UB1 TABLE(ユービーワン テーブル)
レポート
2019.08.26
フード|FOOD

UB1 TABLE(ユービーワン テーブル)

話題のあのシェフのランチが食べられる!
一般客にも開かれた進化系・社員食堂が渋谷に登場

限られた時間のなかで、安くておいしい、栄養バランスがいい食事がとれるのが魅力の「社食=社員食堂」。2010年に発売されたタニタの社食レシピ本がブームとなり、ヨーガンレールやマイクロソフトなど有名企業の社食本が脚光を浴びたのは記憶に新しい。働く世代の健康志向の高まりから、管理栄養士が監修するヘルシーメニューなど社食を充実させる企業も増えており、ますます個性豊かに進化している。

東京・渋谷にあるIT企業・ユナイテッドが今年3月、一般客にも開かれた社員食堂「UB1 TABLE(ユービーワン テーブル)」をスタート。注目のシェフ・森枝幹さんが作るこだわりのランチが食べられると話題を集めている。
 
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日替わりメニューは、デリプレート、定食、丼の3種類。この日のデリプレートは7種のデリの盛り合わせ、定食はよだれ鶏、丼はフィッシュアンドチップスという充実した内容

社員の健康を通して、地域や社会も健康に

同店があるのは、渋谷と表参道の中間エリアに位置するオフィスビルの地下。運営元は、ネット広告やスマホゲームなどのコンテンツ事業を手掛けるユナイテッド株式会社で、本社フロアの一角に「UB1 TABLE」はある。地下にありながらも天井が高くオープンな雰囲気の空間には、若手アーティストのアート作品やグリーンが飾られ、洗練されたカフェのような印象だ。

メニューは日替りで、ご飯が進むメイン料理の”定食”野菜たっぷりの惣菜を盛り合わせた”デリプレート”ボリューム満点の”丼”の3種(全て税込1000円、社員は半額)。ご飯とスープはお替り自由で、テイクアウトもOKだ。カウンターには併設キッチンからできたての惣菜が並び、セルフ形式でオーダーを受けその場で盛り付けるする。取材当日はオープンと同時に社内外から人が入り、昼過ぎには多くの客でいっぱいになった。
 
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昼過ぎには社内外からの人で満席に。社員は奥の専用ラウンジで食べることもできる
オープンのきっかけは、同社の早川与規会長が社員の健康を配慮してのことだという。「社員の平均年齢は約30歳と若く、ランチに出来合いのコンビニ弁当やカップ麺などを食べている社員の姿を見て危惧していました。会長自身はもともと食や健康への意識が高く、”いい仕事には健康で元気な体が欠かせない”という実感があった。そこで朝食を配布したり、給料日の前日にランチ代を補助するなどの施策をしましたが、食事なのでやはり毎日継続できる施策が大事そこで社食計画が持ち上がり、どうせなら地域貢献の場にできないかと構想しました」(同店統括マネージャーの大塚麻未さん)。

同店のプロデューサーに抜擢されたのが、下北沢の人気店「salmon & trout(サーモン&トラウト)」などを手がける森枝幹さん。きっかけは、早川会長が懇意にしていたとあるシェフからの紹介だそうだ。森枝さんは、シドニーのモダン・オーストラリアレストラン「Tetsuya’s(テツヤズ)」のほか、都内の割烹やホテルなどで経験を積んだ人物。最近ではレモンサワー専門店「The OPEN BOOK(オープンブック)」をはじめ様々な飲食店のプロデュースを手がける傍ら、サスティナブルシーフードの普及を目指すシェフ集団「Chefs for the Blue」のメンバーとして活躍するなど、多彩な活動を通して食にまつわる課題解決に取り組んできた人物だ。

”非日常”を楽しむレストランに対して、社食は”日常”。食に関心がある人もない人も、毎日200人もが利用する食事だからこそ、社会に対して働きかけられる可能性があると感じました。毎日食べるご飯のレベルが高くないと、特別なご飯を特別と思うことも難しい。健康的な食材を使った“あたりまえ”の食べ物を、皆においしく食べてもらうということ。それはレストランも社食も、同じ延長線上にあるんです」(森枝さん)。
 
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プロデューサーの森枝幹さん。現在も複数のプロジェクトに関わる注目シェフだ

健康的で持続可能な社会を目指して

早川会長からのリクエストは、「社員が健康になれる食事」。森枝さんがイメージしたのは、20〜30年後も元気に働き続けるための食べ物だ。「そのために大切なのは、食べる人も生産者も作り手も”いいね”と思い続けられる、健康的で持続可能な関係性を作ること。できるだけ環境に負担の少ない生産方法の食材を使うことが必須でした」(森枝さん)。

食材は、森枝さんのネットワークを生かして全国の生産者から厳選。例えば肉なら、家畜にストレスの少ない環境で飼育された”アニマルウェルフェア”に沿ったもので、豚は北海道で放牧された「遊ぶた」、鶏は岩手県の特別飼育鶏「菜彩鶏」を使用する。また米は茨城県鈴木農園の無農薬米、水産物はサステナブルな漁業を通して獲られたMSC認証のもの、農産物は味に遜色はないのに規格外で出荷できず廃棄される食材も積極的に活用。残った食材やおかずもリメイクして、できるだけフードロスが出ないようにする
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巨大な冷蔵庫にはたくさんの野菜のほかに、一頭買いした豚の肉や、手作りの調味料などが待機している
そこでこだわったのは、食材はできるだけ原料に近い状態で仕入れて、キッチンで加工処理をすること。森枝さんは、プランニングの段階で常の4倍の広さのバックルーム(キッチンと冷蔵室)を確保した。これなら豚を一頭買いして捌き全て余さずに使い切ることができる(ちなみに豚は需要が高いロース部分を除いた一頭買い)。調味料やタレも多くが自家製だ。

例えば、この日のメニューのコーンスープ。ひと口飲むとコーンのやさしい甘みが口に広がり、手間暇かけて作られたことが分かるが、原料のトウモロコシは大雨に浸って売り物にならなくなってしまったものを大量に譲ってもらい、可食部のみ切り出して活用した。ボリュームたっぷりのポテトフライのじゃがいもは、採れすぎて値崩れしそうなものを大量に仕入れた。これらの取り組みは、大人数の食事を用意する社食だからこそできることだ。

「毎日やることが違うので、正直大変なことしかありません(笑)。でも食に関心のない人がある時『気にせず食べてきたものが、実はちゃんとした素材で、ちゃんと作られたものだった』と気づいて、少しずつ行動につながっていくのが理想ですね」(森枝さん)。
 
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目にも身体にもうれしい野菜たっぷりのデリプレート。メニューは、鶏むね肉とキノコとキヌアのバルサミコはちみつ醤油和え、ひよこ豆のスパイス和え、カリフラワーとこんにゃくと雑穀の冷やご飯、ニンジンと紫キャベツとクルミのラペなど
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フリードリンクには麦茶、リフレッシュウォーター、ハーブティーなどを用意

多目的スペースを併設。情報発信、地域貢献も

とはいえプレオープン当初は野菜中心のデリプレートがメインだったため、「野菜が多すぎる」「味が薄い」「ご飯が進まない」などの不満の声も少なくなかったという。そこで社食としてのニーズを満たせるように、ボリューム重視の若者にも食べやすくわかりやすい、定食や丼メニューを増やすなどして、皆がおいしく食べられるよう試行錯誤を重ねたという。

現在、社員の利用率は本社全体の3割程度で、人気メニューは定番の唐揚げや照り焼きチキン、ハンバーグなどの定食。メニュー開発にも日々チャレンジしており、タイ料理のガパオやグリーンカレーも好評だ。毎日のように利用する社員も多く、お弁当にしてデスクで食べたり、夕食にする人もいるという。一方、一般客は20~40代が中心で、こちらは女性が7割と多め。人気メニューはヘルシーなデリプレート。口コミで知って来店する近隣のオフィスワーカーが多く、ほかにも男性の一人客、50-60代の女性グループなども訪れるそうだ。

同店の奥には社員専用のキッチンつきラウンジと、多目的ホール「UNITED HALL」(着席100名規模)を併設し、いずれも多目的スペースとして社外への貸し出しも行っている。地域の子供たちに学びの場を提供する渋谷区の事業「渋谷区こどもテーブル」会場として利用されるほか、平日夜や土日祝日には様々なセミナーやイベントなど、情報発信の場として活用される。
 
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店内奥にある社員専用のラウンジスペースとホール。多目的スペースとして一般への貸し出しも行っている

多彩に進化する社員食堂

「社内では、『安くておいしいランチが毎日食べられてうれしい』、『野菜をよく食べるようになった』という声のほか、社内でのコミュニケーションが増えたという意見も多く聞きます。社外の方やメディアからも注目をいただき、就活中の方にも「開かれた、いい会社」というプラスのイメージを持ってもらいやすい。正直、こだわっている部分が多いので運営コストはかかりますが、そのぶん注目度も高く、会社のPRとしても高い効果があると感じます」(大塚さん)。
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地下とは思えない解放感のある店内
昨今目指される、ワーク・ライフ・バランスの実現やQOL(クオリティオブライフ)の向上などを背景に、社食は大きく進化しつつある。会社としては社員が健康になり、生産性がアップするなどの福利厚生の意味合い以外にも、社内コミュニケーションの活性化、優秀な人材確保などの利点も注目される。最近では社食を一般にオープンにしている一般企業も珍しくなく、yahooのコワーキングスペース併設のレストラン&カフェ「BASE17/CAMP17」一汁三菜の薬膳料理を提供するロート製薬の「旬穀旬菜カフェ」凸版印刷が手がける地域野菜や伝統食材のメニューを提供する「小石川テラス」など、一般客が気軽に利用できる施設もある。多彩に進化する社食は、会社のイメージを左右し、同社のように地域や社会への姿勢も表す「会社の顔」。もはやひとつのメディアともいえるだろう。

社員の健康を通して地域や社会も健康にする、そんな社食の新しい可能性に満ちた「UB1 TABLE」。今後も食にまつわるイベントやセミナーなど、社外に働きかける取り組みを積極的に続けていく予定だという。

【取材・文=フリーライター・エディター/渡辺満樹子】
 
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立地は渋谷駅と表参道駅のちょうど真ん中、青山通りから旧こどもの城を入ってすぐ


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