PLATEAU BOOKS(プラトー・ブックス)@文京区白山
レポート
2019.07.16
カルチャー|CULTURE

PLATEAU BOOKS(プラトー・ブックス)@文京区白山

“平坦な日常”に寄り添う、図書室のようなブックカフェ

“兼業”だからこそ実現した、気持ちのいい働き方と環境。

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専門(本業)の建築関係の書籍は、「たてる/そだてる」のコーナーとしてまとめられている。中里さんのキャリアからも、“つくる“だけでなく、使う、人びとと混ざる、そして育むといったアプローチに。

谷根千に比べると地味なエリアに、おしゃれなブックカフェが登場!

文京区・白山といえば、近年都内のパワースポットとして注目されている白山神社のお膝元であり、明治〜大正期には三業地として栄えた地域。もっとも白山が正式地名となった1960年代以降は、都電の撤去や白山通りの拡幅などを経て、どちらかというと東洋大学他の各種学校が点在する文教地区、または住宅地としての色彩が濃い。

実際朝夕を中心とした学生たちの大移動以外は、都営地下鉄白山駅周辺の商店街はどこかのどかで、観光客の姿が目立つ近隣の根津千駄木巣鴨などと比べるとかなり地味な印象だ。

そんな同エリアに2019年3月、書店/ブックカフェ『Plateau Books(プラトー・ブックス)』がオープンした。


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「かんがえる/ひらく」のコーナー。小川たまかの『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』から、学術書エマニュエル・トッド の『世界の多様性 家族構造と近代性』など、より哲学的な思考へ。

ゼネコンや設計事務所を経て独立。
友人とシェアしたオフィスは東日本橋だった。

もとは精肉加工場だったという、古い雑居ビルの2階フロアを使った店内は、コンクリートむき出しのゆったりとした空間で、壁面やヴィンテージとおぼしき什器に面陳された本の存在感が際立っている。

「最初この物件を見に来た時はかなり荒れ果てていて、その荒々しさが格好いいなと思い、そうした感じを少しずつ残しながら使おうとしています」。

このように語るのは、Plateau Books(プラトー・ブックス)オーナーの中里聡さん。フロア奥には彼が代表取締役を務める建築事務所「東京建築PLUS」のオフィススペースがあり、平日は中里さんとスタッフが建築の業務を行い、週末に書店として営業するという形態だ。店内のリノベーションはもちろん中里さんが手がけている。

高校から建築科を選び、大学進学、ゼネコン勤務や設計事務所勤務などを経て、設計・施工を手がける建築事務所として独立。一貫して建築の世界を歩んで来た中里さん。そんな彼が書店を営むことを着想したのは、白山に移ってくる直前、東日本橋で友人とのシェアで建築事務所を営んでいた時からだったという。

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本には丁寧な解説メモが。昔のレコード/CDショップのPOPのように、選書した人のコメントは手に取るきっかけになる(左)。/取材時のテーブルの上には神奈川県西部の養蜂家「beeio」さんによる100% Raw Honeyも販売中(右)。

経済的な難しさと社会的な必要性のギャップを埋める、
“兼業書店”という在り方。

建築事務所というのはずっと籠っている空間になりがちなので、何か街に開けたものをやりたいと思ったのです。例えば屋台みたいなものとか、イベントで何か出店してみるとか、いろいろ考えたのですが、許可取りなどなかなか難しいと感じました。

サラリーマンをしていた10年ほど前に、書店づくりの仕事を多くやっていたことがありました。その頃既に、町の本屋という存在は存続が難しい、だんだん縮小していくという話を聞かされていました。でも私としては、書店が置かれた状況には、経済的な難しさと、社会的な必要性との間に、価値のギャップが表れているように思ったのです。

そこで、書店についていろいろ調べると、小売業として続けるのは確かに難しい。でも専業ではなくて兼業であれば、残していけるかもしれない。そこで、(建築事務所をやりながら)本屋さんをやるのがいいのでは、という話になりました。私も、事務所のスタッフも本が好きだったので」(中里さん)。

さっそく、赤坂にある独立系書店・双子のライオン堂さんが主催している『本屋入門SWITCH』という講座を受講。「ああ、これならできるかもしれない」と感じたという。

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こちらはメディア系のコーナー。クリストファー・アレグサンダーや伊庭崇先生のパタン・ランゲージや、レフ・マノヴィッチの「ニューメディアの言語—— デジタル時代のアート、デザイン、映画」など、“いま“を理解するための新旧まざった選書がいい思考の整理になる。

スタート時の仕上がりはあえて70%に。
経年変化を未来と捉えた設計。

建築事務所を営みつつ本屋もできる空間を探した中里さん。やがてR不動産で現在の物件に行き着いた。

「建築事務所の仕事としては商業店舗の内外装が多いのですが、商業店舗は出来上がった時が100パーセント、パッケージとして綺麗に、ぴかぴかに包む傾向があります。そこから経年劣化していくのがなんだか寂しいと思っていたので、ここではスタート時の仕上がりを70%から80%として、年数を重ねて少しずつ味が出るようにしたいと思っています」。

棚や什器などは、栃木の仁平古家具店pejite(ペジテ)などで、日本の古い家具を揃えた。

「学校とかで使っていたような家具はしっかりしていて、なおかつ安い。ちょっとラボっぽい感じになるもいいですね」と中里さん。
 
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こちらは、若いひとたちに人気の「はたらく、いきる」のコーナー。『暮らしのヒント集』や『すてきなあなたに』をはじめ、『小商いのすすめ』や、『上を向いてアルコール』など、コーヒーを飲みながら読み込む人も少なくないそう。
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奇才のマンガ家、目元あたるさんの人気リトルプレス『お仕事』も全館揃う。

広がる、小商い、デュアルワークのネットワーク。

選書を担当しているのはスタッフの友人である、建築やデザインなどの分野で編集者・ライターとして活動している出原日向子さん。

現在は2000冊ほどリストアップした中の1500冊程度が店頭に並んでいるという。ジャンルは建築のほか、哲学などの人文、アート&カルチャー、食やクラフトなどの暮らし、さらには子ども向けの絵本などと多岐に渡る。中には仕事や生き方などに関する本のコーナーも。

「出原さんには、人生におけるいろんな場面に合うような本を選んでくださいと、かなりざっくりと選書をお願いしました。例えば幼少期向けて絵本や昆虫の本、または思春期の中学生が気になるような本、といった具合で」(中里さん)。

店頭の書籍は基本的には買取。『本屋入門SWITCH』で知った大阪屋栗田による1冊から発注できる『ホワイエ』や、子どもの文化普及協会の発注システムなどを使って揃えた。その一方で4社から5社ほど、直接仕入れを行っている出版社もある。

「例えばこの『たとえ、ずっと、平行だったとしても』は、レコード(ヴァイナル)しかリリースしない音楽レーベル『de.te.ri.o.ra.tion』が初めて出版した本で、直接仕入れています。著者の庄野雄治さんはコーヒー豆の絵本なども書かれた、徳島でコーヒー店を営んでいる方ですが、この本にはなんと彼の意向でバーコードがついていない、面白いですよね。

他にもタバブックスさんとか、里山社さんとか、“尖った”出版社の方とすこしずつ繋がりができています」。

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荒さの残るコンクリートの壁の風合いを活かして設けられた棚。最初は4段だったが目線を上にし過ぎない方がいいという判断から、上の1段を減らして3段にしたのだそう。
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ファッション、服飾文化のコーナー。ロランバルトの『モードの体系』や濱田明日香さんの展覧会の本なども。単行本を上梓したらぜひ置いて欲しいコーナーだ。
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発酵関係の書籍が目立った食のコーナー。湯澤規子さんの『7袋のポテトチップス』やサンダー・キャッツ『発酵教室』のほか、野村友里さんの『Tokyo Eatrip』など、オーガニック系の専門家・実践家による書籍も。

週末のみの営業。 みんなにとっての“ちょうどいい“が心地いい。

当初はフルタイムでの営業も考えていたが、選書担当の出原さんの都合もあり、現在は金、土、日の週3日営業。建築事務所のスタッフと、カフェを担当するアルバイトスタッフとで運営している。

カフェで供されるコーヒーには中里さんの友人という神奈川・秦野の『And Roaster』のコーヒー豆を使用。
ちなみに『And Roaster』も、中里さん同様に週末のみ店舗を営業しているコーヒー店だ。

店舗の準備にあわせて行っていたクラウドファンディング募集のプロジェクト概要には、「地域の方や本好きな方々の居場所となるようなコミュニティをつくれる本屋」と書かれていたが、現状はインスタグラムフォロワーの2割程度が文京区在住とのこと。来店客の客層は30代〜40代が中心と、落ち着いた感じだ。

平坦な状況や場にいるときこそ、人は悩んだり苦しんだりするのでは。 本を読むことで解決できることって、たくさんあると思うのです。

「映画の上映会はやりましたが、これからは地域的なイベントがもっと出来るといいですね。あとは料理に関するイベントとか、食関係の本がよく出るので。女性のお客様には食や暮らし、男性には人文系の本が人気です」(中里さん)。

店名がそもそもちょっと哲学的な響きなので、と中里さん。『pateau books(プラトー・ブックス)』という店名は、もともと本好きだった中里さん自身の経験から導かれたものという。それはまた、この書店のありかたを端的に表現している。

「私自身、何かに悩んだりした時は、本を読むことで解決できるという感じでした。だからちょっとした時間、(本を読んで)休憩してもらうのがいいのかなと。“プラトー”とは“平坦”という意味ですが、あまり変化がなくて、平坦な状況や場にいるときこそ、人は悩んだり苦しんだりするのではないでしょうか。そんな時に本がある、さらに本が手に取れる環境があるといいなと思っています」。

[取材/文:菅原幸裕(「LAST」編集長)/フリーランスエディター]

 


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