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RHYTHM AND BETTERPRESS(リズムアンドベタープレス)
レポート
2018.07.09
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RHYTHM AND BETTERPRESS(リズムアンドベタープレス)

「印刷好き、音楽好き、お酒好き」が集まる
立ち飲みできる下町の活版印刷屋

都営新宿線と大江戸線が交わる江東区・森下駅から歩いて5分、清澄通りを入ってすぐのこじんまりとしたビルのすき間に、立ち飲み屋を併設する活版印刷屋「RHYTHM AND BETTERPRESS(リズムアンドベタープレス)が登場。「印刷好き、音楽好き、お酒好き」が集まり、連日賑わいをみせている
 
大きな木枠の窓が並ぶ店舗はまるで今どきのコーヒーショップのよう。しかし中を覗くと店の奥には古めかしい大きな機械が2つ鎮座し、カウンターキッチンと簡易な机、いくつか椅子があるだけ。「何屋だろう?」と不思議がりつつ店を覗く人々の姿が目に浮かぶようだ。
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活版印刷機とビールケースが並ぶ光景。店内にはかすかにインクの香りが漂う
10年間印刷工場で働いていましたが、閉鎖的なのが嫌で」というのは同店のオーナーである宍戸祐樹さん(37歳)。新橋の印刷会社では、オフセット印刷や製本のほか、活版印刷や箔押し、浮き出しなど特殊印刷を担当する工場で工場長を任されていたが、工場は閉鎖された空間に摺りガラス。外から何をやっているかも見えず、「印刷屋はかっこいいものではないと思っていた」と言う。
 
そんなときに雑誌で紹介されていた米ポートランドの様子を見て価値観が一変。そこには、ここだから刷りたいという人がわざわざやって来て作品を作り、仲間が集う、自由な発想で楽しむ活版印刷工場の姿があり驚いたという。
 
「昔から独立心は強くて、将来は実家の岩手で喫茶店でもやろうかなと考えていました。ところがそのポートランドの活版印刷屋を見て感化され、自分でも発信力があってオープンでかっこいい…そんな印刷屋をやってみたいと思ったんです」(宍戸さん)
 
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ドイツ製の活版印刷機「HEIDELBERG(ハイデルベルグ)」。カードサイズの印刷に対応
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「リズムアンドベタープレス」が手掛けたカード類。ぜひ手に取って活版ならではの凹凸を感じてほしい
2台の活版印刷機は、印刷関係の知り合いに依頼して探してもらったというドイツ製の「HEIDELBERG(ハイデルベルグ)」と日本製の「ホンダ精機製作所」。どちらも1970年代に製造されたもので、廃業してからしばらく経った活版印刷屋から格安で受け継いだ。これらの印刷機が見つかり、独立を決意したという。
 
キッチン込みで50平米ほどの店舗は9時~16時まで活版印刷屋、17時~22時までは立ち飲み屋として営業している。印刷業務は主に、前職の後輩として共に働いていた佐藤俊介さん(34歳)が担当する。

印刷の料金は名刺サイズ片面1色で、100枚13,400円~。サイズは名刺・カード~A3まで、データの受け渡しから1週間~10日で仕上がる。オーダーは個人の名刺やショップカードが多い。
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通称「赤星」といわれるサッポロラガーやハートランド、コダマサワーなど、のんべい好みのラインナップ
それにしても、どうして活版印刷屋に立ち飲みを併設することになったのだろうか?
 
目指したのはオープンな活版印刷屋。経営的なこともありますが、印刷や活版のことを知ってもらうきっかけとして、カジュアルな立ち飲み屋を併設したら気軽に寄ってもらいやすいと考えました。ポートランドではクラフトビール工場で立ち飲みができるらしく、そんな雰囲気もいいなと思って。もともとR&Bやジャズ、ジャマイカンミュージックとか音楽が好きで、レコードにもこだわっています」(宍戸さん)。
 
この異色の組み合わせが大ヒット。SNSで情報が拡散され、ツイッターやインスタグラムで知ってわざわざ遠方からやってくる人や、さらに客が客を呼ぶ口コミでの来店も。客層は20代~50代までと幅広く、客単価は1,500~2,000円程度。客には印刷会社の社員やデザイナーといった“印刷マニア”も多く、取材の翌日も製本会社の社員が会合に利用する予定になっていた。毎日やってくるご近所さんがいたり、バンドマンやDJなど音楽好きも目立つという。
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カウンター脇のレコードコーナー。今となってはレコードを裏返すしぐさも新鮮に映る
もともとお酒が好きで立ち飲み屋にもよく通っていたという宍戸さん。実はカフェやカレー屋で調理士をしていた経験もあり、現在は料理を担当している。「安く飲めるよう、気取った料理はやらないと決めていた」というように、価格は200円~750円(実は50円の駄菓子もある)と良心的だ。
 
メニューは枝豆200円、フライドポテト350円、マカロニサラダ350円、ハムエッグ350円など昭和な居酒屋メニューのほか、“おススメ”の(キーマ風)カレー650円やからあげ油淋ソースがけ400円といった少しエスニックな料理もあるドリンクは瓶ビール550円、ホッピーセット450円、バイスなどコダマサワーセット400円、ソフトドリンク250円~。「安すぎるけど大丈夫?」と客から心配されることもあるほどだ。一方、Tシャツ2500円~、キャップ4500円などオリジナルグッズも販売するなど、“ポートランド・スタイル”も取り入れている。
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夜は印刷機の作業台がテーブルに
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手間ひまかけたカレーにオムレツを添えた「オムカレー(ライス抜き)」。スパイシーさとコクが一体となった自信作
実は、森下はふたりにとって縁もゆかりもない土地。都内で工場のように間口が広くて、飲食OK、路面で家賃が安いところ、といった条件で探してたどりついたのが、元駐車場という今の場所だった。興味深いのは、前日になってオープン日をSNSにアップしたにもかかわらず、初日から地元客を中心に大盛況となった点だ。
 
事前に挨拶に行った近所のおじさんが会社の仲間を連れて来てくれたりして。初日は誰も来ないと思っていたので本当に驚いたし、めちゃめちゃうれしかったですね。みなさんすごくやさしいです」(宍戸さん)
 
早くも森下のまちに受け入れられつつある同店だが、ここでイベントをしたいという人も現れ、昼間から店を開放してのイベントもスタート。ポップコーンマシーンで出来立てのポップコーンを提供するDJイベント「PUB&POP」や、日本橋の「マイティ ステップ コーヒー ストップ」のコーヒーと浦安のカフェ「オンアンドオン」の焼き菓子を提供する合同イベントなど、森下の新たなカルチャー発信の場としても注目されている。イベント時に活版印刷で作る“コースターにもなるフライヤー”も好評だ。
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オリジナルのTシャツとキャップもあり
子どもたちや下の世代に印刷に興味を持ってもらえるように発信をしていきたい。“職人気質”っていうのが苦手で、“見て覚えろ”とか“昔からこうやってる”とか、職人さんが技術を下に伝えられないから文化が廃れてしまうと思っていた。僕らに教えられることはどんどん教えていきたいし、印刷だけでなくレコードなんかも何か引っかかるものがあって、『今度買ってみます』とか、『印刷について教えてください』とか、本気で言ってもらえたらすごくうれしいですね。その人の人生の何かちょっとしたきっかけになってくれたら」(宍戸さん)
 
同店が扱うのは、活版印刷と立ち飲みとレコードと、という古き良きアナログなコンテンツだが、それらのカルチャーをミックスしたユルくも開放的な空間に、新鮮みを感じる人も多いようだ
 
正直、反響は予想以上。“活版印刷+立ち飲み”という目新しさが先行して今は騒がれていると思いますが、印刷をメインにできるよう、謙虚な気持ちでやっていきたいです」(宍戸さん)。

【取材・文:中矢あゆみ(『ACROSS』編集部)】

 
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森下駅から歩いて5分。17時のオープンまもなくにもかかわらず賑わいをみせる店内


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