JUN OKAMOTO(ジュン・オカモト)オンリーショップが代官山にオープン
レポート
2014.03.03
ファッション|FASHION

JUN OKAMOTO(ジュン・オカモト)オンリーショップが代官山にオープン

パリ→東京に帰国して、全力で駆け抜けた2年を振り返る。

ファッションブランドのJUN OKAMOTO」(ジュン オカモト)の東京のオンリーショップが、昨年秋、代官山にオープンした。

デザイナーの岡本順さん1997年に文化服装学院を卒業後、パリのstudio Bercot(ステュディオ ベルソー)に入学。Arexandre Matthieu(アレクサンドル マチュー)のアシスタントを経て、2002年にパリを拠点に自身のブランドをスタートしてきたベテランだ。

日本への取引も増え、2010年に「ふと東京で勝負してみたい」という気持ちになり、帰国。その後の活躍は目覚ましく、弊社が主宰する日本初のファッションに特化したクラウドファンド「ファイト ファッション ファンド(FFF)」に選出→期間中にインスタレーション発表→東京コレクションデビュー→東京ストアのオープンと、これまでののんびりしたペースが嘘のように、階段を駆け足で駆け上がってきた。

東京のショップについてはもちろんのこと、ファッションデザイナーとしてのこれまでの経緯、今後の目標などについて、あらためて岡本さんに話を聞いた。

これまでのコレクションで好評だった型の白地の服を約30着用意し、コレクションの残布やサンプルなどで購入したデッドストックなど約150種類から選べるセミオーダーライン「Wallflower by Jun Okamoto」も展開。
2008A/Wより熊本では展開している障害を持った方たちの織る『さをり織り』や、障害を持った方たちの描く絵とのコラボレーションラインも東京で販売する。

 ——代官山の東京ストア、なんか岡本順さんが住んでいそうな雰囲気ですね。

 今まで10年近くブランドをやってきて出会った人やもの、記憶だったり、これまで支えてきてくれた人たちと共有したいという思いからお店を作りました。なので、皆でわいわい集って食事が楽しめる「キッチン」のような空間にしたかったんです。

——内装は建築家の谷尻誠さんと創作家の長谷川直子さんが手掛けられていますね。

 2011年に故郷の熊本にオープンしたお店は、外装から内装まで全て自分の手で作って、とても気に入っているのですが、東京のお店はそれとは違う雰囲気にしたかったんです。ファッションショーは様々なプロの力を借りて一緒に作り上げるものですが、そんなイメージでその道に長けた方とキャッチボールを楽しみながら作りたいと思いました。長谷川さんとは長年の友人で、谷尻さんは長谷川さんにイメージを話したら「それなら谷尻君がぴったりかも」ということで紹介されました。

東京という場所は独りよがりではない客観的な視点が必要だと思うので、3人の相乗効果みたいなものを期待していましたが、結果的に上手くいったと思います。でも、やっぱり自分が住んでいそうな雰囲気になっていますよね(笑)。

——商品展開はどんなかんじですか?

 ジュン オカモトのレディース、メンズの全ての商品を揃えるのはもちろんですが、セレクトしたバッグ、シューズ、iPhoneケース、「モレスキン」のノート、「ランド バイ ランド」のキャンドルなども展開します。以前、コレクションにも良く用いていた「さをり織り」のクッションや、セミオーダーメイドライン「ウォールフラワー バイ ジュンオカモト(Wallflower by Jun Okamoto)」も展開します。

——セミオーダーメイドとはどのようなサービスなのですか?

 これまでのコレクションで好評だった型の白地の服を30着ほど並べていて、お客様だけの好みの1着を作ることができるサービスです。生地はコレクションの残布やデッドストックなど約150種類から選べます。熊本でも同じサービスをしていて、幸いにも好評なので、東京でもやってみることにしました。今はただコレクションを並べるだけでは直営店の運営は難しい時代なので、お店に足を運んでもらえるきっかけになればと……。時間のかかる作業ですが、そのアナログさがかえって新鮮だし、自分だけの1着ということでお客様の満足度も高いのではないかと思います。

——お店の奥のスペースはちょっと隠れ家的な雰囲気がありますね。

 そうですね。今は在庫を置いたりしていますが、いずれはキッチンのコンセプトに沿って、週末限定でパンとかコーヒーを出せたらいいですね。今はまだ夢想段階ですが、食との関わりは自分にとって大切なので。

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「いつか期間限定でもいいので、このショップのコンセプトでもあるキッチンのように、美味しいパンやコーヒーなども販売できたらいいなあ、と思っています」順さん。
 ——ちょっと話を戻して(以前も本サイトでインタビューさせていただきましたが)、改めてパリ時代のお話をお聞かせいただけますか。

 まず熊本から東京出てきて、文化服装学院に3年間通って、なんとなくパリに行きたいと思い、パリのステュディオ ベルソーに入学しました。卒業後は、「アレキサンドル マチュー」のアシスタントを経て、2002年にパリでブランドを立ち上げました。といっても最初の3年くらいは内輪でのんびりやっていて、合同展(ランデブー)に出始めたのは2005年頃です。それから日本のショップとの取引がスタートして、ようやく日本でもブランドが認知されるようになりました。でも、海外のお店のほうが多くて、NY、トリノ、ドバイ、アイスランドの小さいお店と取引していましたね。

——パリには随分長くいらっしゃったんですね。

 もともとフランスが好きだったわけではないんです。熊本という土地柄、アメカジの文化が浸透していたので、自分もずっとアメカジが好きで、高校生の頃からレアなジーンズやスニーカーを探す毎日で、文化に入ってからも、実は特にフランス文化に興味はありませんでした。ですので、パリで勉強してみようと決めた時も、エッフェル塔くらいしか知りませんでした(笑)。

でも、パリに勉強しにくる人たちはみんな心底フランスが好きな人たちで、それぞれが映画、音楽、食、クルマなどについて一家言持っていて焦りました。でも、すぐにパリに魅了されましたね。時間の流れもゆっくりしているし、周りの人からも干渉されないし、とにかくすごく楽で、一度も帰りたいと思いませんでした。

——その愛するフランスから帰国しようと思ったきっかけは?

 帰国するまでの10年近くは、ずっとパリと熊本を往復する生活を続けていて、東京には半年に1回展示会で来るだけでした。でも、だんだん日本での仕事が楽しくなってきて、そうすると、「やっぱり東京にちゃんといないとなぁ」と思えてきて……。東京は何かアイデアを発したらそれが形になるのが早い。それはパリでは絶対に味わえない感覚で、東京で勝負してみたいと思うようになりました

——そこからは早かったですね。

 そうですね。2011年にパルコのFFFに自分で申し込んで、それからは怒濤のような早さで様々なことが動き始めました。FFFに選定されてから、一気に周りの声が大きくなって、ポップアップショップ、インスタレーション、ファッションショーへと繋がりました。2012秋冬シーズンにインスタレーションやった時は、ショーをやるなんて考えもしませんでしたが、気がついたらショーをやっていた、っていう感じです。

 

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石造りの壁面がまるでパリの外れにある一軒家のような雰囲気。左側部分に設けたエントランスは実は窓だったところを改築したのだそう。
 ——ショーはやってみてどうでしたか?

 やはりやってみて良かったと思います。自分の内側を吐き出す気持ち良さはショーでしか味わえないと思います。でも、続けて行くには資金がいるわけで、良いことばかりではありません。東京に拠点を移してから、ビジネスを大きくしていきたいという思いが強かったので、それには大手セレクトショップとの取り組みが欠かせないと思っていました。

「ショーをやったら振り向いてくれるかも」という淡い期待もありましたが、現実的に大手との取引が決まるわけでも売り上げが倍になるわけでもないわけで、その辺りの難しさを痛感しました。ブランドを知っている人は見方を変えてくれましたが、知らない人に届くかというとなかなか難しい。ただ、そういうことが分かったのも含めて、自分の意識が変わったのが一番大きかったです。

——東京にお店を持つことの効果をどのように考えていますか?

 ブランドの世界観を東京でしっかり見せることができるのはやはり大きいと思います。また、お客様の声を直に聞くことで、縦に積める売れるアイテムとか、コレクションピースに合わせるアイテムの開発とかができることも期待しています。通常、コレクションブランドは年2回のコレクションの発表でおしまいですが、お店があるとそうはいかなくて、途中で何かを企画したりしなければならない。それが卸先にも相乗効果を生むといいですね

——最後に、中長期的な目標をお聞かせください。

 またショーをやりたいという気持ちはあります。難しいのは重々承知していますが、ショーをやることでブランドの評価と売り上げの両方が上がるような見せ方をしたいですね。それと、もうちょっと先の目標になりますが、パリにもう一度出してみたいというのがあります。9月にシンガポールでショーをやってみて、「海外でやるのは自分に合っているなぁ」と改めて思いました。東京に帰ってきてからは、卸先を増やすことしか考えていませんでしたが、ちょっと視野が狭かったと反省しています。先ほど言ったように、この1~2年はスピードが早すぎて自分も付いていくのがやっとだったので、お店をやりながらゆっくり考えて、少しずつブランドを大きくしていきたいと思います。

[聞き手:増田海治郎(ファッションジャーナリスト)]

JUN OKAMOTO(ジュン・オカモト)

〒150-0034
東京都渋谷区代官山
営業時間:12:00ー21:00
TEL/FAX: 03-6407-9996
 
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