定点観測海外編
第2回「定点観測 in LA ビバリーヒルズ編」
レポート
2015.02.01
ファッション|FASHION

定点観測海外編 第2回「定点観測 in LA ビバリーヒルズ編」

カリフォルニア州ロサンゼルス ビバリーヒルズで定点観測を実施

第2回目の定点観測@LAは、“LAのAWファッション”にフォーカスすることにした。

2014年4月に実施した第1回定点観測in LAの記事(こちらを参照)でも考察したように、LAはエリアが広く、来街者のファッションやライフスタイル特性がそれぞれで異なるため、毎回実施場所を変えた「不定点観測」としてレポートする。

さて、冬でも平均15℃程度と1年を通して温暖な気候のLA。最も気温が低くなる12月半ば〜1月に実施した。

★LA地点のスナップ/インタビューはこちら


まずは、全体を把握するために、ハリウッド、サンタモニカ、ビバリーヒルズ、メルローズ、シルバーレイクでプレサーベイを実施したが、クルマ社会ということもあってか、やはりコート類を着用している人は全エリアで少なく、シャツやニット素材のトップス、スウェットパーカー、トレーナーといったトップスのままのスタイルが多く、たまにレザーブルゾンなどがいる程度。ビーチに近いサンタモニカなどでは、日中は長袖Tシャツ1枚にサンダルなど、夏とほとんど変わらない西海岸らしいファッションも目立った。

そんななか、ビバリーヒルズだけは少し異なり、コートのような重衣料やブーツなどを着用する人が目立ったことから、今回はビバリーヒルズエリアに決定。なかでも、メインのショッピングエリアであるロデオドライブを観察場所とした。
ロデオドライブは、シャネルやグッチ、ルイヴィトンなどのハイブランドや、ゲスなどのカジュアルブランドのショップが約500メートルにわたって並ぶ、“ザ・ビバリーヒルズ”というようなショッピングストリートで、観光地としても人気のエリアである。

12月〜1月は当然のことながらホリデーシーズン。セール期間真っただ中ということもあり、ふだんにも増して多くの人で賑わい、複数のショッパーを持つ人も少なくなかった。客層は、カップルやファミリーなど2〜3名の複数づれを中心に、団体ツアー客の姿も目立った。また、近年は中国・韓国を中心としたショッピング目的のアジアの富裕層の来街も増えており、調査当日もファッショナブルな「アジアン・セレブ系」の男女が多かった。

◎カウントアイテム:女性ポシェット うち、チェーンストラップ付き
プレサーベイで最も多かったポシェットをカウントアイテム(=メインのトレンド)とした。ここ数年、多くのメゾンから人気定番モデルのバッグをそのまま小型にしたものが発売され人気になっているのを受け、小型のバッグ=ポシェットがトレンドに敏感な女性のあいだで主流トレンドになっている。アメリカ英語では小型バッグを「パース(perse)」と呼び、ローカルな人々にも観光客にも流行っていた。

2014年12月20日(土曜日)の13:30〜14:30の1時間、ノースロデオドライブとデイントンウェイの交差点に立ち、ウィルシャーブルーバードからサンタモニカブルーバードに向かって歩いている人をカウント。ポシェット(パース)の着用者を測定した。結果は以下の通り。

●通行人合計 696人
男性 341人(49.0%)
女性 355人(51.0%)

女性ポシェット 61人(17.2%)
うちチェーンストラップ付き 29人(8.2%)

全体的にハイブランドのポシェットが多く、なかでもダントツに多かったのはシャネルだ。チェーンストラップが印象的なマトラッセとボーイ・シャネルは国籍・年齢を問わず人気だった。その他、40〜50代にルイ・ヴィトンのエピやダミエのホワイト、20代にはセリーヌやフィリップ・リムなどモード界で勢いがあるブランドのポシェットが支持されており、なかでもサンローランの「ユニベルシテ」や「タッセル・サッチェル」は人気が高く、モードな着こなしに取り入れられていた。

一方、「アジアン・セレブ系」の女性には、ルイ・ヴィトンの「ヴェル二」をはじめ、赤やピンク等の明るいカラーのポシェットが人気だった。

またハイブランド以外では、カジュアルなストロー素材のものや、黒でスタッズ付きのロックテイストのもの、色・柄が楽しいケンブリッジサッチェルなども人気。パープルやショッキングピンク、ネオンイエローなどポップだった。

そもそもクルマ移動が主流のLA。大きなバッグを持ち歩く人はアメリカの他の大都市に比べて少ない。ヴィトンのポシェット付きトートを愛用していた女性は、「ビジネスではトートバッグ、プライベートや夜に外出する時はポシェットを使っている」と回答。仕事や学校には大きなバッグ、ショッピングや食事に行く際は財布と携帯が入る程度の小さなバッグに替える、という“オンとオフ”をきちんと区別するスタイルが一般的になっているようだ。

また、「昨年は大きいバッグを使っていたが、今シーズンは小さいバッグが気分!」と、トレンドの視点からポシェットを選んでいる人も少なくなかった。ハイブランドの新作をふつうに購入していたり、旅行先の海外で購入したという人もおり、富裕層の多いエリア、ビバリーヒルズならではの結果となった。

着用スタイルは、東京ではビッグシルエットアウターに長めのストラップのポシェットを片一方にだらりと掛けるスタイルが多いのに対し、ビバリーヒルズでは薄手のアウターを来ている人が多いためか、ストラップを短めにして、斜め掛けにするスタイルが多い。動きやすさや安全性を重視していることもあるだろうが、どこか軽快&アクティブ感を演出しているようにも感じられた。

◎ズームアップアイテム1:ニーハイブーツ
ビバリーヒルズでは、パンプスやブーティ、ブランドロゴ入りのフラットシューズなど、比較的“きちんとした”靴が主流になっていた。なかでも浮上しているニーハイブーツに注目した。

3〜5センチ位のローヒールで、マットなバックスキン。後ろ半分がストレッチ素材の異素材切り替えタイプも人気だ。黒を中心にカーキやエンジ、紺などのカラーバリエーションも見られた。

主な着用者は20代の「アジアン・セレブ系」の女性。ヒザ上15〜20センチ位のフレアミニスカートやショートパンツにニーハイブーツを合わせ、太ももがチラりと見えるフェミニンでキュートなコーディネートが支持されていた。このミニスカートとニーハイブーツ/サイハイブーツの組み合わせは、2013/14AWコレクションでシャネルやエミリオ・プッチなどが提案していたスタイル。「アジアン・セレブ系」の女性の間では、コレクションそのままのコーディネートがストリートに再現されていた。

一方、ローカルの女性には、お尻が隠れるくらいのロング丈のニットやカットソーを着用し、スキニーパンツやレギンスをニーハイブーツにインする“LAセレブの日常着風のスタイル(≒LAカジュアルの再来!?)”が人気。40代、50代、60代と思われるシニア女性にも同様のブーツインスタイルが着用されており、一昨年、「アジアン・セレブ系」の間で支持されたコレクション発のトレンドアイテムが、今年に入り、さらに幅広い層に浸透しているようだ。

◎ズームアップアイテム2:ワントーン・コーディネート
2つ目は、もに男性に多かった全身をほぼ同系色でコーディネートする「ワントーン・コーディネート」に注目した。考察としては、大きく①全身黒のコーディネートと、②セットアップスーツの2つに分かれていることが分かった。

①で最も多かったのは、LAの定番ともいえる「ワイルドなバイカー・スタイル」。レザーのライダースジャケットにスキニーパンツ、タトゥー、ロングヘアー、そしてクロムハーツ(風)のシルバーアクセサリーなどが定番アイテムで、20代〜60代までと、かなり幅広い年齢の男性に支持されていた。他にも、「アジアン・モード系」の男女にも、全身ハイブランドの黒アイテムで統一したスタイルもわずかに見られた。

一方、②のセットアップ(スーツ)スタイルは、アメリカン・トラッド風のフォーマルスーツを中心に、ヒゲにスリーピースという20s風のレトロなスーツスタイルも。なんと愛車は 1929年製フォードのヴィンテージカー(!)と、ファッショントータルでコスチュームプレイを楽しんでいた。

また、カップルで2人ともジャケットとデニムを着用していたり、同じ柄を着用するなど、お揃いのアイテムやスタイリングをしている男女もチラホラ見かけた。というのも近年のLAでは、カップルや夫婦などで、記念日や誕生日などにお揃いのコーディネートで外出し、特別な1日を楽しむ習慣があるようだ。


◎考察
今回のビバリーヒルズでの定点観測では、ハイブランドのアイテムを取り入れたコンサバなスタイルが主流。前回のメルローズのように、サーフやビーチ等の“ライフスタイル”との連関性のあるファッションは少なく、唯一見られたのは、「バイカーズ・スタイル」だった。

代わりに、ハイブランドのアイテムをオンシーズンで着用したり、ファッションの参考にしている人として、カール・ラガーフェルドやフィビー・フィロといったデザイナーの名前をあげるなど、“コレクション・トレンド”がまんまストリートにも反映されていた。

インスタグラムなどで自分と同じ国籍/人種のブロガーをチェックしている人も多かったが、もれなくハイブランドを着用していたりと、インタビューからもハイブランドへの関心の高さが伺えた。

なかでも、「アジアン・セレブ系」は一目でブランドが分かるデザインのもの、コレクションのルックをほぼそのままストリートで再現するなど、ヒネリなしの“王道のモードスタイル”を楽しんでいた。

もちろん、ローカル(地元)の人々にも、バッグを中心にハイブランドのアイテムが支持されていたが、複雑なレイヤードや凝った小物使いなどは少なく、シンプルでカジュアルなコーディネートにまとめているため、独特のヌケ感が感じられた。

昨シーズンからヨーロッパを中心に、コレクションなどで提案されている「ラグジュアリー・ストリート」「スポーツ・モード」とも異なるカジュアル感やヌケ感のあるファッションは、LAの心地よい気候や開放感などから形成される独特の“LAスタイル”ファッションといえる。

また今回の調査では、ざっとインタビューしただけでもNYやイタリア、スペイン、オーストラリアやシンガポール、香港など実に様々な国から人々が訪れていた。周辺には、セレブリティが利用する高級ホテルやレストランも多く、ドレスコードが設けられている店も多いこともあるだろうが、ローカル(現地)の人々も観光客も、ほかのエリアに比べてドレスアップしている人が多かったのが印象的だった。ファッショナブルなシニア世代も多く、誰もがドレスアップして訪れたくなる特別な街としてのステージ感を強く感じたビバリーヒルズでの定点観測だった。

[取材/文:鈴木香澄+アクロス編集部]

鈴木香澄/ロサンゼルス在住・学生 
ヴィジュアルマーチャンダイザーとしてDIESEL JAPAN (ディーゼルジャパン)に10年間勤務した後、2012年からロサンゼルス在住。
インタビュー協力 菅絵利子/ロサンゼルス在住
 


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