グラフィックを学んだ30代以上の人にとっては“神”ともいえる、デザイン集団TOMATO(トマト)のエキシビションが、まさか弊社の運営するパルコミュージアムで開催される日が来るとは予想していなかった。
企画展のタイトルは、「THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”」。期間は3月12日(土)から4月3日(日)、会場は、①渋谷パルコ パート1 4Fのパルコミュージアム、②地下1Fの「ギャラリーX(X)」の2会場だ。
12日夜、同イベントのレセプションと、渋谷パルコパート3屋上(ルーフトップ)で行われたアンダーワールドによるサイレント・ライブに行ってきた。

実は、これは、東京ファッションウィークに関連して、渋谷界隈の商業施設やブランド、商店街などがいっしょになっていくつものイベントを企画・実施する「SHIBUYA FASHION WEEK」のひとつ。前回は「渋カル祭」が開催されていた枠組みだが、今季は、NYのマダムたちの自由な生き様が装いに現れたスナップが映画化され話題になった「アドバンスド・スタイル」の写真展の第二弾「世界のマダムのおしゃれスナップ展」が西武渋谷店の特設会場で開催されたり、Hikarieでは、レストランで特別メニューが企画されたり、109MEN’Sでは、GENERATIONSのポスターが当たるプレゼントキャンペーンが企画されるなど、かなりバラバラになってきたようだ。

ところで、筆者がTOMATOを最初に知ったのは、1996年にシネマライズで上映され大ヒットした映画「トレインスポッティング」のグラフィックと、映画のなかに用いられていたTOMATOのカール・ハイドとリック・スミスはエレクトトニック(テクノ)ミュージック・グループ「アンダーワールド」の音楽だった。同映画は、他にもイギー・ポップやブライアン・イーノ、プライマル.スクリーム、ニューオーダー、そしてブラーなどが参加するなど、世界中でテクノミュージックやDJ・レイブカルチャーが流行していた当時、今でいう「アナと雪の女王」級のメガヒット。いわゆる“ヒップ”な映画として世界中の若者を魅了したのである。当然、当時紙だった『流行観測アクロス』でも取材している。今では巨匠とも呼ばれる映画監督・プロデューサーのダニー・ボイルや、最近映画監督も行っているユアン・マクレガーの出世作というと分かる人もいるかもしれない。
映画は、改めて観ると、いわゆる不景気を背景とした英国スコットランドのドラッグ中毒だった若者たちの日常と克服までを描いたいわゆる青春映画なのだが、そのトリップ感のグラフィックデザインやモーフィングのセンスがクールで、グラフィックやタイポグラフィー、CGなどを学ぶ学生も急増。自分たちでデザインしたシルクスクリーンプリントのTシャツをつくったり、フリマや路上で売ったりする若者も少なくなかったのを思い出す。

そんな、とっても90sでストリートカルチャー全盛の時代に青春を過ごした今のアラフォー(中心は団塊ジュニア世代)で会場はいっぱい。映画「トレインスポッティング」は、3月18日~21日がシネクイント(渋谷パルコ PART3・ 8F)で期間限定上映されることも決定。また、「THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”」の映像作品(初公開)としてショートフィルム『The Film Show TOMATO KINO O』も上映されるそうだ。


「このTOMATOのトートバッグ、欲しいと思って展覧会に行ったら、もう売り切れてました、、」。
後日コレクション会場で文化学園大学非常勤講師の菊田琢也先生。ふと、作家や展覧会の空気感がモノとして持ち帰ることができる、または身に付けることができる、というファッション・カルチャーの価値観が一般化したのも、90sストリートカルチャーの時代を経てのことかもしれない。[取材/文:高野公三子(本誌編集長)]
*公式スケジュールのファッションショーのレポートはこの後に続きます。。
会 場:パルコミュージアム(PART1・3F)
※入場は閉場の30分前まで、最終日は18時閉場