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SAVE THE CLUB NOON(セイブ・ザ・クラブ・ヌーン)
レポート
2014.01.23
この記事のカテゴリー |  カルチャー | 

SAVE THE CLUB NOON(セイブ・ザ・クラブ・ヌーン)

クラブカルチャーと風営法をめぐる問題を
表現者の側から描くドキュメンタリー・ムービー

ここ数年、全国の大都市で強まるクラブ規制。風営法違反で摘発を受けた大阪の老舗ナイトクラブ「NOON」への支援イベントを描いたドキュメンタリー・ムービー『SAVE THE CLUB NOON(セイブ・ザ・クラブ・ヌーン)』が2013年11月末から公開をスタート、現在全国各都市をサーキット中だ。


 

 

映画『SAVE THE CLUB NOON』はダンス規制法への問題意識を換気する大きなきっかけとなった(『SAVE THE CLUB NOON』より)
NOON救済のために集まった多彩なアーティストたちのライブシーンも本作の魅力である(『SAVE THE CLUB NOON』より)
DJ/プロデューサーとして活動する傍ら渋谷区宇田川町で「オルガンバー」を経営している須永辰緒さん(『SAVE THE CLUB NOON』より)
NOONは関西ミュージック・シーンの中でも重要なハコとして尊敬を集めてきた。写真は『SAVE THE CLUB NOON』よりEGO-WRAPPIN' のライブ風景
アップリンク・ファクトリーで開催された上映記念トークイベントの会場風景。年齢も性別もさまざまな観客が集まった

SAVE THE CLUB NOON(セイブ・ザ・クラブ・ヌーン)

ここ数年、全国の大都市で強まるクラブ規制。風営法違反で摘発を受けた大阪の老舗ナイトクラブ「NOON」への支援イベントを描いたドキュメンタリー・ムービー『SAVE THE CLUB NOON(セイブ・ザ・クラブ・ヌーン)が2013年11月末から公開をスタート、現在全国各都市をサーキット中だ。

イベント「SAVE THE NOON」は2012年7月14日~17日の4日間にわたって開催され、NOONを支援するミュージシャンやDJなど100組を越える出演者が集まった。映画は、ライブシーンとミュージシャンや関係者へのインタビューを折り重ねながら、風営法の運用実態など、クラブカルチャーとそれを取り巻くさまざまな問題を表現者の視点から浮き彫りにするノンフィクションである

NOONは前身の「club DAWN」の時代から約19年に渡り、さまざまなジャンルのミュージシャンやクリエイターに表現の場所を提供してきた老舗。EGO-WRAPPIN'やハナレグミなどメジャーでも活躍するミュージシャンたちからも信望を集め、関西のクラブ・ミュージックを支えてきた関西ミュージック・シーンの重要拠点なのだ。それだけに、 2012年4月4日に行われた摘発は、関西だけでなく全国のクラブ・シーンに大きな衝撃を与えた。

本作『SAVE THE CLUB NOON』の企画は、 写真家・佐伯慎亮さんがNOON代表の金光正年さんからイベント「SAVE THE NOON」を記録したい、と相談を受けたことからスタートした。佐伯さんは知人の映像作家・宮本杜朗さんに撮影を依頼し、4日間のイベントを撮影したのだが、この時点で映画のポスト・プロダクションから公開までの予算はゼロという状態であったという。

出演者たちはNOONのために無償でイベントに参加、インタビューにも応じてくれたが、最大のネックとなったのはJASRACの著作権使用料。そこで「motion gallery」でのクラウドファンディングで制作費用を募ったところ、300万円の目標額を大きく超える400万円の資金が集まった

2010年頃から東京、大阪、福岡など全国でクラブやオールナイトのダンスイベントへの摘発が強化されてきたことに危機感が広がっていたこともあり、このプロジェクトはソーシャルメディア上で急速に拡散、注目を集めた。特にクラブ規制が厳しいのは大阪で、いまやアメリカ村エリアのクラブは壊滅状態にあると言っていい。クラブ側もここ数年は24時前にクローズしたり、酒類の販売を行わないイベント運営を行うなど、強化される規制に対応してきた。いまや東京でも、ダンスありのクラブイベントが終電とともに終わるのが当たり前の風景となっている。

NOONの経営者を含む8人が逮捕されるに至ったのは「無許可で店内にダンススペースを設け、客にダンスをさせていた」という理由による。風営法の規定に満たない面積で、未許可状態で営業を行っていたということだ。

もちろん深夜営業の許可を取ればバーとして営業できるが、それでは深夜にダンスを踊ることはできない。小さいサイズのハコでのダンスイベントや、オールナイトで酒類を提供するイベントは厳密にいえば法に触れるもので、事実上違法状態のまま、黙認をされているところが殆どである。NOONは特別なことをしていたわけではなく、よくある1軒に過ぎないのだ。
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写真左から『SAVE THE CLUB NOON』監督の宮本杜朗さん、いとうせいこうさん、企画を担当した写真家の佐伯慎亮さん
上映劇場で販売されている『save the club noon』Tシャツ
EGO-WRAPPIN'の中納良恵さんもNOONで育ってきたミュージシャンの一人だ(『SAVE THE CLUB NOON』より)
風営法ではダンスを行なうビジネスには届出と許可が必要。店舗のメインフロアは66平方メートル以上の障害物がない平地で営業時間は夜12時または1時までと規制されている。写真は赤犬(『SAVE THE CLUB NOON』より)
自らも老舗クラブ『THE ROOM』を運営してきた沖野修也さん(左)と沖野好洋さん(右)の「Kyoto JAZZ Massive」(『SAVE THE CLUB NOON』より)
日本ヒップホップ・カルチャーの創成期からラッパーとして活動してきた作家のいとうせいこうさん(『SAVE THE CLUB NOON』より)
「ダンス規制法」の見直しを求める15万筆を越える署名が国会に提出され超党派の衆参議員約60名による「ダンス文化推進議員連盟」が発足した(『SAVE THE CLUB NOON』より)
さらに、NOONへの摘発は異例ともいえる21時台に行われたことにも注目しておきたい。風営法を厳密に運用した場合ライブハウスやレストラン、カフェなど広い範囲の店が摘発の対象となり得るということを改めて示しているからだ。

「警察が規制や監視を強めたいのは、薬物や犯罪の温床となっていると言われる“水商売系ナイトクラブ”であって、音楽好きが集まるクラブは関係がないのでは? 」などと考える方もいるかもしれない。しかし現在フラメンコやサンバ、ベリーダンスやハワイアンまで、飲食店とダンスが結びついているのはクラブだけではない。その多くが原則的にはグレーなまま“実質的には問題ない”というお目こぼしによって見逃し、何かあれば摘発を行うという現状は、やはり改められるべきだろう

本作品の東京での上映を記念して、宮本さんと佐伯さん、そして本作にも出演しているいとうせいこうさんのトークイベントが2013年12月1日、渋谷アップリンクファクトリーで行われた。会場には風営法とダンスの問題への関心の高まりを反映するように、満員の観衆が集まった。トークは映画の内容から風営法、さらに特定秘密保護法へと広がっていった。

トークや作品中でも語られていたのは、本作が訴えているのは“権力との闘い”ではなく、実態に合わない法制度の改善にあるということ。中学校でダンスを必修科目とし「クール・ジャパン」コンテンツとして海外にも発信する一方で、ダンスに許可が必要という矛盾に満ちた状況を、社会の実態に則して改めていこうというものだ。

いま「ダンス」を風営法の対象から外すべく働きかける動きは着実に広がっている。署名活動「Let’s Dance」は社会の実態からかけ離れた法律を現状に則したものに改めていくよう政治家にも訴えていこうというもので、現在もなお拡大中だ。2013年5月には「Let's DANCE署名推進委員会」が集めた15万筆を越える『ダンス規制の見直しを求める請願署名』が国会に提出され、超党派の衆参議員約60名による「ダンス文化推進議員連盟」が発足した。

クラブの側からも「クラブとクラブカルチャーを守る会」のように、地域や警察からアドバイスを受けながら自主規制基準を設け、 店や客側の意識改革を訴える動きも生まれてきた。新聞や雑誌も”集まって踊ること”を犯罪の温床と短絡して捉えるような規制の問題を報じ、踊ってはいけない国、日本』(2013年・磯部涼編著)の出版などもあって大きな動きになってきた。

2013年11月22日に開催された政府の規制改革会議のワーキング・グループでも、この風営法でのダンス規制問題が議題に上がった。“ダンスそのものを法律で取り締まるという現状はおかしい”という見解を述べる委員の発言もあったという。健全なダンスカルチャー・クラブシーンの形成に向けて、事態は徐々にではあるが変化しつつあるといえるだろう。

もちろん、本作で描かれているのはこうした風営法とダンスをめぐる問題だけではない。ソウル、ジャズ、ヒップホップ、ロックからハードコアまで、いまクラブシーンで楽しむことができる多様な音楽とアーティストたちの姿を記録したドキュメンタリーとしても価値のある作品だ。クラブから足が遠のいている大人たちにこそ、今見てもらいたい音楽映画でもある

 
【取材・文: 本橋康治(コントリビューティングエディター/フリーライター) 】 

SAVE THE CLUB NOON(セイブ・ザ・クラブ・ヌーン)

SAVE THE CLUB NOON(セイブ・ザ・クラブ・ヌーン)

監督・編集:宮本杜朗
企画:佐伯慎亮、山本陽平

インタビュー・ライブ出演者(#はライブ映像のみ)
赤犬/ANI & ロボ宙(DONUTS DISCO DELUX)/ALTZ #/いとうせいこう ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB) /OORUTAICHI 沖野修也 & 沖野好洋(Kyoto JAZZ Massive)/オシリペンペンズ#/KA4U(MIDI_sai)/Calm KIHIRA NAOKI(SOCIAL INFECTION)/久保田コージ#/THE CREAMS サイトウ"JxJx"ジュン(YOUR SONG IS GOOD)/須永辰緒/太華&浦友和 CHIEKO BEAUTY/中納良恵(EGO-WRAPPIN')/中村一元(PUBLIC CAFE)/七尾旅人 ハナレグミ/PIKA☆(ex.あふりらんぽ)/HIDADDY(韻踏合組合) BIKKE(TOKYO No.1 SOUL SET)/BLIZ AND SQUASH BRASS BAND# 山本アキヲ & 高山純(AUTORA) 金光正年(NOON代表) 山本陽平(NOONマネージャー) etc.

上映館およびスケジュール
東京
アップリンク・ファクトリー(東京都渋谷区宇田川町)
2014年1月25日(土)~31日(金)
京都
立誠小学校特設シアター(京都市中京区)
2014年2月8日(土)~2月11日(金)
広島
横川シネマ(広島市西区)
2014年2月8日(土)~2月11日(金)
静岡
富士市民活動センターコミュニティf
2014年3月23日(日)

*神戸、神奈川、新潟などで順次公開予定
*詳しくはオフィシャルサイトを参照のこと

(プロフィール)
監督:宮本杜朗
1981年生まれ。独学で映画を作り始め、05年に初長編『吉村佳雄WALKING、SLEEPING』が中之島映画祭グランプリ受賞。07年『フリフリ坊主』が第3回CO2企画制作総合プロデューサー賞を受賞し、OSKARIADA(Poland)、ハンブルグ日本映画祭(German)などで上映。09年に『尻舟』を発表。高崎映画祭で上映され、劇場公開。11年『こぼれっぱなし』(MOOSIC)が恵比寿映像祭にて上映。03年春より、『太秦ヤコペッティ』が劇場公開。多数の海外映画祭への出品が決定している。自身の全作で撮影、編集も務める。PVも多数制作。

企画:佐伯慎亮
1979年生まれ。写真家。2001年キヤノン写真新世紀優秀賞。韓国やリトアニアなど、国内外での展覧会多数。大阪を拠点に雑誌、広告等で活躍中。2009年に初写真集「挨拶」(赤々舎)刊行。映画『あがた森魚ややデラックス』(2009年 トランスフォーマー)では撮影を担当。


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