授らによる任意団体、ARコモンズ(*2)が中心となり、株式会社ソフトバンクテレコムらと渋谷でARの認知度やサービスの許容度などについてアンケート調査を実施しようと、さまざまな企業や文化施設、メディアの参加を呼びかけたなか、文化的且つ学術的価値のあるものとして、『アクロス』編集室にも声がかかり、コンテンツ提供ということで協力しているのである。

 具体的には、iPhone上で動作するARのソフトウエア、セカイカメラをプラットフォームに、今年30年目となる定点観測のストリートファッションの写真をはじめ、過去の渋谷の風景の写真等のコンテンツをアップロード。つまり、渋谷パルコを中心に、公園通りやセンター街、神南などの「AR空間」に、既に約200点のストリートファッションのアーカイブが誕生しているのである。

 この「AR空間」とは、「VR(バーチャルリアリティ)」とは対極にあるもので、肉眼では見えないものの、実際に、例えば、渋谷パルコ・パート1の周辺に行き、セカイカメラを起動させて空にかざすと、肉眼では見えなかった昔のストリートファッションの写真が、iPhoneを通して可視化される。つまり、「リアル=現実」に存在するものなのである。

「93年! 僕は大学生で毎日のように渋谷で洋服買ってましたね〜」(30代前半・男性・広告代理店勤務)
「ビームスのタイムカフェ、よくランチ食べたなあ〜」(30歳・女性・ショップスタッフ)
「お、86年はボディコン、いいねえ」(45歳・男性)

 9日の朝10時半から実施したAR実証実験ツアー(岩渕教授やソフトバンク、慶応大学院生、早稲田大学生など、関係者や学生で渋谷の街を回遊し、エアタグを確認した)では、エアタグによる昔の写真を通して、それぞれが想い出に黄昏れるひと時を提供する結果となっていた。

 他にも、セカイカメラを開発した頓知ドットは、ビクターエンタテインメント、バグ・コーポレーション、ソフトバンクテレコム、東通インテレクトの5社は「渋谷で恋するメッセージ実行委員会」を設立し、胸キュン・ガーリー・ハウス・ユニット「Sweet Vacation」とのコラボレーションによるバレンタインにぴったりのイベントを開催。渋谷のヤマダ電機のそばの「恋文横町」周辺のAR空間では、ピンク色のハートが密集してぷかぷか〜。まるで、マークジェイコブスのハートが重なりあうように表面に敷き詰められたバッグのよう!

 ルーセント・ピクチャーズエンタテインメントは、早川書房と共同で刊行したSFアートブック『Sync Future』の発売を記念し、実施の渋谷の街に点在するARのイラストを探し出すARG「前田真宏監督が怒っているので助けてください」というゲーマー心をくすぐるイベントを開催。信じられないほどの数の「怒」の文字が、現在AR空間に浮いており、「怒マークがいっぱいでこわい!」や「文字が大きくなったり小さくなったり生き物のようで面白い」という声も。

 また、東京ワンダーサイトで開催中の展覧会「フランス/日本:大学間交流プロジェクト『DOUBLE VISION』の映像におけるフィクション/リアリティ」に関する情報なども開催されている。

 それにしても興味深いのは、こういったデジタル&最先端技術の実証実験の場所というと、新宿でも丸の内でも六本木でもない、渋谷という街が選ばれている点だろう。実は、昨秋より、経産省主幹により、東京急行電鉄やNEC、国立情報学研究所、東急エージェンシーらと実施している「pin@clip ピナクリ」(実は『アクロス』では11月に実施した定点観測の写真のみでユーザーの1人として参加しており、アクセス数も高かったそう)なども開催されている。3月初旬までの渋谷の街のAR空間は大変な混雑になりそうだ。

 また、先日吉祥寺パルコで開催し話題となったアニメーション映画『東のエデン』の物語世界にあったARシステムを「AR三兄弟 」が現実世界に完全移植。会期中は、そのARシステムを実際に体験できるほか、2月14日の14時からは、渋谷パルコ・パート1・8Fの特設会場でAR三兄弟による実演も行われる予定。iPhoneを持っている方はもちろんのこと、持っていない方でもARを楽しめるライブ・イベントも開催される。

 なお、この実証実験の結果をふまえ、3月10日(水)には、慶應義塾大学三田キャンパスにてシンポジウムも行われる予定だ。




★用語解説:

(*1)AR:拡張現実。強調現実感。バーチャルリアリティと対になる概念。実世界から得られる知覚情報に、コンピューターで情報を補足したり、センサーによる情報を加えて強調したりする技術の総称。医療の現場や交通事故防止、災害時の避難誘導、商業施設やイベント会場でのマーケティング情報デザインなど、多彩な分野での利用へ向けて、具体的なサービス展開が検討されつつある。

(*2)AR Commons:
慶應義塾大学の岩渕潤子政策・メディア研究科教授、加藤文俊環境情報学部准教授、IAMAS(岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー)の赤松正行教授らが中心となって、2009年6月に発足した非営利の任意団体です。その活動は、我々が暮らしている現在の社会インフラの中で、情報技術を活かした新たなサービス提案を行うプラットフォームとしてのAR(Augmented Reality)技術を検証し、快適に利用するための自主的なルールづくりを目的としています。



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