わかりやすいコミックやゲームをアイデアの素材にして、それをARの技術で遊んでみせる彼らの作品は、PCやウェブカメラなどの一般的な機材を使い、
「Twitter」、
「NENPYO(ネンピョー)」といった既存のサービスをマッシュアップして作られている。特殊な、あるいは大掛かりな装置は使われていないので、ライブハウスでもイベントが開催できるというわけだ。今、携帯メーカーや広告業界、コンテンツメーカーなど、官民いずれもがARに関心を抱く世の流れから少し外れたところで遊んでいるようなところが面白い。
三兄弟の長男、川田十夢さんに話を聞いた。
「この『AR紙芝居』なんかも、自分で作っていて楽しいんですよ。マジックで書いた絵がボコッっと出てくると、作った自分でも『おおっ』となったり(笑)。手書きとウェブ、真逆のことが繋がる楽しさがありますね。
先日参加した
『TechCrunch Japan(テッククランチ ジャパン)』のイベント
『東京Camp』でも、紙芝居や野球盤は海外の参加者にすごく面白がってもらえました。日本にしかないオリジナルなものだからなんでしょうね。
僕らのように、できあがった技術を組み合わせる“マッシュアップ”って、ウェブを含めてメーカー系にはあまりない概念なんです。モノを作るのも、組み合わせるのも全て自分たちで賄おうとするところがありますが、今は、ウェブの世界ではそういう枠が関係なくなってきつつあります。メーカーさんがそのあたりに気付くようになってくると、もっと面白いですよね」(川田さん)。
「AR三兄弟」の活動は、長男の川田さんと、ファッション系に強いという次男の高木伸二さん、音楽も開発もてがけるという小笠原雄さんの3人がメンバー。彼らはいずれも
「ALTERNATIVE DESIGN++(略してXXX)」というクリエイティブ開発チームとして活動する、
JUKIゼネラルサービス(株)の社員でもある。彼らはミシンの部品を発注するウェブシステムを開発したり、海外で行われる展示会ブースのプロデュースなどに携わり、プロモーション映像で使う曲やサウンドトラックなども、全て自分たちで作ってしまうという。国が予算を投じるICT事業にも参画するなど、ハードメーカーの中でテクノロジーとカルチャーを結びつける仕事を幅広くこなしている。
実は、
「ALTERNATIVE DESIGN++」では、
「Creative Commons(クリエイティブ・コモンズ)」主催のミュージックビデオコンテスト『音景』の小山田圭吾賞、アドビシステムズ「Adobe Records」のアートコンテストでインタラクティブ・アート部門 優秀賞&ミュージッククリップ部門 秀賞を受賞するなどの実績もあり、「Adobe Records」の受賞作品はCD化もされた。
「これらの作品では、技術的には
『AR三兄弟』の作品よりもっと凄いことをやっているものもあります(笑)。こういうものもいずれ
『AR三兄弟』の活動の中で見せていければと思いますね」(川田さん)
「先日、
『頓知・(とんちどっと)』のCEO井口さんが『AR行為』という表現をされていたんですが、例えばタギングする行為って、まだまだフツウの人から見たら怪しい行動じゃないですか。携帯で写真を撮るのも以前はそうでしたし。
でもその異様さは、おそらく来年、再来年になるとどんどんあたりまえの行為になって薄れていくと思うんです。そうなる前の“なんか奇妙だね”という感じを、イベントの“演目”として行うことで残しておくのが面白いと思うんです」と川田さんは語る。
これから多様な対応アプリやハードやサービスが開発され、一気に普及が進みそうなARだが、その普及前夜といえる現在の空気を遊びながら感じることができるのは今しかない。イベントに参加すると、“AR家族”限定Tシャツがもらえるそうで、イベントに参加していち早く“AR家族”の一員となっておくのも面白そうだ。
[取材・文:本橋康治]