talk and come again(トクガワエン)
レポート
2015.09.25
ライフスタイル|LIFESTYLE

talk and come again(トクガワエン)

東京のストリートシーンで人気のナタリーさんによる
“駄菓子屋のおばちゃん現代版”コーヒースタンド


こだわりの1杯をハンドドリップで提供する“スモールカフェ”については、幣誌でも何度か取り上げてきたが(詳細は、The across vol.0『スローコーヒー、スローライフ。少しだけ上質なライフスタイルを求めて』をどうぞ)その後、2015年2月のサンフランシスコ発のBlue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)が上陸し、行列ができるなど、サードウェーブコーヒーのブームは本格的になってきた。

そんな中、2015年3月、“人々が集える駄菓子屋のような店”がコンセプトのコーヒーショップがオープンした。場所は千駄ヶ谷、店名は、「talk and come again(トクガワエン)」で、地域の新たなコミュニティの場となっている。

オーナーは、フランス生まれで愛知県育ちのヨシミ・ナタリーさん(28歳)。これまで、渋谷や原宿のイベントやアパレルショップにて出張コーヒースタンドを出店する他、インターネットラジオblock.FMの番組「TONY」のMCを担当、また、バイシクルカルチャー誌『LOOP magazine』にて連載ページを持つなど、東京のストリートシーンで様々な活動をしてきた人物だ。

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母国語は日本語だというナタリーさん。軒先には「I'm almost Japanese」と書かれたチャーミングな看板が
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ドリンクのメニューは、「Tokugawaen」(カフェラテ)や、 「Kurofune」(エスプレッソ)、「Nobunagano」(アメリカーノ)など、日本の歴史から着想を得たユニークなネーミングのものばかり。 ※取材時より内容に一部変更あり
ナタリーさん自身が幼い頃に通った近所の駄菓子屋のように、“毎日いろんな人と接し、新しい出会いや、常連さんとの会話を楽しんだり、都会の喧騒を忘れて、大人も子どもも楽しめる空間を作りたい”との想いから「トーク・アンド・カム・アゲイン」を文字って、「トクガワエン」としたそうだ。ナタリーさんの祖母が愛知県岡崎市で経営するビジネスホテル「徳川園」がその由来だという。


ナタリーさんは、16歳の時にダンサーを目指し上京。カフェでホールスタッフのアルバイトを始めたのがきっかけで、コーヒーと深く関わることになったそうだ。

「私の担当はホールでしたが、ある日バーカウンターにも入らなくちゃいけなくなって、きちんとした指導も受けないまま、エスプレッソマシンを使ってラテを作ることになったんです。それが、全然おいしくできなくて・・。美味しいラテを作りたいとコーヒーと言えばスタバだ!と思い、「Starbucks Coffee(スターバックスコーヒー)」で4年間働きました。その後、コーヒーから離れて別の仕事をしていた時期に、「STREAMER COFFEE COMPANY(ストリーマーコーヒーカンパニー)」を見つけたんです。当時、スタッフとして働いていた加藤健宏さん(PADDLERS COFFEE・バリスタ)が淹れてくれたラテを飲んだら、めちゃくちゃおいしくて、感動して通い詰めているうちに、またコーヒーに触れたいという想いが強くなりました」(ナタリーさん)。

その後、3年間同店で修行を積んだというナタリーさん。自由な社風で、スタッフそれぞれの個性が同居するムードやお客さんとのコミュニケーションを楽しみながら働いていたが、「もっとひとりひとりのお客様と向き合いたい、大切にしたい」という気持ちから独立を決意したという。

とはいえ、開業に当てられる資金は数十万円しかなく、早々に店舗を構えるのは難しいことは明確だったため、屋台形式や車での移動販売をイメージしていたそうだ。しかし、どんなスタイルを採るにしても、マシンは必須。友人に勧められたクラウドファウンディングサイト「
CAMPFIRE」で、マシンの購入資金を募ることにした。

友人たちのSNSによる呼びかけや、まっすぐと夢に向かって突き進む誠実さとポジティブさを余すことなくまとめた文章と写真、更に英文も併記したその内容は多くの人の興味を引き、「
駄菓子屋のおばちゃん現代版!なっちゃんのおいしたのしコーヒー屋さん」と題したこのプロジェクトは瞬く間に話題となり、2014年9月1日から10月31日までの2ヶ月間に目標金額の2,000,000円を超え、435人のパトロンから2,196,500円を集めることに成功。イタリア産エスプレッソマシン「LA MARZOCCO(ラ・マルゾッコ)」を購入できたという。

「クラウドファウンディングの反響はすごかったです。沢山の人に知ってもらえて、すごくプラスにはなったけれど、他人からお金を募るという点で批判的な人もいました」(ナタリーさん)

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「LA MARZOCCO(ラ・マルゾッコ)」のエスプレッソマシン
その後、開業の手続きを進めるうちにコーヒーを屋台形式で販売することは保健所の規定により難しいことが判明。車での移動販売を選んでも、店舗を構えるのと資金的に大きな差はないと判断し、急遽物件を探すことに。当初は、奥渋谷や裏原宿などを中心に探したが、「20代」「女性」「初めての起業」という条件では、契約出来る物件が極度に限られた。最終的には、知人が洋服屋として入居していた現在の物件でスタートすることに決めた。

5坪程の店内は、ナタリーさんひとりが入ってちょうどよい広さのカウンターがあり、木製の簡易ベンチとテーブル、またオリジナルグッズが並ぶ棚が設置されている。入り口の面と、入って左手が大きな窓からは外から光がたっぷり入り明るい印象だ。


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レジの横に置かれたチップの入ったミルク瓶。海外からのお客さんも多いそうで、様々な国の種類のお金が見られた
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オリジナルのブレンド豆「TOKUGAWAEN BLEND」も購入できる
「“ここでやるしかない”という気持ちでやってきたというのが正直なところなので、ターゲットは特に決めていません」とナタリーさん。

外苑前、千駄ヶ谷、北参道、原宿。四方を囲むどの駅からも1キロ以上距離のある立地のため、客層は近隣の住民やオフィスワーカーやナタリーさんの友人が中心だが、SNSを通して知ったという外国人等も来店するそう。また、目の前が大通りということもあり、ドライブスルーのように車をつけテイクアウトしていく人も少なくないそうだ。

オープンから5ヶ月経つが、開店当初からリピーターが付き、中には、ナタリーさんとのおしゃべりを楽しみに散歩の途中に立寄るおばあさんや、小学生もいるそう。取材当日にも、店の前を通る常連さんが店内にいるナタリーさんに手を振り、ナタリーさんが「おはよう」と挨拶したり、開店早々近所のオフィスからやってきたグループに「いつもの?」と声を掛け、和やかな雰囲気で会話を交わす姿が見られるなど、日常の風景の一部となっている様子だった。

ドリンクメニューは最もオーダーが多いカフェラテ「tokugawaen」(ホット/アイス450円)をはじめ、エスプレッソ「kurofune」(350円)、アメリカーノ「nobunagano」(ホット/アイス400円)、モカ「john Mochajiro」(ホット/アイス500円)、キャラメルラテ「date Caramune」(ホット/アイス500円)など、ユーモア溢れるネーミングのメニュー全10種。また、代官山のベーカリー「TRE FLIP(トレフリップ)」のオリジナルのベーグル(プレーン320円/レモン400円)と、池尻大橋の「Boulangerie Bonnet d'Ane(ブーランジェリーボネダンヌ)」の食パンを使ったトースト(バター300円~)などフードも提供する。

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ナタリーさんをイメージしたというポップなデザインのイラストが楽しいホットドリンクのカップ
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コーヒーとも相性抜群な、代官山のベーカリー「TRE FLIP(トレフリップ)」のベーグルと、池尻大橋の「Boulangerie Bonnet d'Ane(ブーランジェリーボネダンヌ)」の食パン
豆は知人のロースターに、「キャラメルのような香ばしさと甘味と苦みのバランスのとれた味わい」とリクエストしたトクガワエンオリジナルブレンドを使用している。

マシンについては、「このマシンは車で例えるとフェラーリ!全部オートじゃないから、淹れる人によっても味は変わるし、ブレがあるところがいいんです。ブレがあると言うとあまり聞こえがよくないのかもしれませんが、気温や湿度による豆のコンディション、私のコンディション、そういうものと向き合いながら、毎日同じ味に仕上がるように、美味しくなるようにって淹れるのが楽しいし、おもしろい」(ナタリーさん)。

他にも、友人のデザイナーがデザインしたTシャツや、缶バッジなどのオリジナルグッズも販売している。

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ストリートテイスト溢れる店舗オリジナルの缶バッチ
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ナタリーさんの友人がデザインしたというオリジナルTシャツは白・黒・黄色の全3色の展開
今後の目標は、小さな規模でいいから、同じ場所で長くお店を続けていくこと。おせっかいでうるさいけど、いないと少し寂しいような“近所の駄菓子屋のおばさん”のような存在になりたいんです。田舎から東京に出てきて思ったのは、ひとり一人は決して冷たいわけではないんですが、人と人の関係性をスルーするような場面が多く、なんとなく寂しいと感じていました。

これは、私が通っていた駄菓子屋のおばちゃんや自分のおばあちゃんに通じるんですけど、私はどんなお客さんでも同じ人間なんだし、身分関係なく、コーヒーの前では同じ立場としてありたい。例えば、お店に来る人が小学生でも政治家でも、その人が誰であっても特別扱いはしない。それぞれの人をよく見て、話して、仲良くなっていきたいです。

もちろんコーヒーにはこだわっていますが、それよりも、もっと人と密に関われる空間を作れるようになったらいいなと。ここでお客さん同士が出会って、面白いプロジェクトが新たに生まれたり、そのうち結婚する人が出てきたり、そんな空間になっていけばと思います」(ナタリーさん)。

幣誌で“スモールカフェ”ブームを取り上げ始めた2011年の当初よりも、様々な業態のショップが誕生し、益々細分化の進むコーヒーショップだが、人気のストリートブランドとコラボするショップや、コーヒースタンド&ギャラリーの「GOOD PEOPLE & GOOD COFFEE(グットピープル アンド グットコーヒー)」といったストリートカルチャーとの縁の深いコーヒーショップも増えており、更に、2015年6月には「STREAMER COFFEE COMPANY」が「atomos(アトモス)」の原宿店に “スニーカーを眺めながらコーヒーが飲めるショップ”をオープンするなど、コーヒースタンドは、かつて90sに「DJブース」がそうであったように、今やストリートカルチャーの要素としても定着しつつあるようだ

【取材・文/梶山ひろみ(フリーライター)+『ACROSS』編集部】

talk and come again(トクガワエン)

住所:東京都渋谷区神宮前2-12-3
営業時間:平日9:00-18:00
土 11:00-17:00
定休日:日祝



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