nest: [zbb]

nest: [zbb]

レポート
2002.08.14
カルチャー|CULTURE

白いスチールで組み立てられた大きなクロス状の箱。煌めく白い閃光、下腹部に響くドラムンベースの重低音、縦横無尽に弾む美しくも不思議な肉体……。と、前衛的な雰囲気での幕開けとなった「nest(ネスト)」の3年ぶりの新作「zbb」。

「zbb」とは、ソフトウェアの開発時に、製品化される一歩手前の段階を指す、“zero bug bounce”を略したもの。絶対にゼロとはいえないバグを、極力ゼロに近づけるための強い意志を込めてつける呼称なのだという。

ツルンとした白いギャルクマがぴょこぴょこと飛び跳ねるシーンがあったかと思えば、歩くたびにスイッチがオンになる電飾付きのスニーカーで歩きまわるシーンがあったり、写真日記のようなシーンがあったり。手足をもぎ取られたような不格好な人間が、ひたすらぶつかりそうになりながら行進するなど、ハイテク装置に囲まれる中でのローテクな肉体とのインスタレーションといった印象を受ける、ダンスパフォーマンスだ。

「前回までは、高さが3階建てくらいの、いかにもステージという舞台設定で、もっとパフォーマンスアートといった雰囲気の作品だったんです」と言うのは、同公演の総合プロデューサ、大桶真さん。
「今は“ステージ”っていう感じじゃないような気がして、こういうクラブのような、観客席と繋がったフラットな空間にしました」。

おおよそ2時間にわたるパフォーマンスは拍手喝采にて終演。その後には、“ボーナストラック”と称した実験が行われた。それぞれの映像や音、色、動きに、「水の中」「蚊がいっぱいいる」「天井が下がってくる」「フリーズする」「青い人のコピーをする」「ジグザグに歩く」といった、表現するルールを決め、それぞれの指示のもとで、次にやることを決めていく、という“プログラム”であることが解説された。クロス状に設置されたフレームは、4カ所の入り口と4カ所の出口を持つ「装置(マシン)」なのである。

「なるほど!」っと実験パフォーマンスを観た直後は納得していたような気になっていたが、一晩明けてみると、“断片的なイメージ”しか残っていないことに愕然とした(苦笑)。

そもそも、nestとは、かれこれ10年くらい前から国内外(とくにヨーロッパ)で活動してきた、マルチメディア・パフォーマンス・ユニットである。ふだんは、ディレクター、ミュージシャン、建築家、映像作家、コンピュータ・プログラマー、パフォーマーなど、さまざまな分野で活躍する多才なメンバーで構成。一見副業(?)のようなパフォーマンスにおいても、音づくりをはじめ、映像や衣装、ギア、舞台装置に振り付けといった裏方からステージの上までと、境目なく完璧に関わりあうクールなスタンスが、いかにも「男の子っぽく」てかっこいい。「夏祭りみたいなもんですよ(笑)」(大桶さん)。

今回の「zbb」は、メンバーそれぞれが「イメージの断片」を持ち帰り、それを再度ひとつの箱に入れ、リミックスして再構成する、という方法を採用したというから、実は、「nest」というシステムそのものを表現していたのかもしれない。

■nest:[zbb] 2002年8月13日〜15日/@渋谷WOMB

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