Kemocon(ケモコン)7サバイバル
レポート
2015.01.09
カルチャー|CULTURE

Kemocon(ケモコン)7サバイバル

モフモフの着ぐるみで変身を楽しむ
国内最大級 “ケモナー”たちの祭典

猫や狼などケモノの着ぐるみで変身を楽しむ「ケモナー」というジャンルをご存知だろうか。そのプレイヤーたちが集まるイベントとして、年に1度開催されている国内最大級のコンベンション「Kemocon(ケモコン)」が2014年11月22日、23日の2日間、かずさアカデミアホール(千葉県木更津市)で開催された。
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今回で7回めとなる「Kemocon7サバイバル」を主催するのは、「Kemocon Project」。(※)ケモナー有志26名からなる団体である。
※動物キャラクターを愛好する人々のこと。着ぐるみの他、イラストを描いたり小説を執筆する人たちも含む。呼称に関しては着ぐるみによって微妙な差異があるようだが、本稿ではひとまずこの呼称を用いる。

2004年前後からネットで着ぐるみの作り方を公開する愛好者がチラホラと現れ、2005年頃からオフ会イベントを行うようになりました。その後08年に、主要メンバーでKemocon Projectを立ち上げ、現在に至っています」(Kemocon事務局スタッフ)。

これまでは、川崎市産業振興会館(神奈川県川崎市)や、すみだ産業会館サンライズホール(東京都墨田区)で開催してきたが、今回から会場をかずさアカデミアホールというホテル併設の大きな会場に移し、2日間に規模を拡大しての開催となった。回を重ねるごとに参加者が増え、プレイヤーたちが交流できる十分な時間と場所を確保するとともに、着ぐるみの着替えのスペースや各種のイベントを開催できるよう、ホテル併設の大会場で規模・内容ともに拡大して行なうことになったというわけだ。
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今回参加したケモノは約170体。これにスタッフやビジター参加などを加えると総参加者数は400名を超える。近年では海外からも参加者が集まるようになっており、今回も台湾から8名、ヨーロッパ圏から数名が参加した。

ケモノ型着ぐるみを愛好するムーブメントは、transfur(トランスファー)、fur suits(ファースーツ)、Furry fandom(ファーリーファンダム)などと呼ばれ、欧米、特に北米で人気が高い。アメリカ・ペンシルバニア州で毎年夏に開催されている世界最大のケモナーコンベンション「Anthrocon(アンスロコン)」では、世界各国からなんとケモノ1,000体以上を含む約5,000名が参加するなど、大規模なコミュニティが存在している。日本では今回の「Kemocon」の他、滋賀県で「jMoF」、静岡県で「ケモノスクエア」が開催されるなど、じわじわと広がっている。
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会場には多彩なケモノたちが集まっていたが、じっくり見てみると微妙に“ケモノ具合”が異なっていることが分かる。より人間に近いプロポーションの擬人化キャラから、リアルな動物寄りのもの、頭部が大きいマスコット・キャラクター的なものまで、微細なバリエーションがあるのが写真からもお分かり頂けるだろう。

というのも日本の「ケモナー文化」は、動物への変身願望、ゆるキャラ〜マスコットキャラクター、コスプレのいずれとも異なり、その全てが内包された新しいジャンルなのだ。アメリカのファースーツに比べて、よりアニメやコミックの萌え感覚が反映されていたりと、日本独自のアレンジが施されているのも特徴である。
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メイン会場では着ぐるみパフォーマンス、トークショーやダンスパーティ、ゲームなどが催され、さらにサブ会場でもダンスバトルやミニ四駆大会、情報交換系のワークショップなど多彩な自主企画が行われていた。それぞれ指向や属性によってさらなるサブジャンルが生まれ、イベントのプログラムも一括りにできない多様性が感じられた。

さらにディーラーズ・ルームには、着ぐるみ制作や関連商品、サービスを扱うディーラー約10社がブースを出店。着ぐるみの販売や制作相談、ビギナー向けの着ぐるみ体験、撮影サービスなどが行われていた。
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そしてメインイベントともいえるのが、パレードと集合写真撮影である。170体のケモナーが一同に会する集合写真は圧巻!参加者は各々、2つと同じものがないオリジナルの着ぐるみに身を包み、自由なポージングで唯一無二の “ケモノ”へと成りきっていた。

実際に参加者に話を聞いてみると、「もともと動物が好きでイラストを描いていて、そのイラストを立体にしてみたくなった」というきっかけでケモノ制作に入ったというケースが多く、参加者のほとんどが着ぐるみを自作していた。この「セルフメイド」という点もケモナーにとっての大きな魅力のようだ。

ケモノの魅力は何と言っても、自分の頭の中で思い描いたものを具体化できること。見た目からキャラクターまで思い通りのケモノになれるんです。ケモナーの中には、ダンスやパフォーマンスができる演者さんタイプの方も多いですし、私たちはこれを新しい表現方法だと思っています。今後は街おこしや地域貢献にも役立てればと考えています」(事務局スタッフ)。
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2次元の動物擬人化キャラクターがまずあって、それを具体化して中に入る。つまり、ある種のアバターのような機能を持つものだと捉えられそうだ。既存のキャラクターを自己の身体やコスチュームで表現するのがコスプレ。ケモナーは自分好みのキャラクターを創造し、そこに一体化していくわけで、異なるベクトルを持つものだ。既存のコミックのキャラクターなどを再現する海外の「ファースーツ文化」とは異なる、日本人ならではの欲望の存在が感じられた。

さらに、モフモフしたファーの手触りがもたらす心地よさには、コスプレにはない「触れる快感」がある。ケモノ同士でのまさに触れ合いを楽しむ様子には、着ぐるみやゼンタイ(全身タイツ)にも通じる触れ合う快感を感じさせる。加えて、ぬいぐるみのような安心感や安らぎといった効果もありそうだ。

実際に170体以上のケモノを目の当たりにし、こうした文脈を理解していなくても惹きつけられるような華やかさと親しみやすさを実感した。原作アニメやマンガ、ゲームを理解しているかどうかで楽しみ方が変わるコスプレよりも、むしろ一見客からはとっつきやすい。ゆるキャラがブームとして一段落した後、この「ケモナー」が新しいジャンルとして浮上する可能性もありそうだ。

取材/文:本橋康治(コントリビューティング・エディター)


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